資本金(英:capital)とは、企業の財務に関する言葉の1つである。
資本金とは、貸借対照表の「純資産の部」にある項目の1つである。
資本金は、「過去の出資や損益取引・資本取引で発生した利益[1]によって生まれているという性質と、株主に支払う可能性が比較的に低くて事業を運営するときの基礎にしやすいという性質を併せ持つ企業保有資産を合計した数値」と定義することができる。
会社法では株式会社の資本金を「設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産、もしくは準備金や剰余金から振り替えたもの」と定義している[2]。
国語辞典の1つでは資本金を「事業を運営するときの基礎となる資金」と定義している[3]。
資本金を増額することを増資といい、資本金を減額することを減資という。
企業が株式を発行するときに株主となる者が資産を支払って株式を購入することを出資という。○円の出資が行われると、企業は○円だけ資産を増やし、○円の1/2以上が資本金となり、それ以外の全額が資本準備金となる。つまり、出資が行われると、その金額の1/2以上が増資される。
企業が、土地・建物・機械といった固定資産を「資本金の見合いとなる資産」として所有しているとする。そうした固定資産を株主への配当にしようと思ったら、資本金の減額をしつつ「その他資本剰余金」の増額をして、「資本金の見合いとなる固定資産」を「その他資本剰余金の見合いとなる固定資産」に変換する。そうしてから、「その他資本剰余金の見合いとなる固定資産」を売却して「その他資本剰余金の見合いとなる流動資産(銀行預金)」に変換し、その他資本剰余金を減額しつつ銀行振り込みして株主に配当を支払う[4]。
企業が、在庫・銀行預金・売上債権といった流動資産を「資本金の見合いとなる資産」として所有しているとする。そうした流動資産を株主への配当にするときも同様で、資本金の減額をしつつ「その他資本剰余金」の増額をして、「資本金の見合いとなる流動資産」を「その他資本剰余金の見合いとなる流動資産」に変換し、在庫や売上債権を銀行預金の形態に変換して、その他資本剰余金を減額しつつ銀行振り込みして株主に配当を支払う。
企業が資本金を減額するときは、基本的に、株主総会の特別決議を必要とする。「定時株主総会の日における欠損補填」を目的とする減資だけは株主総会の普通決議で十分だが、それ以外の減資なら株主総会の特別決議を必要とする。そして、株主総会の特別決議は普通決議に比べてハードルが高く、決議を行いにくい。
つまり、企業が、土地・建物・機械といった固定資産や在庫・銀行預金・売上債権といった流動資産を「資本金の見合いとなる資産」として所有している場合、株主はそれを配当にすることが難しい。「資本金というのは株主でさえ簡単に手を出すことができない資産の総額であり、事業を運営するときの基礎となっている資産の総額である」と表現することができる。
企業が株主からの出資・損益取引利益・資本取引利益といった理由で銀行預金○円という資産を得た場合、その○円を資本金に登録してしまうと「株主から○円を配当に出すように求められる危険が低い」と安心するようになる。そして企業は、資産の銀行預金○円分を土地・建物・機械といった固定資産の形態に変更して設備投資することを行いやすくなる。
逆に言うと、企業が株主からの出資・損益取引利益・資本取引利益といった理由で銀行預金○円という資産を得てその銀行預金○円で設備投資しようと思った場合、その全額の○円を資本金に登録することが非常に望ましい。
設備投資を盛んに行って巨額の固定資産を持っている企業というと通信企業である。通信企業は、株主から「設備などの固定資産を銀行預金に替えて配当にしろ」と要求される可能性を下げるため、巨額の固定資産を資本金として登録することが多い[5]。
製造業や通信業なら資本金は土地・建物・機械といった固定資産の形態になって企業の設備となっていることが多い。「資本金」という名称からは銀行預金・現金といった流動資産を連想しやすいが、そのイメージとは裏腹に固定資産の形態になっていることになる。
このため、製造業とか通信業においては「資本金」と呼ばず単に「資本」と呼ぶ方が実態に合っていることが多い。
一方で、小売業なら資本金を運転資金として仕入れに使うことがある。その場合は資本金が在庫という流動資産の形態になり、さらに「売り上げて得られた銀行預金」とか売上債権といった流動資産に変化する。
資本金というのは株主でさえ簡単に手を出すことができない資産の総額であり、事業を運営するときの基礎となっている資産の総額である。そのため資本金の金額を見ればその企業の事業の大きさがわかる。
銀行が企業に融資するとき「融資の最高額は資本金の○倍までにする」と社内で決めていることもある。
利益剰余金を多く持っていて資本金を少なく持っている企業に対して、銀行は「利益剰余金は株主総会の普通決議で比較的容易に配当にされてしまう」と不安を感じやすい。このため、利益剰余金が積み上がっている企業に対する信用は、資本金が積み上がっている企業に対する信用よりも弱い。
かつての日本では、株式会社なら1千万円の資本金が必要で、有限会社なら3百万円の資本金が必要だった。2006年5月に施行された新会社法では資本金が1円の会社を設立できるようになった。とはいえ、資本金をある程度多めに設定して銀行からの信用を得るのが会社経営の常道と言える。
資本金の金額を見ればその企業の事業の大きさがわかる。政府が企業に規制を掛けるとき、資本金の金額で企業を分類する事が多い。
下請法は次の場合に適用される。このため資本金を1千万円にしているのなら確実に下請法で保護される。
資本金を1千万円未満にして起業すれば設立初年度から消費税が最大2年間免除される。また資本金が1千万円未満なら法人住民税が軽減される。
資本金を1億円以下にすると、法人税法で定義される中小企業になり、法人税の税率が軽減される。また、交際費のなかで年間800万円まで損金に算入できて法人所得を圧縮できて法人税を節税できる。また、30万円未満の固定資産を取得した場合には、年間300万円までその全額を損金に算入することができ、法人所得を圧縮できて法人税を節税できる。さらに外形標準課税が適用されない。それ以外にも税制面での優遇措置がある。
資本金を1億円超にすると法人税法で定義される大企業になり、税金の支払いが増える。
資本金が5億円以上になると、会社法第2条六で定義される大会社になり、会計監査人の設置が義務づけられる(会社法第328条)。このため銀行などからの信用が増す。
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最終更新:2024/11/08(金) 02:00
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