サマーウインド(Summer Wind)とは、2005年生まれの日本の競走馬。栗毛の牡馬。
地方出戻りから破竹の勢いでダート短距離界の頂点に立ったが、たった一通の招待状の遅れに運命を狂わされた馬。
主な勝ち鞍
2010年:JBCスプリント(JpnⅠ)、東京盃(JpnⅡ)、クラスターカップ(JpnⅢ)
父*タイキシャトル、母シンウインド、母父*ウエスタンウインドという血統。
父は言わずと知れた最強マイラー。種牡馬としてはサンデーサイレンスと同じHalo系というのが大きなネックになってしまったものの、ウインクリューガーやメイショウボーラーを輩出した。サマーウインドは6年目の産駒。
母は1988年スワンS、1990年京王杯スプリングカップの重賞2勝を挙げ、マイルCS・安田記念でも4着などの結果を残した実力馬。9頭の仔を生み、サマーウインドがラストクロップである。
母父はGallant Man産駒で、32戦5勝、GI3着が2回あるだけの重賞未勝利馬。日本で種牡馬入りしたが、中央重賞産駒はシンウインドのみに終わった。
2005年5月25日、門別町の槇本牧場(主な生産馬にアラタマワンダー、マキハタコンコルド、ユメノホノオなど)で誕生。一口馬主クラブのヒダカ・ブリーダーズ・ユニオンの所有となり、1口7万8800円×200口(=1575万円)で募集された。
育成時はテイエムオペラオーなどを輩出した賀張共同育成センターで育成された。担当はオペラオーと同じ羽石大逸氏だったそうな。
栗東・庄野靖志厩舎に預けられることになったサマーウインドだが、2歳時に患った両前脚の骨膜炎に始まり調整がなかなか順調にいかず、デビューは遅れに遅れに遅れ、ようやくデビューできたのは3歳の8月。小倉・芝1200mの未勝利戦で熊沢重文を鞍上にデビューしたものの、初戦は14着撃沈。
同条件の2戦目で上がり最速で2着に突っ込み、ダートに切り替えて3戦目で未勝利脱出を目指したが、今度は右前膝骨折で戦線離脱。未勝利戦の終了にはどう足掻いても間に合わなくなってしまった。
というわけでJRA登録を抹消し、門別競馬場の原孝明厩舎に移籍。無事に怪我も治り、4歳となった6月、C級戦のサッポロ生ビール黒ラベル特別で復帰すると、持ったままでレコード8馬身差圧勝。続く8月のアドマイヤドン賞では2着に2.7秒差をつける大差の大楽勝。あっさり中央復帰を決めた。
庄野厩舎に戻ると、ここから一気の快進撃が始まる。
まずは10月、京都・ダート1400mの平場500万下にて母にも騎乗した武豊を迎えて挑み、断然人気に応えて逃げ切り快勝。続く1200mの円山特別(1000万下)はルメールを迎えて5馬身差でレコード楽勝。明けて5歳初戦、中山・ダート1200mの初日の出S(1600万下)も内田博幸を鞍上に5馬身差で圧勝。5連勝で一気にオープンへと駆け上がった。
勢いに乗り、武豊とともに根岸ステークス(GⅢ)で重賞初挑戦。2.0倍の1番人気に支持されたが、11番人気の伏兵グロリアスノアに差し切られて2着。
1400mだとちょっと長い?ということで、フェブラリーSは見送り休養。6月の京都・ダート1200mの天保山ステークス(OP)で藤岡佑介を鞍上に復帰すると、トップハンデ57kgもなんのその、1.3倍の支持に応えて快勝。以降、藤岡佑介が主戦となる。
続いてプロキオンステークス(GⅢ)で1400mに再挑戦したが、ケイアイガーベラのレコード逃げ切りに4馬身突き放されて2着。
中央にはダート1200mの重賞がほとんどないので、盛岡のクラスターカップ(JpnⅢ)へ。単勝1.2倍の断然の支持を受けると、スタートからスムーズにハナを取って逃げ、4角で一旦メイショウバトラーにかわされたが、直線で悠々と差し返すとあとは後ろを突き放して2馬身差で完勝。1:08.9のレコードタイムで重賞初制覇を飾る。
もちろん目指すは船橋のJBCスプリントであり、前哨戦として大井の東京盃(JpnⅡ)へ。ここでも1.3倍という断然の支持を受けたサマーウインドは、先手を取ってナイキマドリードとともに後ろを離して逃げると、4番人気の地方馬ヤサカファインに詰められたがハナ差残して逃げ切り勝ち。
というわけで重賞連勝で迎えたJBCスプリント(JpnⅠ)。史上初となる1000mでのGⅠとなったこの年、サマーウインドは前年覇者の2番人気スーニ、3番人気ミリオンディスクとも前走前々走で蹴散らしており、他にめぼしい相手もおらず単勝1.2倍という断然の支持を受けた。
そしてレースはその人気通りのまさに横綱相撲。スムーズにハナを取って逃げたサマーウインドと藤岡佑介は4角で持ったまま後ろを突き放していき、直線で藤岡騎手が追い出すともう誰もついていけず、終わってみれば2着ナイキマドリードに4馬身差の大楽勝。重賞3連勝で一気にGⅠウイナーへと駆け上がった。
