HOゲージとは、鉄道模型における規格の一つである。
転じて鉄道模型における商品カテゴリを指す名称ともなっている[1]。
概要
元来は「縮尺1/87、線路幅(ゲージ)16.5㎜」という規格の模型に対して使われる名称であり、縮尺とゲージは不可分である。同じゲージ16.5㎜でもイギリスは縮尺1/76で『OOゲージ』、日本では縮尺1/80で『16番ゲージ』として分けられ、あるいは区別されてきたが、次第に「16.5㎜ゲージ」であれば『HO』と呼んで構わないという風潮になりつつある。
原則論に由来する「16番はHOではない」という声は一定数存在し、日本国内では『縮尺1/87、ゲージ12㎜』という規格が1980年代に提唱され、製品が出されている。これらは提唱する人によって呼び方が異なるようで、「12㎜ゲージ」などととりあえず呼称することが無難かもしれない。
一方で「車体に対して線路が狭い狭軌感が再現されておらず、不適切」と考える人もいて、『縮尺1/80、ゲージ13㎜』という規格も戦後間もない時期から提唱・展開されている。
どちらもスケールの正確さ追及の観点から、さらに細いゲージ(9㎜以下)を設定する場合もある。
鉄道模型の他の規格と同様に「動かす」ことが前提の模型であり、金属製のレールから給電し、モーターのついた車両(1編成につき1~2両)を動かす仕組みを持つ。世界的に見ると最も普及しており、安価な普及品も多数存在するカテゴリであるほか、博物館などの展示用に大規模なジオラマ(鉄道模型ではレイアウト)を製作する場合はHOゲージが採用されることが多い。
日本におけるHOゲージ
もともと米国式・欧州大陸式のHOゲージ(HOスケール)が入ってきたことが、日本におけるHOゲージの始まりとされている。そして戦後、主に輸出のために模型を製造していた日本のメーカーが、生産インフラや部品をそのまま流用して国内向け製品を生産できるように、今で言う在来線(欧州や米国より線路が狭い狭軌)の模型もゲージ16.5㎜の規格で作るようになる。こうした日本型車両の縮尺は、少し大きめの1/80となった。但し新幹線車両は1/87で設計・製作されている。
前述のように「縮尺1/80、ゲージ16.5㎜」という規格について、当初は「16番ゲージ」あるいは「日本版HO」と呼ばれていたが、のちに大手メーカーが積極的にHOという表記をパッケージに打つようになっていった。最近発売数の多いプラ成型車体の製品の大半は、これらの「16番ゲージ系」と、Nゲージのインフラを使って軽便鉄道などを再現する「HOナロー(縮尺1/87、ゲージ9㎜)」が多くを占めるようである。
実際に広まっていったのは1960年代であるが、1970年代半ばから「Nゲージ(縮尺1/150、ゲージ9㎜)」が、手ごろな価格の普及品を取りそろえ広まっていき、相対的にHOゲージは「大きい」「高い」とみなされ、取り扱いが限られる傾向が出てきた。どちらも取り組めるような、空間にも金銭にも余裕のあるモデラーはあまりおらず、必然的に趣味・嗜好によって「HOゲージャー」と「Nゲージャー」とに分化し、住み分けが図られていった。
HOゲージャーの傾向
日本ではNゲージャーが多数派であるが、逆にディテールにこだわる人はHOを選ぶ傾向がある。後述のように完成品も供給されているが、工作派の方が多い。フルスクラッチだって普通、キットだってそのまま組んだりはしないどころか、素材として場合によっては原形を留めぬ形で使ったりする。また真逆の『フリーランス(自由形)』に取り組む人も一定数いる。
一方、自宅で走行可能なレイアウトまで持つ人はそう多くない。同じHOゲージャーでサークルを作りメンバーを揃え、モジュールレイアウトの各モジュールを各々が作り、持ち寄って運転会を行うことで走行させる事例は多い。
これから始めたい人へ。とりあえず車両はNゲージより高いです。しかし自作・加工・ディテールアップなど、こだわる作業は車体が大きい分、むしろNよりやりやすいかもしれません。走行についてはレンタルレイアウトを活用することもご検討ください。
主なメーカー
- エンドウ
- 真鍮製品に絞って製品を出し続けてきた老舗。はっきりいって超高級品が目白押しである。このほか自作車両製作用にパーツを分売していたりもしているため、ヘビーユーザーはエンドウの完成品を買わずともパーツの世話にはなっている、という場合も多々ある。
- 関水金属とは別個に16.5㎜の道床式線路(ニューシステム線路)を販売している。
- ※かつてはNゲージも製造していたが、1985年に撤退した。
- カツミ
- 1945年創立のエンドウに肩を並べる、1947年創立の老舗。やはり真鍮製品を製造している。1959年から日本型車両の模型を出してきた草分け的存在である。
- 天賞堂
- Nゲージではものすごい価格の製品を出していたが、この規格では買いやすいものと超高級品に相当な差がある。電気機関車の金属車体ハイグレードモデルなどは20万を超えるが、ダイキャスト車体製品だともう少し買いやすくなる(サウンドつきEF58が68000円)。そしてプラ製品の蒸気機関車あたりだともう少し買いやすい(C58が4万円台、9600形も5万円台)。このほかDCCなしでもサウンドを鳴らしながら運転できる「カンタムサウンド」が搭載された車両もあるので注意して見てほしい。
- 関水金属(KATO)
- Nゲージと同じように、道床式レール(ユニトラック)も含めてプラ製品を手広く出している。特にこの規格での道床式レールをTOMIXが出していないため、頼っているユーザーも多いかもしれない。Nゲージより車体が大きくなった分、デジタルコマンドコントロール(DCC)を比較的取り付けやすくなっている。
- トミーテック(TOMIX)
- Nゲージの製造技術の蓄積を経て参入し、プラ車体の車両を発売している。機関車はだいたい1両2万円台、ただしパーツ取り付けなどをしっかりやってパッケージングしたプレステージモデルもあり、そちらはお高い。
- マイクロエース
- Nゲージ車両の模型を展開するかたわら、この会社もプラ車体完成品を発売している。マイクロエースらしいというべきか、車両のチョイスが独特である。
- トラムウェイ
- 日本で企画し、中国で生産する形で製品を増やしてきたプラ車体完成品のメーカーである。価格帯は、たとえば過去に発売された8620形で4万円台、キハ30系でT車が最高9000円、M車が最高18500円という設定になっている。
関連動画
車体をプラバン、バルサ木材、あるいはボール紙などで作る工作派も昔から存在する。
関連項目
脚注
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