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オペラ(Opera)とは、 |
オペラ(歌劇)とは、ルネサンス末期のイタリアで興った、歌とオーケストラ伴奏を伴う演劇芸術である。
オペラから派生した一形式である「オペレッタ」もこの記事で説明する。
「イタリア語(ドイツ語)」+「クラシック音楽」の形で発展したミュージカルと考えればよい。
16世紀末に始まり、定番演目は18世紀末~20世紀初頭に書かれたものが大半だが、上演に関して言えば、多様な演出が試みられ、上流階級以外にもファン層が拡大している現代が最盛期とも言うこともできるかもしれない。
とくに上演が盛んなのは、母語でオペラを楽しめるドイツ語圏(ドイツ・オーストリア)、イタリア語圏(イタリア)。
ある程度の規模の街なら必ず昔ながらの歌劇場があり、オペラを愉しみとしている市民は結構多い。もちろん小さな歌劇場だと、ベルリン国立歌劇場やミラノ・スカラ座に出てくるようなレベルの高い歌・演奏が聴ける訳ではないのだが、それはそれで地方の大人たちの社交場としての雰囲気を持っているのである。
「オペラ」「オペレッタ」「ミュージカル」は、役者による歌をメインに据えた音楽劇という点では同じだが、それぞれが一応別のジャンルとして受容されている(ただし、同じ譜面でも演出によってオペレッタにもミュージカルにもなってしまう中間的な作品などもある)。
オペレッタは、オペラが成熟期を迎えた19世紀に、オペラから派生してフランス・ドイツ・オーストリアで流行した。主にクラシック音楽の団体によって上演されるのでオペラの一種と考えてもよいが、節を付けない台詞による進行を交えて軽妙に演じるものであり、既に古典的形式を確立していたそれまでのオペラとは大きな違いがある。
ミュージカルは、オペレッタを含めた様々な芝居やダンス、ポピュラー音楽を背景にして生まれた。
現代にふさわしい音楽劇の形式として20世紀のニューヨーク(ブロードウェー)やロンドン(ウエストエンド)で発展し、世界に広まっている。
オペラ・オペレッタがクラシック音楽に分類され、今日一般的にはクラシックの声楽教育を受けたオペラ歌手によって演じられているのに対し、ミュージカルはクラシックだけでなくジャズ、ロック、民族音楽などあらゆる今日的な音楽を包摂するジャンルとなっている。ミュージカルでは演出方針によって色々な俳優・歌手が役に扮し、いわゆるオペラ的な唱法はふつう好まれない。
台詞については、オペラは「レチタティーヴォ」と言って、原則的にはちょっとした会話などにも楽譜があり節回しが決まっているのだが、オペレッタは純粋な台詞部分がわりと多く、歌部分と区別されている。ミュージカルには作品によって両方のパターンがある。
プロによる公演形式を見ると、オペラは大がかりな舞台転換設備等を使用する場合が多く、専用設備のある大きなコンサートホール(歌劇場)の所有者が上演を計画する場合が多く、オーケストラも舞台前に数十人を入れて演じられる。
ミュージカルの場合、東宝・四季・宝塚による主要都市圏の目玉公演であれば1000人~2000人規模のミュージカル専用劇場において手の込んだ演出がされたりするが、全体的にみると舞台転換などはオペラの大演目に比べれば機能的になっており、生のオーケストラ等を入れないこともある。このため、プロレベルの劇団でも演出を工夫しながら小劇場や町のホールなどで演じることができる場合が多い。
また、オペラ歌手はふつう大きな劇場でも個人マイクは付けないが、ミュージカルでは一定以上の広さと設備のある劇場であれば、各キャストにピンマイクを付けて声量を調整するのが常套手段となっている。
海外作品を演る場合の使用言語については、ミュージカルだと特別な理由がない限りは日本語に訳して歌うのに対し、オペラでは原語(イタリア語・ドイツ語)上演のほうが盛んなため、電光掲示による字幕設備が一般化している。
「歌劇」は明治時代にオペラの日本語訳として作られた言葉であり、例えば「歌劇場」はオペラ用のホールを意味する。
ただし歌劇が東京で市民に定着してきた大正時代頃の歌劇団は、西洋のオペラやオペレッタをレパートリーとして演じながらも見世物小屋的なノリを色濃く保持していて、とりわけ宝塚などは戦後になると新形式であるミュージカルへ軸足を移して人気を博していった。
