株式会社に対する概念として、持分会社というものがある。株式会社では、所有と経営の分離という建前があり、理屈上、会社に出資して株式を所有していることと、会社の経営に参画することは分離している。また、出資した株主の立場という株式を他者へ譲渡することは、定款等で制限されていなければ自由である。
一方、持分会社では出資者は経営に参画することが前提である。また、持分の譲渡は原則として不可能である。これは相続をもってしても例外ではない[1]。
以後、社員という単語が頻出するが、これは出資者という意味であり、従業員という意味ではない点に注意せよ。社員が0人になった会社は解散する(会社法641条4号)。
持分会社には、以下の3種類がある。
すべての社員が無限責任社員である会社である。無限責任というのは、出資額等による債務の弁済責任の限度が適用されず、すべての債務について連帯責任を負う(会社法580条)ということである。
要するに、単に個人が会社になっただけ、というイメージでよい。その特性から、同族会社の零細企業に多い。
有限責任社員と無限責任社員がどちらも少なくとも1名以上いる会社である。有限責任というのは、出資の価額までの連帯責任を負う(会社法580条2項)ということである。
後で説明する合同会社と異なり、出資の価額すべてを実際に出資する必要はない。ただし、その場合、出資していない額についてはきっちりと連帯責任を負うことになる。一方、出資額についてはそれが失われるだけでそれ以上の責任はない。なので、価額すべてをきっちり出資しているならば、それ以上の責任はない。
有限責任社員と無限責任社員がどちらも少なくとも1名以上いるという特性から、この形態のみ社員が2名以上いることが必須である。
現在、この形態で設立される会社はほとんどない。
すべての社員が有限責任社員である会社である。すべての出資価額は払い込む必要がある(会社法578条)。
現代において、小規模の法人を立ち上げる場合、合同会社を真っ先に考えることが多い。先述の通り、合名会社・合資会社には無限責任社員が必須であり、会社の債務の責任に対して無限に連帯責任を負わなければならない社員が必要となる。一方、合同会社であれば最悪、会社の保証人にさえならなければ会社ごと廃業してしまえばそれ以上債務の責任を追及されることはなくなるためである。
実際には、会社に対して経営者の連帯保証を要求することは多いので責任から完全には免れ得ないことが多いが。
結局、持分会社は単に有限責任社員と無限責任社員の数だけで決まるのだから、相互間の変更は容易である(会社法638条)。要は無限責任社員だけになったら合名会社、有限責任社員と無限責任社員が混在するなら合資会社、有限責任社員だけになったら合同会社になる。
ただし、合同会社に変更する場合だけは注意が必要で、すべての出資価額の払い込みが必須になる(同640条)。
株式会社と持分会社の間で会社の種類が変わることを組織変更と呼ぶ。株式会社→持分会社の場合はすべての株主の、持分会社→株式会社の場合はすべての社員の同意が必要となる。
要するに、すべての出資者の同意が必要で、相当面倒な手続きとなる。
持分会社を設立するには、まず定款を作成する必要がある。その際、会社の種別を決める必要がある。定款には誰が社員なのかも記載する。また、合資会社の場合、誰が有限責任社員で誰が無限責任社員であるかも記載が必要となる。
その他、各有限責任社員の出資額の記載も必要である。合同会社の場合、設立までに出資額の払い込みも要する。
それが終わったら、会社の登記を行うが、その際に登録免許税が必要となる。その登録免許税の額は、
である(株式会社では最低額15万円である。また、株式会社では定款の認証も必要であり、そのための費用もかかる)。なお、定款には印紙税4万円がかかるが、電子定款であれば不要である。このため、設立自体にかかる費用は6万円である。
ただ、設立した後、実際に事業を行うお金は必要だし、各種登録のための手数料も必要なため、実際にはもっとお金がかかるが(合同会社の場合、資本金857万円以下であれば6万円の登録免許税で済むため、ここが1つのラインである)。
なお、会社には税金がかかる。たとえ赤字であったとしても、法人住民税の均等割は発生する。資本金1000万円以下の場合で、従業員数50人以下、事業所が本社のみの1市町村のみの場合、都道府県の均等割が2万円、市町村の均等割が5万円の7万円がかかる。黒字の場合、法人税・法人住民税の所得割・法人事業税などが発生するし、ビルや土地を持っていれば固定資産税も発生する。
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最終更新:2025/12/10(水) 10:00
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