The Ventures(ザ・ベンチャーズ)とは、アメリカ合衆国のインストゥルメンタルバンドである。
概要
結成から50年以上経過した現在でも高い人気を誇るおじさんバンド。日本に空前絶後のエレキギターブームを巻き起こし、彼らの虜になった青少年たちがその後の日本のポピュラー音楽を担うことになった。そういう点でいわば日本の音楽を形作ったといえるバンドである。 また、渚ゆう子の「京都の恋」、和泉雅子&山内賢の「二人の銀座」、欧陽菲菲の「雨の御堂筋」などを作曲したことでも知られ、日本の歌謡界に与えた影響も大きい。2008年に本国アメリカでロックの殿堂入り。2010年には旭日小綬章を受賞した。
略歴
1959年、ドン・ウィルソンとボブ・ボーグルによって結成。結成当初は2人がギターを担当し、クラブなどで演奏していた。正式なベーシストとドラマーがいなかったため、ノーキー・エドワーズ、ホーウィー・ジョンソンをメンバーとして招き活動するようになる。
しかし間もなくホーウィーが交通事故の後遺症によって活動できなくなり脱退。ドラマー不在の形となるが、その後メル・テイラーが加入。ドン、ボブ・ボーグル、ノーキー、メルというこの4人で、ベンチャーズは黄金期とも言うべき人気絶頂期を迎えることになる。
初来日は1962年。予算上の都合からドンとボブ・ボーグルの2人で来日した。ベースとドラムには日本人を参加させるが、ベースがウッドベースだったりと「めちゃくちゃだった(ボブ・ボーグル談)」ため、すぐにドンとボブの2人編成に切り替えた。
2回目の来日は1965年。ドン、ボブ・ボーグル、ノーキー、メルの4人で来日したこの年のツアーは大成功を収めた。そのかつてないエレキサウンドは日本中に衝撃を与え、各地でエレキギターブームが起こった。
ベンチャーズの特筆すべきところは、幾度かのメンバー交代があったものの、結成から現在に至るまで一度も解散せずに活動を続けている点であろう。
・1967年、ノーキーが脱退→1968年からリードギターにジェリー・マギーが加わる。
・1996年、ジャパンツアー中に体調不良を訴えたメル・テイラーが急逝→1997年より彼の実の息子であるリオン・テイラーがドラマーとして参加。
・2004年を最後にボブ・ボーグルが体調不良でツアーに参加できず→スタジオメンバーであるボブ・スポルディングが2005年からツアーメンバーとして参加。
・2015年を最後にドンがジャパンツアーのメンバーから脱退→ボブ・スポルディングの実の息子であるイアン・スポルディングが2016年からツアーメンバーに加入。
この他にも脱退・加入の例はあり、メンバーの交代は少なくなかったが、1962年の初来日以来、ベンチャーズは毎年のように日本でツアーを行い、ファンを魅了し続けている。メンバー変更による演奏の変化はあれど、彼らのかっこよさは結成から50年以上経過した現在でも失われていない。
メンバー
- ドン・ウィルソン
- リズムギター、曲によってはボーカル担当。ベンチャーズ結成メンバー。最近ではサングラスを着用している。クロマチック・ラン、通称「テケテケ」は彼の代名詞とも言える。「ダイヤモンド・ヘッド」、「パイプライン」など、ベンチャーズを知らなくても1度は聞いたことがあるような曲で、ひときわ存在感を放つのがこの「テケテケ」である(ベンチャーズ初期のライブでは、パイプラインのテケテケをノーキーがやっている)。全メンバー中最高齢ながら、スプリングリバーブを存分に聞かせたテケテケ、歯切れ良く刻むカッティング、コードストロークは齢を重ねるたびに荒々しさを増し、ギラギラに輝いているように思える。体力面の問題から2015年を最後にジャパンツアーのメンバーから脱退。今後はスタジオメンバーとしてベンチャーズを支える。
- ノーキー・エドワーズ
- リードギター、ベース担当。ベンチャーズ加入直後はベース担当であったが、後にボブ・ボーグルと役割を交代し、リードギター担当となる。カントリーミュージックを根本に持っており、エレキブームを巻き起こした1965年のライブで彼が見せた鮮やかなピッキングは数多くの人々を魅了した。その頃はフラットピックを使用していたが、最近ではサムピックをほとんどの曲で使用。カントリー色を更に強くしたフィンガーピッキングとハムバッカーのウォームなサウンドが彼の特徴である。ちなみにベースを弾く場合はフラットピックを使用する。一時期、夏の間はベンチャーズと行動を別にし、冬のジャパンツアーでリードギターとして参加していた。ソロ名義のアルバムも数多く出している。笑顔が素敵である。2016年、ソロで最後のジャパンツアーを行った。
- ジェリー・マギー
- リードギター、ベース担当。ノーキーが脱退した後の1968年よりリードギター担当として加入。2人のサウンドの違いに日本のファンは戸惑い、一時ベンチャーズの人気は薄れたが、再びベンチャーズの人気が高まると共に彼も必要不可欠な存在となった。ノーキーと同じくサムピックを使用するものの、ブルースを根本に持つ彼は、ノーキーとはまた一味違った滑らかなフィンガーピッキングとシングルコイルの枯れたブルージーな音を特徴とする。ノーキーと同じく、ベースではフラットピックを使用する。ソロ名義のアルバムも数枚出している。2016年からはツアーメンバー中最年長となったが、涼しい顔で滑らかにストラトキャスターを弾きこなす彼のテクニックは衰え知らずである。
