スマートファルコン 単語


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スマートファルコン

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スマートファルコンSmart Falcon)とは、2005年生まれの日本の競走馬である。栗毛の牡馬。

地方交流重賞荒らしから武豊との出会いで覚醒し、超ハイペースでブッ飛ばしてそのまま逃げ切るスタイルで全盛期には年間無敗を記録、文字通りの無敵を誇ったダートの逃げ馬。

主な勝ち鞍
2008年:浦和記念(JpnⅡ白山大賞典(JpnⅢ兵庫ゴールドトロフィー(JpnⅢ
2009年:ブリーダーズゴールドカップ(JpnⅡ佐賀記念(JpnⅢ名古屋大賞典(JpnⅢ
    かきつばた記念(JpnⅢさきたま杯(JpnⅢ
2010年:JBCクラシック(JpnⅠ) 東京大賞典(JpnⅠ)
    浦和記念(JpnⅡかきつばた記念(JpnⅢさきたま杯(JpnⅢ
2011年:帝王賞(JpnⅠ) JBCクラシック(JpnⅠ) 東京大賞典(GⅠ)
    ダイオライト記念(JpnⅡ日本テレビ盃(JpnⅡ
2012年:川崎記念(JpnⅠ)

主な記録
重賞19勝(JRA所属馬最多)
重賞9連勝(JRA所属馬最多タイ)
ダート2000m日本レコード(2010年東京大賞典、2:00.4)

曖昧さ回避 この記事では実在の競走馬について記述しています。
この馬を元にした『ウマ娘 プリティーダービー』に登場するキャラクターについては
「スマートファルコン(ウマ娘)」を参照してください。

砂のハヤブサ

血統

父:ゴールドアリュール
母:
ケイシュウハーブ  母父:*ミシシッピアン  半兄:ワールドクリーク(父:マジックミラー)

父は大種牡馬サンデーサイレンス産駒唯一の中央ダートGⅠ馬。スマートファルコンは初年度産駒にあたる。母のケイシュウハーブは自身・近親とも競走成績が振るわず、超マイナーな種牡馬と配合されるとか一時は繁殖失格の烙印を押されかけたが、ワールドクリークが東京大賞典を制し、ドバイワールドカップに出走(6着)したことによりその繁殖能力が見直される。
配合する種牡馬の質も向上し、その中でゴールドアリュールと配合され、生まれたのがスマートファルコンである。

デビュー~5歳春:夢破れてドサ回り

美浦の畠山吉宏厩舎に入厩し、デビューは2007年の10月。父と兄がダートで活躍したことから最初はダートを走っていたが、3歳となって芝のOPジュニアカップを後方から差し切り勝ち(ちなみにこのレースの2着も後にMCS南部杯を勝つ同じゴールドアリュール産駒のオーロマイスター)。この勝利でクラシックを目指すことになった。
しかし共同通信杯、アーリントンカップと見せ場なく敗れ、皐月賞ではあえなく最下位に撃沈。これを期に小崎憲厩舎へと転厩し、ダート路線へ再転向する。

再転向初戦となるジャパンダートダービーからはデビュー戦で手綱をとった岩田康誠が鞍上に戻り、以降2010年帝王賞まで主戦となる。ここではクラシック最下位仲間のサクセスブロッケンの2着と惜敗。
8月、小倉のKBC杯(OP)を逃げ切って古馬相手の初勝利を挙げ(結果的にこれが最後の中央出走となった)、続く10月の金沢・白山大賞典(JpnⅢ)も逃げ切り勝ちしてゴールドアリュール産駒初の重賞初制覇を飾る。
この勢いに乗ってJBCスプリントに出走するが、逃げたバンブーエールとの叩き合いに競り負け、また2着に敗れる。

11月の浦和記念(JpnⅡ)は逃げて7馬身差の圧勝。東京大賞典は収得賞金が足りず出られそうになかったため向かった12月の兵庫ゴールドトロフィー(JpnⅢ)も4馬身差の楽勝。
これだけ強さを見せれば当然、4歳となる翌年もかしわ記念や帝王賞、JBCクラシックといったGⅠ級のレースへの出走が目標となるところである。ところがこの後、なんとスマートファルコンはこれ以降、1年半にわたって一度もGⅠ級レースに出走せず、地方のJpnⅡ・JpnⅢを荒らし回ることとなる。佐賀記念、名古屋大賞典、かきつばた記念、さきたま杯と前年から重賞6連勝など、前述した3歳11月の浦和記念から、5歳5月のさきたま杯までの1年半で、北は門別から南は佐賀まで地方の交流重賞を転戦し11戦9勝。その全てがJpnⅡ・JpnⅢであった。

