その街に行かなくてはならない。
なにがあろうと
街とその不確かな壁とは、村上春樹による第15の長編小説である。
2020年代/令和で最初の村上春樹による長編である。春樹はすでにこの時点で70代を迎えていた。
春樹の代表作に一つにして日本の読者でも特に人気が高い『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』と強い関連がある作品である。『世界の終り〜』でも出てきた人間の「影」が存在しない高い壁に囲まれた不思議な世界「世界の終り」が本作には登場する。本作では過去作では書き切ることができなかった「世界の終り」の詳細を随所に見ることができる。
その一方「ハードボイルド・ワンダーランド」の方は登場せず、その代わりに初恋が忘れられない平凡な中年男性の半生およびモノローグが代入されている(ちなみにこの部分はちょっと新海誠のアニメを連想させるところがあるが、そもそも新海は春樹の影響下にあるクリエイターである)。冒険活劇やSFといった要素を兼ね備えていた「ハードボイルド-」が抜けたことによって、作品世界全体が物静かなものになっている。
10代の頃、「ぼく」は「きみ」に惹かれていた。両者の間には友達以上恋人未満の状態が続いていたが、突然きみが不可解なメッセージを残してぼくのもとを去ってしまった。このことにぼくは強烈なショックを受ける。一方、世界のどこかにある高い壁に囲まれた街で暮らす「私」は街の閉塞感に息苦しさを感じていた。脱出の手口を探るもどこにも出口などないように思える。ぼくの世界と私の世界にはとある共通点があるだが……
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最終更新:2024/05/13(月) 18:00
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