シンジケート(競馬)とは、種牡馬の所有権を分割し、複数人で所有する種牡馬の所有方法である。
競馬の世界において優れた戦績を残した競走馬はその優れた能力を子孫に伝えるために種牡馬として繫殖入りするのだが、人間においても名選手が名監督になるとも限らないように、サラブレッドも名競走馬が名種牡馬になるとは限らないというのが常である。
さらに種牡馬というのは場合にもよるが、大きな期待を集める種牡馬となれば数十億円近くの評価額が付けられることも珍しくない世界である。それを個人所有するとなれば、もしその種牡馬が良い成績を上げられなかったり、何らかの怪我や病気、先天性疾患や事故等で早期の種牡馬引退や急逝となった場合、評価額の低下や消滅による巨額の損失のリスクをすべてその個人が背負わなければならず。また種牡馬の健康管理や種付けに必要な設備や人員の確保をはじめとする維持費も全て一人で負担しなければならない。
その為、ただでさえリスキーな商材である競走馬を扱う生産牧場にとってこれほどのリスクを負って種牡馬を個人所有するというのは非常に難しいのが実情である。
これらの種牡馬所有のリスクに関する諸問題を解決するために20世紀半ば頃から欧米の生産界で急速に発達し、日本でも1980年代頃、バブルの影響で多くの高額な外国産種牡馬が輸入されるようになったことで社台グループを中心とした様々な生産者団体により盛んに取り入れられたのがこのシンジケートである。
まず評価額が6億円の馬がシンジケートを組まれて種牡馬入りすると仮定する。
シンジケートではまず法人を設立し、その法人がこの種牡馬の所有権を数十口に分割し、それを「本券」として発行し生産者や投資家に販売する。現在日本においては60口に分割するのが通例であるためここでは60口に分割したと仮定する。するとこの種牡馬の本券は評価額に保険料等の諸経費が上乗せされた額の60分の1の金額、即ち1000万円+αの価格で本券が60口販売されることになる。
このようにシンジケートを組んで種牡馬入りさせれば一人当たりのリスク負担は数千万円程度まで抑えられるため、生産界では数十億円クラスの非常に高額な種牡馬の導入も可能となった。
また、こうして販売された本券は、ただ単に種牡馬の所有権を示すだけでなく以下のような特典も付与される場合が多い。
・本券を除く種付け(余勢種付け)によって発生した利益分配
・シーズンごとの余勢種付け数や余勢の販売価格等を決定する総会への参加資格
一方で本券の所有者には、所有割合に応じた種牡馬の維持管理費の負担が求められる。
本券は販売時の規約等が定めない限り自由に売買・譲渡することも可能であるため、性質としては株式等の有価証券と同じである。
このようにリスク分散の観点からもシンジケートが優れたシステムであり、現代の競馬界に必要不可欠であることは間違いないことだが。当然問題点も存在する。
シンジケートによりリスク分散をした結果、種牡馬の導入に使える金額が大幅に増えたことで、本券や余勢を購入できる比較的に規模が大きい牧場にとってはリスクを抑えつつ、より良質な種牡馬に種付けできるというメリットを享受できるようになった。
一方で、本券や余勢を買うことすらままならない中小の牧場にとってはそれらのメリットを享受することは難しく、メリットを享受している大牧場との格差が拡大する一因となってしまっている。また、こういった格差拡大の結果として中小牧場が更なる規模縮小や廃業に追い込まれ、生産界の寡占化、序列の固定化を助長してしまうという側面もある。
シンジケートは先述の通り本券所有者たちの総会で余勢の種付け料が決定される。本券を所有する側の心理としては、可能な限り種付け料を引き上げて、余勢の販売益や本券で種付けして産まれた幼駒の付加価値を高めたいという思惑が当然ながら生じる。そのため、産駒の活躍に見合った額以上に種付け料が高騰するケースも存在する。その結果として実体余勢が売れ残り、余勢の売却益が減少しても、その種牡馬の幼駒の数が減ることで幼駒に希少価値が生じ、セリで高額で落札されやすくなるというメリットも存在しているため、そういった実体のない、或いは実体を大きく上回る種付け料の値上がりを発生させやすくしている。
基本的にシンジケートが組まれた種牡馬は総会で繋養先を決定するが、繋養先によっては自身の牧場からの交通の便が良くない等の不都合が生じる場合もあり、その関係で繋養先がいつまで経っても決まらないという事態が稀に発生することもある。
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最終更新:2024/03/30(土) 00:00
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