地方の交流重賞に番長として君臨しながら、肝心のGⅠや中央のレースには一向に出走しないという姿勢ゆえにファンからは「スマートファルコンは地方でドサ回りしているぞ」と評され、2010年6月、1年半ぶり出走した帝王賞において6着と完敗したことから、そうした評価がさらに定着しつつあった。

ぶっちゃけた話、当時の口さがない競馬ファンからは「弱い者いじめ」だの「強い相手から逃げてる」だと言われてたいへん評判の悪かったこの「ドサ回り」だが、もちろんスマートファルコン陣営にもいろいろと事情はあった。
まず当時のスマートファルコンはとにかく非常に引っかかりやすい気性難だった。また3歳時に結果を出したJDDと浦和記念は2000m、白山大賞典は2100mに対し、JBCスプリントと兵庫GTは1400mだったため、距離適性がどっちなのかよくわからなかった。そのため、まず適性を模索しながらじっくりレースを教え込もうという意図があったといわれる。
また、当時は4歳夏に収得賞金が半分になる降級制度があったうえ、カネヒキリ、ヴァーミリアン、ボンネビルレコードといった猛者が地方GⅠの数少ない中央出走枠を占めていたため、確実に出走するために充分な収得賞金を稼ぐ必要もあった(3歳にGⅠで2着2回獲ってるのに?と思うかもしれないが、ダートGⅠの賞金は安い。2着だとJDDは1750万円、JBCスプリントも2800万円しか貰えないのである)
ついでに3歳秋に「ドサ回り」で唯一大敗した浦和記念で落鉄してトモを痛めたというアクシデントもあった。
しかしそうした事情を陣営が積極的に公言していたわけでもなかったため、結果として陣営が慎重に勝てるレースを選んで馬の成長を待った「ドサ回り」は、どちらかといえば悪評として語られることになってしまったのであった。

ちなみにこの頃のスマートファルコンは、ダートの強豪馬としてはわりと標準的な「相手次第で逃げる先行馬」であった。

5歳秋~7歳:「砂のサイレンススズカ」爆誕!

2010年の9月に、主戦騎手だった岩田騎手が落馬骨折したため、武豊騎手ヘ乗りかわりとなった。これがスマートファルコンの最大の転機となる。

武豊騎乗初戦の日本テレビ盃ではそれまで通りの先行策も、地方競馬の雄フリオーソの3着に敗れる(2着はトランセンド)。
この影響で、続くJBCクラシックで4番人気まで人気を落とすが、ハイペースで逃げをかまして上がり最速という相手に付け入る隙を1mmも与えないレースでフリオーソ相手に7馬身差 の圧勝。
続く浦和記念でも、マイペースに逃げて6馬身 差の楽勝。
前に馬を置くと引っかかりやすい彼の気性は、とにかくハイペースでガンガン先頭を突っ走るのが一番向いていたのである。サイレンススズカなどでそうした逃げ馬の扱いに慣れていた武豊によって、眠っていた潜在能力が引き出された瞬間だった。

兄弟制覇かつ親仔制覇という記録のかかった東京大賞典では、雪辱を期すフリオーソとの対決となったが、1000m通過が58秒9 というとてつもないハイペースで逃げ、悠然とした手応えで1と3/4馬身差という着差以上の圧勝。そしてタイムは衝撃の2:00.4 タイムの出にくいとされるダートの良馬場で、ダート2000m日本レコードを叩き出した。この年の皐月賞(ヴィクトワールピサ)の勝ちタイム2:00.8より速いという異常すぎるこのレコードタイムは、2022年現在も更新されていない。
この活躍を受け、NARグランプリダートグレード競走特別賞に選出される。 
(中央・地方を問わずその年のダート路線で最も活躍した馬に与えられる賞である。) 