だから、宝塚歌劇団などは歌劇と名乗っていてもオペラは演じず、レパートリーとしている演劇はミュージカルである。そのため今では「歌劇」はオペラ・オペレッタに限らず、ミュージカルまで含めた歌付き音楽劇の総称であると捉える向きもある。
ニコニコに上がっている動画を貼りつつ、イタリア語演目、ドイツ語演目、フランス語演目、日本語演目、オペレッタの順に、代表的な作品を紹介していく。
原作は当時人気だった"小デュマ"の小説。「椿姫」というのは元々小説版の邦題で、森鴎外がつけた題らしい。
ヴェルディという作曲家は、社会から疎外される人々に焦点を当てた作品を好んで曲をつけることが多かったのだが、この話も19世紀ヨーロッパという同時代を舞台にして、道を踏み外してしまった高級娼婦の物語である。
お話は悲劇だが、音楽的な明るさ・華やかさ・力強さが発揮されており、脚本の素晴らしさと相俟って「オペラの中のオペラ」たる作品として世界中で上演され続けている。
映画『プリティ・ウーマン』の中で、ジュリア・ロバーツとリチャード・ギアが観に行っている作品はこれ。
第1幕の劇中合唱「乾杯の歌」が一番有名な曲目で、ニコニコ動画にも色々とUPされている。
右の動画の3分28秒~流れているのが「凱旋行進曲」。さしたる理由もないのだが、今や日本サッカーのテーマソングになりつつある曲である。
このオペラは、エジプトとエチオピアという二つの古代国家を舞台にした悲恋の物語である。
1860年代後半に、エジプトのアリー朝総督が考古学者に原案を作らせ、ヴェルディにオペラ製作を依頼して、やがて国策のような形でカイロで大規模に初演された。
ちなみに、劇団四季がエルトン・ジョンのミュージカル版『アイーダ』を2003年からレパートリーにしており、そちらも有名になってきている。
ミュージカル版の方は、話の筋は同じでもヴェルディの楽曲は一つも使用しないので、凱旋の大合唱や凱旋行進曲が聴けると期待して見に行ってはいけない。もっともミュージカル版はミュージカル版ですばらしい作品である。
20世紀オペラの巨匠・プッチーニによって作曲された、長崎が舞台になっている話である。
和服を着た蝶々夫人が歌うソプラノ・アリア「ある晴れた日に」の旋律は、日本人なら誰しも聴いたことがあるのではないだろうか。
原作は、当時の作家ジョン・ルーサー・ロングが書いた一編の短編小説。アメリカの大物劇作家ベラスコが見出して、イタリア人のプッチーニがオペラに仕立てることになった。
「トゥーランドット」は中国が舞台に比定されている西アジアの昔話で、18世紀にペティという作家が説話集に採録して名篇として知られていた。
なお、プッチーニ以前に「トゥーランドット」をオペラ化した作曲家は少なくとも11人いる!のだが、今やプッチーニの作品が完全にスタンダードとなっている。
最終幕のアリア「誰も寝てはならぬ」が、FIFAワールドカップやオリンピックで三大テノール・パヴァロッティによって歌われ、特にサビの部分は世界的に有名になった。
ここまで悲劇寄りのオペラを紹介してきたが、これは軽妙酒脱なストーリーと声の妙技が楽しめる作品である。
原作はボーマルシェによる戯曲で、ロッシーニの試みが2度目のオペラ化だった。
なお最近では、舞台の都市「セビリア」を現地のスペイン語に近い「セビージャ」と呼ぶことが増えている。
でも、このオペラに関してはやっぱり「セビリア」と呼んであげてください。
原作はボーマルシェによる戯曲で、前出『セビリアの理髪師』の続編として書かれたもの。
よく知られているように、ザルツブルグ出身でウィーンで活動したモーツァルトは、自分たちの言語であるドイツ語のオペラを創ることを望んだ人物なのだが、この作品についてはイタリア語の台本で書かれている。
序曲や「恋とはどんなものかしら」がとても有名。全体的にテンションの高いオペラである。
喜劇的なイタリアオペラの中でもとりわけ親しみやすく、日本でもしばしば上演されている。主要人物のそれぞれに華のあるアリアが与えられている。
台本はこのオペラのためにわすか1週間で書き下ろされた、田舎村における他愛のない恋愛喜劇である。
ドニゼッティの代表作で、政略結婚によって引き裂かれた男女の悲劇が題材。
第2幕で望まぬ相手との初夜でルチアが花婿を刺し殺し、発狂して血にまみれた姿で歌う「狂乱の場」は有名。
