概要
鉄道用に限らず除雪車といえば、単純に雪を押しのけるラッセル式や、回転刃で崩した雪を遠くへ飛ばすロータリー式が一般的だが、このササラ電車は、「ササラ」という竹の束を多数取り付けたブラシを回転させ、雪を弾き飛ばす方法を取る。
豪雪地を走る路面電車という特殊な環境において、軌道上の除雪を効率化するため、1925年(大正14年)に札幌市電の前身である札幌電気軌道により開発された。以後約90年もの間、基本的な仕組みは変わらず現在も使用されている。
ちなみに、なぜブラシの素材にササラが選ばれたかというと、程よい硬さと「しなり」がレールや舗装を傷つけることなく雪だけを効率良く飛ばせるから、だそうだ。実際に他の素材も多数試されたが、総合的に見てササラに勝るものは無かったとのことである。
現在の運用事業者
札幌市電(札幌市交通局)
ササラ電車発祥の地であり、シーズン初出動のニュースは札幌の冬の風物詩ともいえる。冬季は毎朝4時に架線の霜取りも兼ねて走行するほか、積雪があれば必要に応じてその都度除雪を行うため、日中でも目にすることが出来る。
2020年現在は雪形が3両(1~3)、雪10形(2代)が1両(11)、雪20形が1両(21)在籍。雪1形は鋼製車体化改造が行われているものの、1920年代前半に製造された40形電車が種車であり、札幌市電の自走可能な電車では最も古い。また、車体未更新の8が札幌市交通資料館で展示されている。
なお、札幌市電の例によって過去にはササラ気動車ももちろん存在し(DSB1形)、現在は1両が交通資料館にて展示中。
……余談だが、札幌市営地下鉄の開発中、「地上走行区間の除雪をどうするか」という問題に対し、候補の一つとしてササラ電車と同様の構造の「ブルーム式試験除雪車」が試作されている。結局、地上区間はシェルターで覆われたためにお蔵入りとなったが、もしかしたら「ササラ地下鉄」なるものが誕生していたのかもしれない。
函館市電(函館市企業局交通部)
札幌から遅れること10数年、道内では雪の少ない函館でも1937年(昭和12年)にササラ電車が導入された。
当時改造された「排型」6両のうち、3号車と4号車が現在も現役だが、近年は舗装路面の走行も可能な「ササラトラック」に出番を奪われており、ササラ電車の出動は大雪時に限られている。
また、2号車が1993年に函館名物「箱館ハイカラ號」に復元改造された。これら3両は既に種車の製造から100年を超えており、車体も木製のままの大変貴重な車両なので、末永い活躍を期待したいものである。
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関連項目
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