2011年に入り、ドバイへの遠征が計画されるが、疲れが抜きれないとしてこれを回避。初戦のダイオライト記念を8馬身差で圧勝。6月に行われた帝王賞では、この頃のダート界最強の一角であったエスポワールシチーとの対決となり、どのような結果になるか盛り上がっていた。しかし結果は、またもレースレコードの2:01.1 を叩き出して2着のエスポワールシチーに9馬身差をつける大圧勝。

この突然の覚醒に、「なぜスマートファルコンは、ついこの前まで地方ドサ回りしてたんだ?」と不思議がるファンも続出した。武豊と出会ってから、ハイペースで脚色衰えず楽勝するレースを続けるようになり、「ダートのサイレンススズカ」と呼ぶファンも現れ始める。そして2011年の帝王賞後に、武豊本人の口からもそう言わしめた。ただ、サイレンススズカは途中で故障し予後不良となっているので、そこまで被ってほしくないという心境がある。

秋からは去年同様日本テレビ盃から始動し、4馬身差で勝利。続くJBCクラシックではドバイワールドカップ2着馬トランセンドと約1年ぶりに対決。完全なマッチレースとなる中、1馬身差まで詰め寄られたものの勝利。日本ダート界最強の座に君臨することになった。
その後、ジャパンカップダートにおけるトランセンドとの再戦が競馬ファンの間で望まれたが、疲労を理由にこれを回避。連覇がかかる東京大賞典ではワンダーアキュートにあわやという所まで追いつめられるが、3.5センチのハナ差でこれを凌ぎ史上2頭目の連覇、そして年間無敗を達成。
上記の成績から2年連続でNARグランプリダートグレード競走特別賞に選出された。

明けて2012年、衰えも囁かれたが初戦の川崎記念ではロケットスタートからいつもの形に持ち込み、ヴァーミリアンのレコードを2秒 縮めるタイムで圧勝。
陣営はドバイワールドカップ挑戦をついに観念したか表明。ドバイへ旅立った。
アメリカンな勝ち方をしてきたため、かなりの期待を集めたが…まさかの出遅れ後方待機で惨敗というもうなんとも残念としか言いようがない結果に終わってしまった。
ゲートに突進して頭突きしてしまって下がった瞬間にゲートが開いたとか、ソーユーシンクに寄られたとかあったらしいが…ともかく、惨敗という結果だけが残ってしまった。残念。
他の有力馬もいいとこなしだったのが唯一の慰めではある。 

引退~種牡馬として

帰国後、とんと話題を聞かなかったが秋競馬の始まるころ、なんと引退というニュースが飛び込んできた。ドバイでの消耗が予想以上だったのであろう、ついに脚を痛めてしまい、年齢を勘案して引退となったようである。 
結局、中央で走ったのは2008年夏の小倉以降一度もなかったが、地方で見せた凄まじい快速っぷりは見逃せなかったのかなんと社台スタリオンステーションで種牡馬入りが決定した。カネヒキリがすっごい顔で見てるぞ。2014年産まれの産駒以降、毎年地方や交流重賞を勝つ馬が現れており、父ゴールドアリュールの後継種牡馬の一員としてのポジションを確立している。

願わくば、一度ブリーダーズカップ・クラシックなんかで駆ける姿を見たかったものである。その夢は、これから生まれる彼の血を引く仔に期待していいかもしれない。

あれこれ

年間無敗を達成した2011年の単勝オッズは1.0倍、1.2倍、1.0倍、1.2倍、1.0倍。ワンダーアキュートに追いつめられた東京大賞典はGⅠなのに単勝元返しであった。そのぐらい、全盛期のスマートファルコンは文字通り手の付けようがない強さを誇った。相手が弱かったわけではなく、相手がエスポワールシチー、フリオーソ、トランセンドといった猛者揃いだったことは前述した通りである。

もともと地方ダートは小回りで直線が短いため逃げ・先行有利であり、ダートのチャンピオンホースは先行馬が多い。しかしその中でもスマートファルコンは超ハイペースでブッ飛ばしてそのまま逃げ切ってしまうため、負かすためにはそれこそ彼以上のペースで玉砕覚悟の競り掛けにいって潰すぐらいしか方法がないが、そもそもスマートファルコンに競り掛けに行けるレベルの馬はそんな共倒れのリスクを取る理由がない。結果、有力馬が合理的なレースをする限りスマートファルコンが負ける理由がないというのが全盛期のスマートファルコンであった。ある意味、展開に左右されない「逃げ馬最強説」を体現した馬とも言える。