映画「フィフス・エレメント」では異星人の歌姫が歌い、人間には不可能な音域で歌い上げる「Diva Dance」へと繋がる。
原作は、当時イタリアで実際に痴情のもつれから起こった事件に取材したヴェルガの小説。シチリア島を舞台にした話である。
ドロドロしたストーリーだが、マスカーニの激しく、しかし時に胸を痛めつけるほど甘美な音楽がよくマッチしている。
戦前の日本における小劇団興行の世界では、唯一日本語ではなく原語のイタリア語で上演される謎の演目だったらしい。
モーツァルトの最後のオペラ作品。まだ基本的に「オペラ=イタリア語で歌うもの」という時代だったが、ドイツ語の台本を手に入れて大成功させ、ドイツオペラの礎を築いた。いくつかの既存の戯曲を流用・再編成し、コミカルかつナンセンスに仕上げている。
『椿姫』等と並ぶ世界屈指の定番オペラでありながら、子どもでも楽しめる話なので、特にドイツでは台本だけ子ども向けに書き換えたものが様々な機会に演じられたりしている。
この『魔笛』以来、ドイツ語の名作オペラには魔法などが登場するファンタジックな伝奇物が非常に多い。イタリアオペラの関心が主に、人間的な文学や生活劇、故事などに向いているのと比べて、明らかな傾向の違いが見られる。
ドイツの伝承を題材としたオリジナルオペラ。伝承の内容は、ある射撃手が所有する銃は7発中6発は必ず意のままに命中させることができるが、1発は悪魔の望むところに命中してしまうというもの。
話もなかなかよくできているが、やはり音楽が見事である。次々と繰り出される楽曲の旋律はなかなか耳から離れない。
平野耕太の漫画『HELLSING』では「魔弾の射手」ことリップヴァーン中尉とアーカードの対決において、「狩人の合唱」が引用され、OVAでも楽曲が使用されている。
イタリアのヴェルディと同時期の大家に、ドイツのワーグナーがいる。彼は作曲者として優秀なだけでなく、オペラに身を捧げ、オペラに豊かな文学性やドラマチックな演出を求めて数々の革命をもたらしたオペラ作家である。
1947年の日本初演は、日本のオペラ興行としては後にも先にも例のない、全公演入場率100%を達成している。
ドラマ『白い巨塔』(2003年版)でたびたび流れた曲でもある。唐沢寿明演じる財前が自らの手術の執刀を指揮者のタクトになぞらえて、目を閉じながら序曲のメロディーを口ずさんでいた。
音楽も展開もショッキングなオペラで、ワーグナーの最高傑作の一つに数えられる。
「トリスタンとイゾルデ」の話自体はケルト説話に源流があるとされる、欧米では今でも知らぬ者はいないというような古典的ロマンスである(「ロミオとジュリエット」「ウエストサイド物語」等は明らかにトリスタン・イズーのプロットの上にある作品)。
ワーグナー自身が大恋愛と挫折を経験しながら自ら台本を書きため、曲をつけたものである。
このオペラは北欧神話を元にした超大作であり、話は壮大かつ複雑、全曲ぶっ通せばなんと15時間にも及び(!)、4夜に分けて上演するように定められている(4日に分けても充分長すぎるのだが・・・最終日の公演は5時間を超えてしまう)。
序夜「ラインの黄金」、第1日「ワルキューレ」、第2日「ジークフリート」、第3日「神々の黄昏(ラグナロク)」から成り、それぞれが単独でもよく知られたタイトル。
今や世界に冠たる音楽祭の一つであるバイロイト音楽祭は、元々ワーグナーが『ニーベルングの指環』の全曲初演のために行ったのが始まり(第1回開催)である。バイロイトの歌劇場はこの作品のためにワーグナーが建設させたといっても良い、当時としては斬新な構造を持った劇場であった。今でもニーベルングは赤字覚悟でしばしば全曲上演されている。
余談ながら、貼った動画でも取り上げている楽曲「ワルキューレの騎行」は、ドライブ中に聴くと心拍数が上がって危険回避動作が遅くなってしまう、世界で最も危険な曲だという調査結果がある。
グリム童話に採録されている、かの有名なドイツ民話をオペラにしたもの。
フンパーディンクにとって音楽的に脂が乗りきっている時期の作品で、ドイツやアメリカではクリスマスになると歌劇場で上演される定番中の定番オペラである。
リヒャルト・シュトラウスの代表作。彼の作品の中では一番平易とされ親しみやすいオペラである。
台本は当時のドイツを代表する劇作家ホーフマンスタールが書いている。舞台はモーツァルト時代のウィーンということになっている。
