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司法取引とは、組織犯罪について捜査に協力した共犯者への便宜を図るための制度である。
ざっくりした概要
海外ドラマでお馴染みのあれ。
一言で表すと「悪をなして巨悪を討つ」ための手段。
悪の組織の下っ端と協力して悪の親玉をとっちめる。
協力した下っ端の罪は軽くなったりチャラになったりする。
いくらか真面目な概要
立法経緯
海外もといアメリカでは1970年代に確立した制度だが、本邦の刑事司法には長らく導入されてこなかった。
ところが、日本版司法取引にあたる「捜査・公判協力型協議・合意制度及び刑事免責制度」の導入案[1]が2014年に法制審議会へ提出、2015年には法案として国会に上程され、2016年に可決[2]。そして2018年6月1日に施行された。
立法趣旨
立法経緯の項に記した導入案では、「取調べへの過度の依存を改めて(中略──編集者)証拠をより広範囲に収集することができるようにするため,証拠収集手段を適正化・多様化する」手段として司法取引が挙げられている[3]。
「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案の概要」[4]にも同内容の図録が掲載されている。
制度概略
本邦の司法取引制度は刑事訴訟法第350条の2から第350条の15に定められている。
検察官と被疑者・被告人との間で「他人の刑事事件」への情報提供・捜査協力と引き換えに、求刑の軽減や不起訴などを行う合意を結ぶことができる(350条の2第1項)。この合意には弁護人の同意が必要になる(350条の3)。
適用対象は第350条の2第2項に定められており、「財政経済事件」と「薬物銃器事件」に大別される。
適用事例
- 国内では2018年7月20日、三菱日立パワーシステムズ元取締役の不正競争防止法違反の容疑に対して初めて適用された[6]。
- 国内2例目の事案では、2018年11月20日、日産自動車元代表取締役会長カルロス・ゴーンの金融商品取引法違反の容疑に対して適用され、彼の逮捕は国内外に衝撃を与えた[7][8][9]。
脚注
- 新たな刑事司法制度の構築についての調査審議の結果【案】(2018年11月21日閲覧。以下、導入案)
- 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(2018年11月21日閲覧。)
- 導入案1, 3~4ページ。
- 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案の概要(2018年11月21日閲覧。)
- 刑事訴訟法第三百五十条の二第二項第三号の罪を定める政令(2018年11月21日閲覧。)
- 元取締役ら在宅起訴 初の司法取引、法人は不起訴 東京地検特捜部(2018年11月21日閲覧。)
- ゴーン容疑者の捜査で司法取引 特捜部に日産社員協力か(2018年11月21日閲覧。)
- 「なんだこれ」立ち上がる国交省職員 日産社内外に衝撃(2018年11月21日閲覧。)
- マクロン仏大統領「ルノーグループの安定性注視」 ゴーン会長逮捕(2018年11月21日閲覧。)
参考文献
- 名城法学第65巻(2015年度)第4号「司法取引」(2018年11月21日閲覧。)
- 日本版司法取引制度(協議・合意制度)の概要(2018年11月21日閲覧。)
- 司法取引、6月1日に導入 経済犯罪を幅広く対象に(2018年11月21日閲覧。)
関連項目
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