MSV(モビルスーツバリエーション)とは、サンライズのアニメ機動戦士ガンダムシリーズにおいて劇中に登場したモビルスーツ(以下MS)という人型機動兵器を元にデザインされた特殊なバリエーションのMSを扱った作品、およびその特殊な機体のことである。
主にアニメで登場した機体の試作機、もしくは改良型、あるいは特定パイロット用に専用カスタマイズされた機体である。
MSVは単にメカニックデザイン企画の総称だと思われているが、その実、月刊OUT別冊「ガンダムセンチュリー」を公式に取り扱った物である。MSVではMS-06Rなど各バリエーションが取り入れられた事が第一として挙げられる。
MSVに関してはその膨大な歴史もここで説明するとなると馬鹿みたいに冗長になってしまう。よって、本記事で扱うのはあくまでもMSVの起源のみとする。
ガンダムは70年代においては視聴率も振るわない打ち切りアニメに過ぎない。しかし、プラモデルの販売、再放送などを重ねて80年代には「ガンダム」は飛ぶ鳥を落とす勢いのまごう事なき国民的大人気アニメとなっていた。だが、それも映画三部作が終わってブームが落ち着いてしまったのだという。
ここでヒット商品の仕掛け人であった編集者の安井ひさし氏が関わる。氏はウルトラマンや仮面ライダーなど、特撮モノのリバイバルブームの仕掛け人であり、ガンダム・ライダー・ウルトラのいわゆるバンダイ御三家も彼がいなければ現在の人気はなかった…とは言いすぎかもしれないが、少々違うものになっていたかもしれない。特にガンダムに与えた影響と言えば後世のガンダム界隈では偉人と称しても過言ではない程。
氏は仮面ライダーとウルトラシリーズで得たノウハウをガンダムに注いだ。全ては『劇場版 機動戦士ガンダム アニメグラフブック』、『講談社ポケット百科シリーズ15 機動戦士ガンダム』、『テレビ版 機動戦士ガンダム ストーリーブック』を氷川竜介氏に依頼した事に起因する。 81年5月発刊の『劇場版 アニメグラフブック』で描かれた大河原氏によるザク・バリエーション設定画稿こそ現在も続くMSVシリーズの真の原点とされる。
この後、月刊OUT別冊『ガンダムセンチュリー』にて、設定文だけだが、数多の膨大なバリエーション機が設定される事となる。特にMSVシリーズの代表機MS-06R「高機動型ザクⅡR型」や8機のRX-78-2ガンダム等だろうか。また、ミノフスキー物理学なども大まかにはここでの創作設定を取り入れていると言っていい。
そして次に81年10月号に創刊されたコミックボンボン。創刊から大河原が毎号オリジナルのイラストを描き下ろしておりこのイラストをストリームベースが立体化するという企画があった。これはSFプラモマガジンという企画である。これも安井氏が大幅に関わっているらしい。
さて、ガンダムセンチュリーで設定されたMS-06R「高機動型ザクⅡR型」は、SFプラモマガジンにて、大河原によるデザインが描き起こされる事となる。この企画は「SFプラモブック1 機動戦士ガンダム REAL TYPE CATALOGUE」として別冊化。この流れがMSV誕生のきっかけを作った物として知られる。その後『HOW TO BUILD GUNDAM 2』にてモデラー集団ストリームベース製の模型が掲載され、MSVへ繋がる改造プラモ熱も一気に高まっていくのである。
さらに翌年82年、安井ひろしを始めとするクラフト団を原作とする『プラモ狂四郎』の連載が始まる。ここに至るまでの氏の功績もさることながら、このプラモ狂四郎も掲載当初から人気を集める。児童のガンプラ熱を高め、そしてコミックボンボンを人気雑誌にまで押し上げた。ここまでの功績も充分すぎる程であった。
バンダイのいわゆるノーマルタイプの展開が全て終了し、バンダイも当時商品展開に行き詰っていた。ここでリアルタイプシリーズを展開開始。これはゾゴックなど、富野のラフスケッチを基に大河原が描き起こした後の『MSV』に分類される機体であった。この時の展開がMSV商品化への前段階であったと言える。
後にバンダイ・ホビーはガンダムほかザブングルシリーズの技術蓄積から必要充分と判断し、83年にMSVシリーズの展開を開始する。機体作例、設定資料など付属品要素も充実したMSVシリーズは、従来のガンプラの常識を覆し、ミリタリー感あふれる機体はこれまでのファンの心もつかみ、ガンダム界にMSVの地位を確立した。第1弾はMS-06R「高機動型ザクⅡR型」であった。以降、ザクバリエーションシリーズが暫く展開し、軌道に乗らせた。
かくしてMS/MAは兵器という観点・設定から独自の兵器体系を構築していったのである(ガンダムが試作機、GMがその簡易・劣化量産機という設定など現実のミリタリー感とは若干そぐわない物も当然あるが、そこら辺もMSVにて補完されている)。
なんでも一時期、本編より人気があったのだとか、そうでないとか…。そもそもメインとして展開した時期が違うので、こうした説も間違ってはいない。
現代ではそれらを中古で入手して一から追っていくよりは、『MSVハンドブック』とか講談社から出たMSV本を追った方が金もかからないし早いかもしれない(一次ソースを知りたいならば別である)。
アニメ作品に登場する機体はほとんどが設計された通りに作られた完成品であるが、まれに先行で作られた試作機だったり改良型だったり未完成品だったりもする。しかしそれらはアニメ作品として必要に応じてデザインされ設定をつけられているだけであり、MSVには分類されない。
あくまで劇中に登場した機体から派生し、MSVというくくりのためにデザインされたものだけがMSVと分類される。
しかし例外として、富野のラフスケッチを基にしている物も存在する。というよりはMSVの一部機はTVアニメ版ガンダムの初期案を基に大河原が描き起こした物である。
これらは本編ではまともな出番を得ることはまれで、たまに出演してもゲスト扱いで数カットだけなのがほとんど。そのサプライズ出演も根源にはプラモデルを売りたいという大人の事情があることは想像に難くない。
主に宇宙世紀という初代に連なる世界観の作品において使われるが、機動戦士ガンダムSEEDでも機動戦士ガンダムSEED MSVという呼称が使われ派生作品を生み出している。また、MSVという名称は使われていないものの、機動戦士ガンダム00では機動戦士ガンダム00外伝という枠がそれに相当するものとして存在する。
たまに勘違いされるが、版権元に許可をとって作られただけの二次創作作品とそこに登場する機体を指してMSVと呼ぶのは間違いである。
ただし逆輸入されることもある。
ガンダムシリーズを扱った作品を多く輩出しているために版権元と密接な関係を持つ角川関連の会社がガンダム関係の二次創作作品も多く輩出しているためごちゃ混ぜになりやすいが、あくまで版権元がMSVであると定義したものだけがMSVに分類される。
ネットではガンダムに関わる情報があちこちで事細かに記述されているが、それらの多くは版権元に許可を取って作られただけの商業二次創作作品の内容を含めてしまっているのがほとんどである。しかし前述の通りの角川関連の本は自社で扱っただけの二次創作作品を年表に含めていることすらある。しかも30数年来方々から色んな関連作品と書籍が出ている。もはや正確な情報だけをえり抜くのは困難となっている。
ちなみに面倒くさいことになる上に脱線しやすいので詳細は省くが、上記ネットの誤記は MSV = ほぼ公式 = ならお気に入りの商業二次創作を同列に扱おう というファンによる活動が横行しているのが主な原因である。
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最終更新:2024/04/20(土) 08:00
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