自己決定権とは、憲法学で使われる言葉である。「最狭義の人格的自律権」ともいう。
本記事では人格的自律権も併せて解説する。
人が自分の人生を設計する権利のことを自己決定権という[1]。
一定の個人的事柄について、抽象的に言い換えると「個人が自己の人生を築いていくうえで基本的重要性を持つと考える事柄」について、公権力から干渉されることなく、個人が自ら決定できる権利のことを自己決定権という[2]。
個人の人格的生存にかかわる重要な私的事項を公権力の介入・干渉なしに各自が自律的に決定できる自由のことを自己決定権という[3]。
自己決定権を保障するとされるのが日本国憲法第13条である。
日本国憲法第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
自己決定権をさらに分類すると以下のようになる。
1.の行使例は、尊厳死・安楽死・延命治療拒否・自殺・自傷行為・輸血拒否・脳死状態での臓器提供の承諾・インフォームドコンセントなどである。ただし、尊厳死や安楽死や延命治療拒否や自殺や自傷行為は「限定されたパターナリスチックな制約」を基礎として国家権力により制限されることがありうる。
3.の行使例は、断種・避妊・中絶(堕胎)・生殖補助医療を活用しての代理出産などである。
4.の行使例は、服装・身なり・喫煙・飲酒・趣味への没頭・受験勉強を頑張って学歴や資格を取得する・肉体鍛錬をしてスポーツをする・離職・就職などである。
自己決定権を行使して自らの身体などに害を与える権利のことを愚行権という。
自己決定権を行使して自らの身体などに害を与えようとする人に対して、公権力や周囲の私人が「やめときなさい」とお節介をすることを「パターナリスチックな制約」という。
自己決定権を行使して自らの身体などに決定的な害を与えて自己決定権を回復不可能なほど永続的に喪失しようとする人に対して、公権力や周囲の私人が「やめときなさい」とお節介をすることを「限定されたパターナリスチックな制約」という。
自己決定権とよく似た言葉が人格的自律権である。
人格的自律権は3つに分けられる。
日本国憲法第13条では、「人格的自律の存在として自己を主張し、そのような存在であり続けるために重要な権利・自由を包括的に保障する包括的権利」、すなわち「基幹的な人格的自律権」(幸福追求権)が保障されている。
「基幹的な人格的自律権」からは、様々な基本的人権が派生している。列挙すると次の10ヶになる。
前項目の2.と3.と6.と9.と10.は、日本国憲法の各条文にて完全に保障されている。これらを保障するときは、日本国憲法の個別の条文を根拠とすればよい。例えば、6.の平等の取り扱いを受ける権利を保障したいのなら、日本国憲法第14条を根拠とする。
前項目の1.と4.と5.と7.と8.は、日本国憲法の個別の条文にて一部だけ保障されており、完全に保障されていない。これらをまとめて「狭義の人格的自律権」という。「狭義の人格的自律権」を完全に保障するときは、日本国憲法第13条を根拠とする。このことを「日本国憲法第13条の補充的適用」という。
前々項目の5.は自己決定権であるが、これのことを「最狭義の人格的自律権」と呼ぶ。
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最終更新:2025/12/06(土) 12:00
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