バカラクイーン

そして最内には、バ　カ　ラ　ク　イ　ー　ン　！！

2021年アイビスサマーダッシュ(GIII)、飛田厚史アナ(NST新潟総合テレビ)

バカラクイーン(Baccarat Queen)とは、2016年生まれの日本の競走馬である。栗毛の牝馬。

武井亮厩舎(美浦)所属
重賞勝ちは無かったものの、その走法は後の新潟千直の常識を覆した。

主な勝ち鞍
2020年:朝日岳特別(1勝クラス)

概要

2016年4月14日、浦河町の谷口牧場にて父アドマイヤムーン、母*ファンアンドゲイムス(母父Rahy)の間に生まれる。
父は日本馬として初めてドバイデューティフリー(現在のドバイターフ)を優勝し、宝塚記念・ジャパンカップも勝利した2007年の年度代表馬。産駒はハクサンムーン、ファインニードル、セイウンコウセイなど短距離の活躍馬が多い。
母はイギリスで2勝を挙げた愛国産馬で、曾祖母に現時点でイギリス最後の三冠牝馬Oh So Sharpがいる。

2017年の北海道サマーセールでKTレーシングに落札される。価格は税込1134万円(税抜1050万円)。(動画の40:46あたりから)

デビュー直後はKTレーシング代表黒川哲美氏の親族、黒川弘氏の所有馬であったが、KTレーシングの倒産により名義は三嶋牧場に変更された。

短距離で好走を続けていたもののなかなか勝ちきれず、2勝クラス入りを果たしても1着馬と1秒近く離されることも多くなりクラスの壁に阻まれた。

そんな中、陣営はバカラクイーンにとって初めての重賞となるアイビスサマーダッシュ(GIII)を選択する。

2021年アイビスサマーダッシュ

新潟競馬場名物・芝1000m直線コース。このコースを用いるレースでは、スタートした各馬は外ラチ沿いのポジションへ殺到するのがお約束になっている。コース中盤以降、他のレースでも使用されているホームストレッチに接続してからは、当然ながら内ラチ沿いの方が馬場が荒れている。逆に外ラチは馬場状態もよく、馬をまっすぐ走らせやすく、他馬も集まるので併せ馬の状態になって早く走れるのだ。
コース完成から間もないころはどの馬もまっすぐ走っていたのだが、やがてこの傾向が知れ渡ったことで、外ラチに近い外枠が圧倒的有利という認識が定着した。8枠の複勝率が35％程度に対し、1枠の複勝率は5％程度、アイビスサマーダッシュに限ると2020年までで1枠は3着1回だけとその差は顕著である。

そして2021年、バカラクイーンはその最も不利とされる1枠1番を引いてしまった。枠の不利に加えて2勝クラスからの格上挑戦であったため、出走16頭中14番人気の低評価であった。しかし、バカラクイーン陣営にはある秘策があった。

実はこの年、春の福島競馬が震災の影響で開催中止。春の新潟開催は福島の代替分と合わせて7週間の長期開催をしたため、内の芝の損傷が激しく、夏の開催前に内の芝の張り替えが行われていた。そう、平年ほど内の芝は傷んでいなかったのだ。
武井調教師はバカラクイーンを内ラチ沿いで走らせるよう、鞍上の菅原明良騎手に指示。そして、万が一のことがあったときでも指示の責任は調教師の自分にあるとして「レースが終わって非難されるようなことがあったら、『調教師の指示があった』と言ってくれ」と伝えた。

レースは外ラチ沿いに馬が集まるいつもの展開。しかし、ただ一頭、バカラクイーンだけが内ラチ沿いを独走。その常識破りの走法に、外ラチ沿いを並走車から撮影していたカメラマンは困惑、観客は度肝を抜かれた。

結果は粘り込んでの3着と大健闘。1着2着は人気通りだったが、バカラクイーンが絡むワイドは1万円超え、三連単も22万円と高額配当をもたらした。

レース後、バカラクイーン陣営に「レース前に言ってくれればついて行ったのに」と漏らした調教師もいたのだとか。

その後

その後は自己条件の2勝クラスに戻ったが、8月の驀進特別で13着、10月の飛翼特別で11着と惨敗。この飛翼特別を最後に引退となった。最終戦績29戦2勝。引退後は繁殖入りするとのこと。

バカラクイーンがターフを去った翌年の2022年アイビスサマーダッシュでは、内枠に入った19年覇者ライオンボスや21年覇者オールアットワンスなど内枠に入った4頭が内ラチ沿いを走る作戦をとった。結果としてこの4頭が馬券内に入ることはなかったものの、この4頭のうち、スティクスは5着、オールアットワンスは6着と健闘。