藤岡佑介騎手、庄野靖志調教師、槇本牧場は揃って嬉しいGⅠ初制覇。スーパーホーネットのことは言うな。ヒダカ・ブリーダーズ・ユニオンはあのサンドピアリスの1989年エリザベス女王杯以来、実に21年ぶりのGⅠ勝利となった。
圧倒的な強さでダート短距離界の頂点に立ったサマーウインド。だが、このあとのレース選択が彼には悩ましい問題となった。まず第一に、ダート短距離重賞の少なさ。彼の場合1400mだとちょっと長いので、1200mとなるとドバイに行かない限り4月の東京スプリントまで重賞がない。
そして第二に、GⅠ馬となったことにより、その数少ない重賞でも斤量を背負わされるということ。短距離戦は斤量の影響が大きく、初代王者ノボジャックなども、破竹の連勝でJBCスプリントを勝ったあとは斤量に悩まされて勝ちきれなくなってしまった。サウスヴィグラスやダノンレジェンドがJBCスプリントを勝ってすぐ引退したのも、この斤量問題もあってのことである。
そんなわけで陣営は国内で斤量を背負うよりもドバイに行きたかったのだが、招待状が来ないと出られないのに、肝心の招待状がなかなか届かない。届かない。
招待されなかったときに使うレースがないため見切り発車で調整するわけにもいかず、ようやく2月28日に招待状が届いたが、本番まで1ヶ月もないという状況では検疫のことなども考えると渡航はとても現実的ではなく、ドバイ遠征は断念となってしまった。
そこで庄野師は「もう一回芝を試してみたい」と思っていたこともあり、高松宮記念(GⅠ)への出走を決める。藤岡佑介はワンカラットの先約があったため、福永祐一が騎乗することになったが……。
結論から言うと、この高松宮記念から全てが転げ落ちるように暗転してしまった。
高松宮記念を14着に敗れたあと、爪の状態が悪くなり休養。連覇のかかる大井1200mのJBCスプリントにぶっつけで出走したが見せ場なく6着に敗れると、その後のサマーウインドは見る影も無く低迷してしまう。自慢の逃げ足は消え失せ、各地の交流JpnⅢを転戦するものの掲示板にも載れない凡走続き。かつてダート転向後11戦9勝全連対、断然人気でJpnⅠを圧勝した全盛期の面影はどこにもなかった。
8歳となった2013年末のカペラS(GⅢ)をブービー15着に敗れたところで中央登録を抹消、門別に移籍したが、門別でも惨敗が続き、10歳となって流れ着いたのは高知のC級。ここではさすがに3勝を挙げて金沢に移ったが、金沢でも2勝を挙げたもののその後はボロボロ。
11歳となった2016年には金沢でもC級まで落ちていき、C級ですら勝利は遠いまま、2016年末に地方の登録も抹消され現役引退となった。
そして抹消後、種牡馬入りのオファーもなく、功労馬繋養展示事業の対象にもなっておらず、サマーウインドの行方は知れない。
JBCスプリントを勝ったそのときまでの、サマーウインドの強さは間違いなく圧巻だった。もしあのときドバイに行けていれば、招待状がもう少し早く届いていれば、その後もダート短距離界の王者として君臨する未来があったのだろうか。地方のC級まで落ちぶれて11歳まで走らされることもなく、行方不明になることもなく、父タイキシャトルの血を繋ぐこともできたのだろうか。考えても詮無いことではあるが……たった一通の招待状の遅れが、1頭の未来あるGⅠ級勝ち馬の運命をこれほどまでに変えてしまうということもある。サマーウインドの馬生は、そんな運命の数奇な残酷さを考えさせるものである。
| *タイキシャトル 1994 栗毛 |
Devil's Bag 1981 鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
| Cosmah | |||
| Ballade | Herbager | ||
| Miss Swapsco | |||
| *ウェルシュマフィン 1987 鹿毛 |
Caerleon | Nijinsky II | |
| Foreseer | |||
| Muffitys | Thatch | ||
| Contrail | |||
| シンウインド 1984 黒鹿毛 FNo.16-b |
*ウエスタンウインド 1974 黒鹿毛 |
Gallant Man | Migoli |
| Majideh | |||
| Wildwook | Sir Gaylord | ||
| Blue Canoe | |||
| ソロナエビス 1972 栃栗毛 |
*タマナー | Sunny Boy | |
| Tresa | |||
| ソロナヒメ | *ソロナウェー | ||
| *ヴイキユニア |
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