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パパゲーノ効果とは、「報道が果たしうる自殺抑制効果」を指す言葉である。英語「Papageno effect」の和訳。
自殺に関する加熱した報道は模倣自殺を招いてしまう、という話はよく知られており、「ウェルテル効果」(Werther effect)と呼ばれる。
これに対比する概念として、「であれば、逆に報道のあり方によっては自殺を抑制するのではないか」という考えが登場した。この「報道が自殺を抑制する」効果を「パパゲーノ効果」と呼ぶのである。
具体的には、「苦しい状況にあり、自殺を考えてしまったが、自殺を選択しなかった人々の事例」の報道は、自殺を抑制しうると推定されている。
この「Papageno effect」は、2010年に医学誌『The British Journal of Psychiatry』(英国精神医学ジャーナル)で発表された論文「Role of media reports in completed and prevented suicide: Werther v. Papageno effects」(自殺実行と抑止において報道が果たす役割:ウェルテル効果 対 パパゲーノ効果)にて提唱された。[1]
ただし、パパゲーノ効果はウェルテル効果ほどに強力かつ明確に立証されているものではない。希望と回復(hope and recovery)の描写への暴露が自殺念慮に対してどのような影響を与えるか調査した研究は複数あるが、統計的に有意な結果が得られなかった(つまり、パパゲーノ効果が確認できなかった)とする研究報告もあれば、有益な効果が有意に認めた(つまり、パパゲーノ効果を認めた)とする研究報告もあるのだ。
上記の2010年の論文の主著者(つまりパパゲーノ効果の提唱者)であるThomas Niederkrotenthaler博士は2022年発表の論文において、こういった複数の研究報告をメタ解析(※複数の独立して行われた研究の結果を統合して解析すること)し、希望と回復の物語への暴露は、暴露後4週間までの自殺念慮をわずかではあるが有意に減少させたとの結果を得ている。[2]
「パパゲーノ」(Papageno)とは、有名なオペラ『魔笛』の登場人物であり、鳥刺し(鳥を捕まえて売る職業)の男性である。「若い娘と結ばれる」という釣り文句に誘われて主人公に協力し、実際に「パパゲーナ」という恋人になってくれる娘と巡り合うがはぐれてしまう。
そのことに絶望して「さらば、偽りの世よ!」と首吊り自殺をしようとするが、不思議な3人の童子が現れて「その前に、鈴を鳴らしてみなさい」と勧め、それに従ってパパゲーノが鈴を鳴らしている間に、童子たちがパパゲーナを連れてきてくれる。喜んだパパゲーノは自殺を中止するのであった。リア充爆発しろ。
ちなみに、前述のパパゲーノ効果の提唱者であるThomas Niederkrotenthaler博士はオーストリアのウィーンにあるウィーン医科大学に所属していた。そして『魔笛』が初演された劇場はウィーンにあったし、このオペラの楽曲の作曲者であるモーツァルトもウィーンを中心に活動していた。別の土地の人が著者だったならば、別の効果名をつけていたかもしれない。
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最終更新:2024/11/28(木) 02:00
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