アマデウス(映画)とは、1984年公開の映画である。
原作は同名のブロードウェイ戯曲。
クラシック音楽界の巨匠、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの生涯を、宮廷楽長アントニオ・サリエリの視点で描いたハリウッド映画。
同年のアカデミー賞のうち、8部門を受賞した名作である。
1823年11月のウィーン。病床にあった一人の老人が自殺を図った。
「モーツァルト!私を許してくれ!君を殺したのは私だ!」
そう叫び続ける老人の名はアントニオ・サリエリ。
様子を見に来た召使らに助けられ、彼は精神病院へと送られる。
後日、容態が安定したサリエリの元に若い神父が訪れた。
神父はサリエリに懺悔を勧め、「神の前ではみな同じ。懺悔すれば許しを得られる」と説く。
そんな神父にサリエリは自身が製作した曲を聞かせる。かつて宮中で演奏され、栄光を浴びた曲であると。しかし若い神父にはどの曲もさっぱり解らない。
そこでサリエリがある曲を弾いてみせると、神父はすぐに理解した。メロディを口ずさみ、喜びを露わにして「あなたの曲だったとは!」と称賛する。だがサリエリが神父に聞かせたのは自分の曲ではなく、モーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」であった。
サリエリは自身の生涯を語り始める。
女性に手を出さず、音楽を愛し神に対して敬虔な彼は、オーストリア皇帝ヨーゼフ2世に仕える宮廷楽長として社会的地位を得ていた。そして彼は、このような境遇を与えてくれた神に日々感謝する、充実した人生を送っていた。
モーツァルト……アマデウス(神に愛された者)が台頭してくるまでは。
決して爽快なエンターテイメント映画ではないが、長年に渡って愛され引き合いに出される映画である。
衣装や小道具、照明、建築物などに一切妥協せず、特にこの映画で重要な要素である音楽はモーツァルトの名曲が贅沢に使用されている。
時代考証もしっかりしており、指揮棒がまだ当時存在していなかった事などもきちんと反映されている。
誰もが思春期に「万能感」を得たことがあるのではないだろうか。
しかしやがて多くの者は社会経験を積むうちに勉強で、スポーツで、仕事で、文芸で、研究で……様々な分野で「己より優れた者」を見つけ、自分は特別な存在ではない事を認識していく。
故に視聴した者はサリエリの苦悩と憧憬に共感し、作中の神父のように打ちのめされることになるのである。
この映画は「モーツァルト」という一人の天才を描いた物語であるとともに、そんな天才を前にしたあまたの凡人達の為の物語でもあると言える。
あんたも同じだよ この世の凡庸なる者の一人
私は その頂点に立つ 凡庸なる者の守り神だ凡庸なる人々よ 罪を赦そう 罪を赦そう......
汝らの罪を赦そう
史実の研究が進み、「モーツァルトを殺した男」としてのサリエリは否定されている。
この映画によってサリエリの知名度が上がり、その後研究と再評価が進んだのは皮肉な話である。
モーツァルト役のトム・ハルスはこの役の為にピアノと指揮を勉強し、演奏シーンは吹替なしで演じた。作中で見せる破天荒にして品性下劣な人格は従来のモーツァルトのイメージと真っ向からぶつかるもので、モーツァルト愛好家から抗議文が送りつけられたほどだった。
だが音楽に関しては文字通り天才の領域にあり、美しい音楽をいともたやすく創造する。終盤、瀕死の床で『レクイエム』を作曲するさまは、鬼気迫る壮絶さである。
サリエリ役のF・マーリー・エイブラハムは、当初は無名のモブとしてキャスティングされていた。しかし台本の読み合わせでたまたまサリエリ役を担当したところ、迫真の演技を見せたことで主役に大抜擢。同年のアカデミー賞主演男優賞を獲得した。
モーツァルトに嫉妬し、計略によって心を追い詰め、結果的に死に追いやる。その一方でモーツァルトの才能を正しく理解し、彼に乞われて『レクイエム』の完成を目指して力を貸す。愛憎こもごもの関係は、本作屈指の見所と言える。
作中の舞台はオーストリアだが、屋外ロケはチェコのプラハで行われた。
作中に登場するお菓子「ヴィーナスの乳首(フェヌスブリュストヒェン)」は、実在するザルツブルグの銘菓である。
ガナッシュをホワイトチョコレートでコーティングしており、名前の通りに愛らしい乳首に見える。都心では限定販売される機会もあるので、見かけたら是非ご賞味あれ。
掲示板
23 ななしのよっしん
2020/08/10(月) 10:03:32 ID: pomTGNfPGv
>>21
でも結局それもサリエリの中の「天才」であっていわゆる一般的な天才とはかけ離れてる気もする
それでも感情移入できないってわけではないにせよ
まあ天才とか凡人なんていう人によって定義の違う言葉について議論しようとする時点で意味がないのかもだけど
24 ななしのよっしん
2020/08/10(月) 10:07:54 ID: pomTGNfPGv
>>16
別に自分よりも才能ある人間がいても必ずしも憎悪の念を向けてサリエリと化すってわけでもないと思うよ
才能を認めつつもそれでも努力するのもいれば半ば諦観して割り切るのもいればそもそも才能の上下なんてものに囚われない人もいる
サリエリは割り切れなかったってだけの話
25 ななしのよっしん
2020/09/17(木) 08:52:48 ID: sPA7L4BZXG
割り切るのが理想だけど人生は長いし実践するのは相当難しい。
そういった伝記映画の枠に収まらない人間の普遍的な苦悩を描いているからこそ名作なんだろう。
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最終更新:2025/12/06(土) 11:00
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