4歳時の「ドサ回り」の理由はおおよそ先述した通りだが、覚醒後も最後まで頑なに中央のレースに出なかった理由は公には語られておらず諸説ある。ドサ回り時代に坂がある盛岡のマーキュリーカップで敗れており、MCS南部杯にも出走しなかったことから「坂が苦手だった」説がよく言われているが、実際のところは当時の陣営に聞くしかないだろう。

武豊にとっては、2010年の落馬事故以来、いろいろあって勝ち星が大きく落ちこんでいた時期であった。2005年には200勝、2009年も140勝していたが、2010年から2012年の間は50勝~60勝台という惨状で、「武豊は終わった」なんて言われていた。そんな時期に武豊を救ったのがスマートファルコンであり、その後武豊は2013年の日本ダービーをキズナで勝利して復活することになる。

血統表

ゴールドアリュール
1999 栗毛
*サンデーサイレンス
1986 青鹿毛
Halo Hail to Reason
Cosmah
Wishing Well Understanding
Mountain Flower
*ニキーヤ
1993 鹿毛
Nureyev Northern Dancer
special
Reluctant Guest Hostage
Vaguely Royal
ケイシュウハーブ
1988 芦毛
FNo.9-c
*ミシシッピアン
1971 鹿毛
Vaguely Noble *ヴィエナ
Noble Lassie
Gazala Dark Star
Belle Angevine
キョウエイシラユキ
1980 芦毛
*クラウンドプリンス Raise a Native
Gay Hostess
*アリアーン *シルバーシャーク
Nucciolina

クロス:Vaguely Noble 3×5

産駒成績

2014年産

  • スターレーン (牝 母 アリーペデ 母父 タニノギムレット)
    • 主な勝ち鞍 '17年ル・プランタン賞(地方重賞)
  • ダンストンリアン (牝 母 フローラルウインド 母父 アグネスタキオン)
    • 主な勝ち鞍 '17ハヤテスプリント(地方重賞)

2016年産

  • アイオブザタイガー (牡 母 ミラノリッチ 母父 キングカメハメハ)
    • 主な勝ち鞍 '18兼六園ジュニアカップ(地方重賞)、'18金沢ヤングチャンピオン(地方重賞)
  • オーヴェルニュ (牡 母 ギュイエンヌ 母父 タニノギムレット)
    • 主な勝ち鞍 '21東海ステークス(GII)、'21平安ステークス(GIII)

2017年産

  • ティーズダンク (牡 母 ビフォーダーク 母父 キングカメハメハ)
    • 主な勝ち鞍 '19サンライズカップ(地方重賞)、'20戸塚記念(地方重賞)、'21マイルグランプリ(地方重賞)、'21ゴールドカップ(地方重賞)
  • ブロンディーヴァ (牝 母 アンソロジー 母父 サクラバクシンオー)
    • 主な勝ち鞍 '19ローレル賞(地方重賞)
  • マルケイマーヴェル (牝 母 ドリームレインボー 母父 *カコイーシーズ)
    • 主な勝ち鞍 '20ひまわり賞(地方重賞)

2018年産

  • シャマル (牡 母 ネイティヴコード 母父 *アグネスデジタル)
    • 主な勝ち鞍 '22東京スプリント(JpnIII)
  • チサット (牡 母 ネフェルメモリー 母父 *アジュディケーティング)
    • 主な勝ち鞍 '21京浜盃(地方重賞)
  • ラジアントエンティ (牝 母 ミヤビグローリー 母父 アグネスタキオン)
    • 主な勝ち鞍 '20園田プリンセスカップ(地方重賞)、'20ラブミーチャン記念(地方重賞)

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関連項目

  • 競馬 / JRA
  • 競走馬の一覧
  • 武豊
  • 2008年クラシック世代
  • ゴールドアリュール
  • ワールドクリーク
  • サイレンススズカ
  • エスポワールシチー
  • トランセンド
  • シャマル(競走馬)
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