また、平場の直線競馬でも内枠から内ラチを攻める馬が見られるようになった。2022年10月16日、開幕週の新潟7R、3歳以上1勝クラスにて最内枠に入った永島まなみ騎手騎乗のセルレア(15番人気)が優勝。「内枠を引いたら外にこだわらず」という騎手の宣言通り最内枠から内ラチ沿いを独走しての1着だった。
これはバカラクイーン以来の1枠1番の馬券内入りであり、千直コースでの最内枠の1着は2017年はやぶさ賞のウランゲル以来5年5ヶ月(134戦)ぶりであった。そして、この日は奇しくもバカラクイーンのラストランからちょうど1年後でもあった。

このように千直コースで内ラチ沿いを走る馬が相次いだことでこの戦法はいつしか「バカラクイーン戦法」とも呼ばるようになった。

観客を大いに沸かせ、後の戦法に影響を与えたバカラクイーンはこれからも人々の記憶に残り続けることだろう。そしていずれ、彼女の仔が再び新潟の直線を沸かせる日を楽しみに待ちたいものである。

バカラクイーン戦法を試みた馬一覧

日時	レース	レース名	馬名	騎手	枠番	着順
2021年
7/25	11R	アイビスSD	バカラクイーン	菅原明良	1-1	3着
8/8	9R	驀進特別	ワンモアバイト	岩田望来	1-2	12着
〃	〃	〃	セピアノーツ	藤田菜七子	2-3	18着
2022年
5/7	12R	4歳以上1勝クラス	ジョーレイラニ	松本大輝	2-2	10着
7/30	12R	3歳以上1勝クラス	ケイティレインボー	城戸義政	1-1	4着
7/31	11R	アイビスSD	スティクス	藤田菜七子	2-4	5着
〃	〃	〃	オールアットワンス	石川裕紀人	2-3	6着
〃	〃	〃	ライオンボス	坂井瑠星	1-1	10着
〃	〃	〃	トウショウピスト	江田照男	1-2	18着
8/7	9R	驀進特別	エナジーロッソ	C.ホー	1-2	15着
〃	〃	〃	シオミチクレバ	菊沢一樹	1-1	16着
〃	11R	飛翼特別	ミキノバスドラム	勝浦正樹	1-2	10着
〃	〃	〃	レオハイセンス	黛弘人	1-1	13着
10/16	7R	3歳以上1勝クラス	セルレア	永島まなみ	1-1	1着
10/22	5R	2歳未勝利	オコジュ	岩部純二	1-1	6着
〃	〃	〃	コウセイエミオト	今村聖奈	1-2	12着
10/23	12R	3歳以上1勝クラス	ラインアルテア	武藤雅	1-1	8着
2023年
4/30	11R	邁進特別	ディアナグラン	藤田菜七子	1-1	5着
5/13	9R	はやぶさ賞	ジャスパーティアラ	松本大輝	2-3	4着
〃	〃	〃	ユカリプレリュード	藤田菜七子	1-1	9着
5/21	11R	韋駄天ステークス	マウンテンムスメ	菱田裕二	1-1	9着
7/30	11R	アイビスSD	ロサロッサーナ	津村明秀	2-4	15着
8/12	11R	稲妻ステークス	ブッシュガーデン	菅原明良	1-2	11着

血統表

アドマイヤムーン 2003 鹿毛	*エンドスウィープ 1991 鹿毛	*フォーティナイナー	Mr. Prospector
			File
		Broom Dance	Dance Spell
			Witching Hour
	マイケイティーズ 1998 黒鹿毛	*サンデーサイレンス	Halo
			Wishing Well
		*ケイティーズファースト	Kris
			Katies
*ファンアンドゲイムス 2001 栗毛 FNo.9-c	Rahy 1985 栗毛	Blushing Groom	Red God
			Runaway Bride
		Glorious Song	Halo
			Ballade
	*シャープウィッテッド 1994 鹿毛	Sadler's Wells	Northern Dancer
			Fairy Bridge
		Oh So Sharp	Kris
			Oh So Fair
競走馬の4代血統表

クロス：Kris 4×4(12.50%)、Halo 4×4(12.50%)、Northern Dancer 5×4(9.38%)

関連動画

関連コミュニティ

関連リンク

• バカラクイーン(netkeiba)
• バカラクイーン(JBISサーチ)

関連項目

• 競馬
• 競走馬の一覧
• 2019年クラシック世代
• アイビスサマーダッシュ
• 菅原明良