- ボブ・スポルディング
- リズムギター、リードギター、ベース担当。体調不良によりボブ・ボーグルがツアーに参加できなくなった2005年からベンチャーズのツアーに参加している。そのためベンチャーズに加入したのも2005年と思われがちだが、実際は1981年からスタジオミュージシャンとしてベンチャーズに参加、30年以上に渡ってベンチャーズに貢献し、「5人目のベンチャーズ」とも呼ばれる存在である。ボブ・ボーグルのようなプレイの豪快さ、派手さは無いが、堅実、かつ安定感のあるプレイでベンチャーズを支えている。メンバー1の長身。ベース、ギターのほかにドラムも出来るマルチプレイヤーである。2016年からはドンに代わりリズムギターをメインに担当、ベースの座を息子であるイアンに渡した。
- リオン・テイラー
- ドラム担当。メル・テイラーの息子である。10歳で演奏をはじめ、鍋やテーブルを厚紙の筒で叩いていたという。演奏も父から学び、彼のプレイや、彼が創り上げた「スティック・オン・ベース」(ベースの弦をドラムのスティックで叩き、音を鳴らす技)を見事に受け継いでいる。メルが急逝した翌年の1997年よりベンチャーズに参加し、父親譲りの迫力あるドラムを披露している。本国アメリカでは1番人気があり、サイン待ちの時間も長いとの事。2016年のツアーでは、イアンのベースに加えボブ・スポルディングのギターも同時にスティックで演奏するという技を披露。父親の技を進化させ、会場を大いに沸かせた。
- イアン・スポルディング
- ベース、リズムギター担当。ボブ・スポルディングの息子である。ドンのラストツアーとなった2015年のジャパンツアー中、9月の中野サンプラザ公演で数曲演奏、2016年からツアーメンバーとなることが紹介された。ベンチャーズが世代交代に成功し、その歴史が現在でも受け継がれていることを象徴する存在である。彼も父親同様マルチプレイヤーであり、ベース、ギターの他キーボードも演奏できる。
旧メンバー
- ボブ・ボーグル
- ベース、リードギター担当。ベンチャーズ結成メンバー。「テケテケ」はもともとボブが考案したものであり、それをドンがアレンジして現在の形にした。当初はリードギター担当であったが後にノーキーと役割を交代、ベース担当になった。チョーキングを絡めたり、高速で弦をピッキングしたりしてベースをうならせる彼のプレイは「リードベース」と呼ぶに相応しく、「ワイプ・アウト」などでは、ギタリスト顔負けのフレーズを披露していた。また、彼はリードギターを演奏する際にアームを握ったままでピッキングすることがあり、それも彼特有のサウンドを生み出していた。2004年を最後に体調不良が原因でツアーに参加できなくなり、2009年、75歳でこの世を去った。現在でも彼のプレイに対する賞賛の声は止まないことから、彼の存在がどれだけ大きいものだったかが分かる。
- メル・テイラー
- ドラム担当。1962年よりベンチャーズに加入。1965年の来日時、グレッチのシンプルなドラムセットから繰り出される「ワイプ・アウト」のドラミングや(下記動画参照)、キャラバンのドラムソロは見るものを痺れさせた。彼のプレイは特にジーン・クルーパの影響が大きく、「スティック・オン・ベース」もジーン・クルーパのプレイを参考に彼とボブ・ボーグルとでアレンジしたものである。長年ベンチャーズのリズムを支え続けた。1996年のジャパンツアーの途中に体調不良を訴え、検査の結果肺癌と判明。ツアー途中で帰国したが帰国から10日後に62歳で急逝。彼が去った後のベンチャーズのドラムは、彼の息子であるリオンによって受け継がれることとなる。
- ホーウィー・ジョンソン
- ドラム担当。交通事故により1962年に脱退。
- ジョー・バリル
- ドラム担当。メル・テイラーが脱退していた1972年から1978年まで在籍。
- ジョン・ダリル
- キーボード担当。1969年から1972年まで在籍。2008年のロックの殿堂授賞式に出席した。
代表的な楽曲
- ダイアモンド・ヘッド (Diamond Head)
- パイプライン (Pipeline)
- ウォーク・ドント・ラン (Walk,Don't Run)
- 十番街の殺人 (Slaughter On Tenth Avenue)
- キャラバン (Caravan)
- ワイプ・アウト (Wipe Out)
- 京都の恋 (Kyoto Doll)※
- 雨の御堂筋 (Stranger In Midosuji)※
- 二人の銀座 (Ginza Lights)※
ここに記載されている曲はほんの一部であり、毎年行われるライブではバラエティーに富んださまざまな楽曲を聴くことができる。
関連動画
ニコニコミュニティ
関連項目
- 1
- 0pt