『レクイエム・フォー・ドリーム』 (Requiem for a Dream) とは、2000年制作のアメリカ映画。
4人の男女がドラッグによって破滅してゆく様を独特の撮影技法で描いている。
監督は後に『レスラー』や『ブラック・スワン』を手がけるダーレン・アロノフスキー。原作は脚本を担当したヒューバート・セルビー・ジュニアの同名小説。
救いがない鬱映画として知られ、2009年にはイギリスの映画雑誌『エンパイア』誌による「鬱映画」ランキングで栄えある1位を獲得した[1]。ただし同誌は2008年の「名作映画500選」ランキングにおいても、この映画を238位として選出している[2]。上記の「鬱映画」ランキングの10作品のうち、この500選にも名を連ねているのは本作のみである。
登場人物(キャスト)
- ハリー・ゴールドファーブ(演:ジャレット・レト)
- 主人公。高校卒業後も定職につかず、母親に黙って家のテレビを売り払うダメ人間。マリオンとの将来のためにヘロインの密売に手を染めるが、商売に行き詰まり、更にヘロイン中毒となり転落の一途をたどる。
ハリーを演じたレトは薬物中毒者を演じるために13キロ減量するなど、その後の徹底した役作り(『チャプター27』での30キロの増量や『ダラス・バイヤーズクラブ』での13キロ超の減量など)の片鱗がすでに現れている。 - サラ・ゴールドファーブ(演:エレン・バースティン)
- ハリーの母。夫に先立たれ、楽しみはテレビ番組だけという孤独な日々を送る。ある日テレビ番組の出演者に選ばれて喜ぶが、着ていこうとした思い出のドレスはサイズが合わない。友人に紹介された医師からダイエットピルを処方されるが、それは依存性の高い覚醒剤だった。結果用量を守れずに中毒となり、正気を失っていく。
廃人と化してゆくサラを演じたバースティンの演技はインディペンデント・スピリット賞を受賞し、アカデミー賞にもノミネートされている。 - マリオン・シルヴァー(演:ジェニファー・コネリー)
- ハリーの恋人。デザイナー志望の美女。ブティック経営を夢見ていたが、ヘロイン密売の破綻後はドラッグに溺れる。金欲しさに売春を繰り返し、地下クラブでの凌辱ショー出演にまで至る。
この演技でコネリーはインディペンデント・スピリット賞にノミネートされ、低迷期を脱した彼女は次作『ビューティフル・マインド』で晴れてオスカーを獲得した。 - タイロン・ラヴ(演:マーロン・ウェイアンズ)
- ハリーの友人。貧しいゲットー暮らしからの脱出を夢見てハリーとともにヘロインを密売するが、マフィアの抗争に巻き込まれて逮捕・収監され、刑務所での強制労働に従事させられる。
演じたウェイアンズはコメディ出身で、キャスティングには制作陣の間でも議論があったという。しかし彼はシリアスな役柄を演じきり、役者としての新境地を開拓した。
技法
本作を特徴付けているのは「ヒップホップモンタージュ」と呼ばれる、極端に短いカットの繋ぎ合わせである。そのため本作は102分の上映時間ながら総カット数は2000を超える(通常、同尺の映画では6、700カット程度)。
薬物中毒の感覚を表現するためにブレの激しいボディカムや極端なクローズアップ、低速度撮影を駆使しており、その映像表現は多くの模倣やパロディも生んだ。
音楽
恐らく本作で最も観客の印象に残るのは、クリント・マンセルが作曲し、クロノス・カルテットが演奏するテーマ曲 "Lux Aeterna" であろう。
聴く者の不安を煽り立て、登場人物たちの破滅を容赦なく突きつけてくるような弦楽四重奏のミニマル・ミュージックは圧倒的なインパクトを誇り、このテーマ曲はその後多くのアレンジがなされるとともに、多数の映画の予告編にも流用された。
とりわけ、映画『ロード・オブ・ザ・リング/2つの塔』予告編のためのフルオーケストラと合唱団によるアレンジ "Requiem for a Tower" は知名度が高く、近年では日本のテレビドラマ『LIAR GAME』の劇伴にも使用されている。
その他
今敏のアニメ映画『パーフェクトブルー』のオマージュを受けたカット(頭まで風呂に沈み、水中で叫ぶ)があり、このシーンの為にアロノフスキーは『パーフェクトブルー』の実写化権を入手。
2001年に来日し、今敏と対談した。
関連動画
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関連項目
脚注
- *The Top 10 Depressing Movies | Empire | www.empireonline.com(元記事消滅済のためInternetArchive。)
- *The 500 Greatest Movies Of All Time, Feature | Movies - Empire
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