※厳密には「溶接」ではない(後述)のだが、本稿では便宜的に「溶接」と表現する
概要
溶接方法の一種。
母材(溶接する材料)に回転する溶接工具を押し付けて、摩擦熱により材料を軟化させた上で回転力でかき混ぜて(撹拌)材料を接合する方法。
ものすごーく乱暴に言ってしまえば原始時代の描写でよくある火起こしの溶接版である。
世間一般などでは溶接方法の一種として見られているフシがあるが、実際のところは摩擦熱で材料を柔らかくした上で「かき混ぜて」接合しているだけであり、材料は溶けていない。このため摩擦攪拌「溶接」ではなく摩擦攪拌「接合」と呼ばれている。
摩擦攪拌接合の特徴
- 接合部以外への熱影響が少ない
一般の溶接(溶接部が真っ赤になるを通り越し、ドロドロに溶ける)のように材料が溶けるほどのエネルギー(=熱量)をぶち込まない。
このため接合に使うエネルギーは最小限のものとなり、また接合部以外への熱影響が小さくなる。
この理由で下記のいくつかのメリットも生まれる。 - 省エネ
材料を溶かすまでのエネルギーをぶち込まなくて済むため、省エネ。 - 仕上がりが綺麗
接合部以外への熱影響が小さいので、材料の変形などが少なく仕上がりが綺麗になる。 - 機械化(自動化)が容易
- 検査が難しい
一方で材料を溶かすような「普通の溶接」とは全くと言っていいほどの別物であるため、検査が難しいという短所もある。
そもそも今の非破壊検査はものすごく乱暴にいうと「溶かしてくっつける普通の溶接、しかも鉄鋼の溶接」が基準のためこんなわけのわからない溶接なんて想定外と言ってもいい(ただし非破壊検査の資格試験のテキストにはちゃんとFSW関連の項目も存在している)。
だから対処が難しい。 - 複雑な形状を作るのが難しい
直線的な接合ならともかくとして複雑な形状に関しては接合が難しい。
摩擦攪拌接合の応用例
鉄道車両
船
三井造船の高速船「テクノスーパーライナー」にも摩擦攪拌接合が使用されている。
自動車
マツダの「RX-8」や「ロードスター」には摩擦攪拌接合を応用した接合が使用されている。
ジェットエンジン
ロールス・ロイス plcのターボファンエンジン「トレント」シリーズには、チタン製ファンブレードの溶接に摩擦攪拌接合が使用されている。
ロケット
JAXAのH-IIBロケットの推進剤タンクには全面的に摩擦撹拌結合が使われている。
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関連項目
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