音楽史上きってのメロディーセンスをもつビゼーによるこのオペラは、とにかく神がかり的な名曲が続出することで知られ、オペラとしてのみならず、「前奏曲」「アラゴネーズ」「闘牛士の歌」「ハバネラ(恋は野の鳥)」「第3幕への間奏曲」「ジプシーの歌」などがしばしば組曲として演奏される。
チャイコフスキーのバレエ音楽から採った「くるみ割り人形」組曲と並んで、クラシック音楽の中でも最も世の中で愛されている楽曲群と言えるだろう。
日本で初めて人前で演じられたオペラは、明治27年にオーストリア大使館主催で東京音楽学校(今の東京芸大)で演じた『ファウスト』第一幕だと言われている。
原作は言わずと知れたゲーテの劇詩『ファウスト』だが、グノーらしい流麗な音楽で、作中のエピソードが香り豊かに味付けされている。
娼婦の話である。最初に挙げた『椿姫』なんかも一応は高級娼婦の物語だが、こちらのほうが影があり、そんなに爽やかなロマンスではない。
右の動画の「瞑想曲」がヴァイオリンのレパートリー等として、とりわけよく知られている。
オペラ自体は従来日本での上演の機会は少なかったが、マスネもフランスオペラを代表する作曲家なのでぜひ作品に触れてみてほしい。
「鶴の恩返し」を翻案した『夕鶴』(1952年、作曲:團伊玖磨、脚本:木下順二)がその美しい音楽から、純日本産のオペラとしては髄一の人気を誇っていて、700回以上上演されている。元々はストレートプレイであり、そちらの上演も盛ん。
ただし、ニコニコ動画には残念ながら関連動画が存在する気配がない・・・(こんな感じw→Youtube)
わりと前衛的な音楽でオペラを聴こうと思ったら、松村禎三の1993年作品『沈黙』(遠藤周作の小説が原作)を見てみてはどうだろうか。重苦しいテーマで人気作にまではなっていないが、傑作との呼び声高く、新国立劇場で何度も再演されている数少ない国産オペラである。
別名『地獄のオルフェ』とも呼ぶ。
オペレッタをフランス及びドイツで人気ジャンルにした作品のひとつである。内容は、ギリシャ神話のエピソードを元にしたオリジナルストーリー。
右の動画に出てくる劇中曲は、運動会のBGMやらカステラの文明堂のCMやらによって、すっかり我々の耳にこびりついてしまった。
ウィーンの劇場主が台本作家に書かせ、J・シュトラウス2世に作曲を依頼した作品。今日ではオペレッタといえば『こうもり』と言うほどよく知られている。
オッフェンバック作品と比べて台詞部分が目立ち、笑える部分も多く、純粋に演劇として温かみもあり非常に人気の高い作品である。
大晦日の出来事を題材にしていて、ドイツやオーストリアでは「こうもり」の劇が大晦日の出し物の定番になっている。
今ではそれほど聴く機会がないのだが、大正時代の浅草オペラでは最大の流行演目だった。
日本語で上演されていたため、アリア「恋はやさし野辺の花よ」や「ベアトリ姐ちゃん」が日本語で普及し、昔の映画を見るとたまに使われていたりする。
掲示板
9 ななしのよっしん
2018/08/24(金) 13:37:54 ID: 3zd6Vls8FE
素晴らしい記事ではあるが、これ読んで満足しちゃって結局オペラに手を出さない奴がいるんじゃないかって気もする
ちょっとでも興味を持ったら、何も考えず記事に埋め込まれてる本編の曲をいくつか選んで聞いてみることをおすすめしたいね
そして「これだ!」という曲があったらオペラ本編を(実物でもDVDでもいいから)観てみること
実際に聞いたり観たりしないとわからないことは意外と多い
10 ななしのよっしん
2019/09/25(水) 00:59:45 ID: Ctd6qfw2IJ
曲に関しては昔何かの本に「序曲がたくさん有名なのはそのオペラのエッセンスが詰まっているからです」ってあった気がするけど本当?
オペラもクラシックもあまり詳しくないので…
11 ルイマ・スカーレット
2020/04/01(水) 14:51:42 ID: DlKqjIml0p
魔入りました!入間くんっていう漫画にオペラってキャラいたなー
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最終更新:2025/02/16(日) 20:00
最終更新:2025/02/16(日) 19:00
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