第三条 何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない。
売春防止法 | e-Gov 法令検索
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ただし、この法律が取り締まるものは「売春そのもの」ではないことに留意したい。以下に説明する。
本法律は1956年5月24日に交付され、1957年4月1日に施行された。この法律の制定には長いやり取りがあったり、一部地域で売春が合法だった地域 (赤線) があったりしたのだが、そのあたりはWikipedia大先生に解説を譲る。
本法律の趣旨は以下のようになっている。
第一条 この法律は、売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであることに鑑み、売春を助長する行為等を処罰することによつて、売春の防止を図ることを目的とする。
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ざっくばらんにいえば、
という法律である。ここで重要なのは後段である。
本法律の罰する内容は、第5条から第15条までに書いてある。この内、第14条は個人だけでなく法人にも適用するという内容であり、第15条は併科 (どちらかの罰を与えるという内容について、両方の罰を与えてもいい) についての話なので、13条までを箇条書きにしていく。一度じっくり読み込んでほしい。
……お気づきだろうか。実はこの売春防止法、「売春につながる行為」は片っ端から刑罰を定めているのだが、「売春そのものについての刑罰はない (あくまで法律上アウトではあるが)」のである。更に言えば、「買春についても刑罰はない (あくまで法律上アウトではあるが)」のである。なので例えば読者諸賢らが買春をしたとして、罪にはなるが罰はない。
さて、「売春防止法」といいながら、なぜ「売春」そのものは刑罰規定がなく、「買春」も刑罰規定がないのか。これについて解説してみよう。
まず前段の「売春そのものは刑罰規定がない」部分。これは売春に陥った者は「悪い奴」ではなく「福祉の救済を必要とする者」という観点で立法されているからである。引用した第1条にも「売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであることに鑑み」とある。街娼行為とかになってくると流石に自分からわざわざ「売り」に行ってるので処罰されるが。
重要なのは後段、「なぜ買春は刑罰規定がないのか」である。こちらが複雑な話になってくる。本来であれば、法の制定趣旨として、「売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであること」となっており、尊厳を害されるのは「売る方」なはずなのだから、「買う側」に罰則があってよかろうと思われよう。
しかし、これを処罰しようとした場合、難しいポイントがある。というのは、売った方は証拠を集めれば現行犯逮捕だけでなく「通常逮捕」も可能なのだが、買った方の通常逮捕は難しいのである。「何年何月何日何曜日何時何分に誰々といくらの契約でセックスしました」とかでも記録を残してくれていれば買春した側も通常逮捕できようものだが、それでは証拠を残すことになるのだから売春する側がそんなものを残すはずがない。
また、現行犯逮捕もできない。例えば、警察官自身が街娼のふりをしていかにもセックスしたそうな奴を見つけたと思い、「ねえねえお兄さん、セックスしない?イチゴでいいよ」なんて言ったとする。いわゆるおとり捜査なのだが、……「ねえこれ警察官自身が第5条に引っかかってない?」となるわけだ。やるつもりがあろうがなかろうが街娼行為は売春防止法に思いっきり引っかかっており、そしてこうした違法な手段で集めた証拠は証拠とみなさない (違法収集証拠排除法則) というのが日本の法律では採用されているのだ。まあ、そうでなければいくらでも犯人としてでっちあげることができてしまうのだから、やむを得ない。
とはいえ、2020年代に入ってくると、大久保公園の街娼行為 (立ちんぼ) で逮捕される女性が増え、それに関して「なぜ買う側には罰則がないのか」といった議論が巻き起こるようにはなってきている。どのように罰則規定を設けるかは今後の議題にはなりそうである。
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最終更新:2025/12/24(水) 12:00
最終更新:2025/12/24(水) 11:00
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