ハードボイルド(hardboiled)とは、黄身までしっかりと固くなった「堅ゆで卵」をあらわす言葉である。
転じて、感情や状況に流されず、軟弱、妥協を嫌う生き様や、それを描いた小説のジャンルのことを指す。
トレンチコートにソフト帽、煙草にバーボンといった記号的な表現にも使われる。
(これはチェックのシャツにリュックを背負った人間を「オタク」と表現するようなものだが)
1920年代のアメリカで、タフで非情な男たちを主人公にした一連の小説があった。西部劇に源流を持つその物語は、ダシール・ハメット、レイモンド・チャンドラーといった作家によって一連の文学作品へと昇華されていった。
ハメットの「マルタの鷹」は感情表現を一切用いず、「報告書のように簡潔な」文体を使って主人公の行動を描いている。ハメットの作品は後のハードボイルドの礎となったが、犯罪組織や暴力といった形骸だけを真似た小説も数多く登場した。
チャンドラーは、フィリップ・マーロウという探偵を通じて、退廃した人々やアメリカの姿を描き、その感傷を含んだ文体は多くのフォロワーを生んだ。ロス・マクドナルドはその代表で、探偵リュウ・アーチャーはさながらカウンセラーのように「病んだアメリカ」に相対し続ける。
こうしたハードボイルド・ミステリの底流には、英国が生んだパズラー的なミステリへの反発があった。ホームズに代表される超人的な探偵や、複雑で現実離れしたトリックは、「特権階級的である」としてアメリカ人の心性に馴染まなかった。ハードボイルドの探偵は、おしなべてディレッタントではなく、しばしば卑俗的な「市民の代表」である。
多くのハードボイルド小説が私立探偵を主人公にしているためか、日本ではしばしば「私立探偵小説=ハードボイルド」というカン違いが発生する。
もちろん、私立探偵の出てくる小説が全てハードボイルドというわけではないし、その逆もまた然り。アメリカでは「私立探偵小説」というジャンルで括られているが、日本ではこの言葉は今ひとつ普及していない。
※他にもご自由にお願いします。
掲示板
119 ななしのよっしん
2023/01/23(月) 20:21:27 ID: dqGG8U4TKS
男の美学(ダンディズム)をハードボイルドと言ってる人が割といる気がする
120 ななしのよっしん
2023/03/29(水) 08:07:20 ID: 2fOCRkaxPF
元は冷戦前期以前のアメリカの文化であるものを日本に探そうとすれば、
よほど禁欲的に第三者視点を維持しないと「俺の望む男の美学」になってしまうからな
121 ななしのよっしん
2023/07/07(金) 22:20:53 ID: +YbDmJIDBi
サラ・パレツキーが、要するにVIは本物の拷問は受けません、それが作者からのプレゼントです、と書いてた。
本記で拷問されたらどんなタフなハードボイルドでも壊れる、単に運がいいからいきがれているに過ぎない。
本物の権力・本物の暴力の前では何の力もない、誰も守れず壊れるだけだ。
そう考えるとみっともない存在なんだよ、ハードボイルドってのは。
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最終更新:2024/11/25(月) 13:00
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