ハットトリック(競走馬) 単語


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ハットトリック

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ゴールを決めろ!

どこに潜んでいたのか。
それまで何をしていたのか。
だが抜け目なく大胆に
一瞬の躍動から
鋭くシュートを放つ。

そう、彼はストライカー。
決して勝機を逃さぬ男。
いならぶ才能を交わし
世界の精鋭たちに競り勝って
ゴールネットをまた揺らす。

―名馬の肖像 ハットトリック

ハットトリック(Hat Trick三連冠)とは、2001年生まれの日本の競走馬で、後にアメリカなどで供用された種牡馬。

あまりに激しく短く燃え尽きた現役生活を終えた後、父サンデーサイレンスの威光を伝える種牡馬として世界を舞台に活躍した。
馬名の由来はもちろんサッカーのハットトリックから。 

主な勝ち鞍
2005年:マイルチャンピオンシップ(GI)、香港マイル(HNKG1)、京都金杯(GIII)、東京新聞杯(GIII)

現役時代

父は言わずもがなの大種牡馬*サンデーサイレンス、母トリッキーコード、母の父Lost Codeという血統。
生産は追分ファーム、馬主は一口馬主会のキャロットファームなのだが、彼の年代はキャロットに社台の資本が入って強化(?)された後の2世代目に当たる。
つまりある程度はクラブ発展に寄与するだろうと期待されつつ送り出されたのだが、そんなに一口の売れ行きも芳しくなく、デビュー直前の2歳の5月に左後脚にボルトを埋め込むほどの重篤な骨折をするなど先行き不安ばかりが募る情勢であった。

イングランディーレを管理した清水美波(女性じゃないよ)厩舎に預けられ、骨折から一年が経った2004年5月にデビュー。同期の連中がNHKマイルダービーだとはしゃぐ中ひっそりと未勝利戦へ臨んだが、ここを上がり最速でぶった斬り快勝。続く条件戦も上がり3ハロン32.9秒という無茶苦茶な末脚でぶった斬った。
2連勝で気を良くしてラジオたんぱ賞(当時)に乗り込み2番人気に推されるが、府中で上がり勝負してきただけの馬が福島競馬場の重賞で通じるわけもなく9着大敗。休養に入る。

その後、秋になると栗東の角居厩舎に転厩。関西馬としてリスタートを切る。ここから破竹の連勝街道を歩み、出るレース出るレース上がり最速でぶった斬った上、京都金杯と東京新聞杯も上がり最速で駆け抜け4連勝。マイルの新星誕生! と思われたがマイラーズカップで惨敗すると歯車が狂い、安田記念も見せ場なく15着惨敗。失意のまま休養に入る。 

秋も毎日王冠9着・天皇賞(秋)7着と2戦してイマイチ振るわなかったが、天皇賞では32.6という恐ろしい上がりを記録していた。勝ち負けからはるかに遠い所で繰り出しただけだったが、惨敗中は上がり最速を記録出来なかったため、これが復調の兆しだったのかもしれない。
続いて出走したマイルチャンピオンシップでは上がり最速こそデュランダルに譲ったが、上がり3ハロン33.3を叩きだす極上の瞬発力でねじ伏せ快勝。GⅠ勝利を飾る。

その勢いのまま香港に遠征。香港名「三連冠」として香港マイルに出走するが、ここでも外から強襲して前を撫で斬り快勝。なんとGⅠ連勝を海外で決めてみせたのである。
2001年の三連勝はあまりに有名だが、香港マイルでの日本調教馬の勝利はその2001年のエイシンプレストン以来である。すごい。
この活躍で、JRA賞の最優秀短距離馬に選ばれた。最優秀父内国産馬に入れた記者はちゃんと血統表見ましょうね~
余談だが、彼と1歳下のシーザリオの活躍でキャロットファームは人気のある一口クラブとなった。やったぜ。 

このあとは……色んな意味で蛇足である。詳しくは述べないが惨敗惨敗また惨敗。6歳の春に復調の気配を見せつつあったが、アメリカなど海外から種牡馬入りオファーが届き、それをキャロットが受け入れたため引退となった。
通算成績21戦8勝。上がり3ハロン最速級の末脚で勝つか、掲示板すら外す惨敗かの2択というある意味豪快な馬であった。 

種牡馬時代

サンデーサイレンス産駒の有力馬は、大体日本に留まって種牡馬入りすることが通例である。海外に行った馬は

  • 大器と目されたが田原成貴がアレで大成出来なかったフサイチゼノン
  • 兄フサイチゼノン同様に大器と目されたが、骨折で尻すぼみになったアグネスゴールド
  • キングヘイローを降ろされた福永祐一が選ぶも結局GⅠ取れなかったディヴァインライト
  • こちらもやっぱり遂にG1に手が届かなかったローゼンカバリー

など、「一線級」とはちょっと言いがたい感じの馬ばかりで、現地で与えられた環境もそうでもなかったため、うまくいかない馬が多かった。

しかし、ハットトリックが引退した2007年にディヴァインライト産駒Natagoraが英1000ギニーを快勝。日本のファンが「ダンスインザダークとかフジキセキあたりが向こう行ったらいい線行くかもなあ」 などと思い始めたころに、晩年は惨敗続きだったとはいえ、強かった時期はサンデーサイレンス産駒中屈指の末脚を見せていたハットトリックが海外に渡って種牡馬入りというニュースが入ったわけで、期待されないわけがなかった。
そして彼も、圧倒的な瞬発力を伝えその期待に応えていく。

2008年からケンタッキー州とオーストラリア、2010年にはアルゼンチンに渡るなど精力的に活動。2011年に初年度産駒がデビュー。この中からフランスで持ち込み馬としてデビューしたDabirsimが2歳GⅠを2勝し、無敗のままカルティエ賞最優秀2歳牡馬を獲得、さらにはフランス年度代表馬にまで上り詰めた。
そして、たった1頭でフランスの2歳リーディングとファーストクロップ(初年度産駒)サイアーのタイトルを父にプレゼントしたのである。

この孝行息子の活躍で、2012年からLyphardなど大種牡馬を繋養してきたゲインズウェイファームに栄転した。
初年度産駒からはDabirsimの他にもアメリカで芝のGⅠを勝利したKing Davidが出るなど好調で、2010年産駒からはアルゼンチンで2歳GⅠを勝利したZapataを輩出し、他にも2400mの重賞を勝つような産駒もいるなどスタミナも十分と、世界各国に散らばったハットトリックの産駒たちは水準以上の成績を収めていた。

こうして、サンデーサイレンスの血を世界に広げる旗頭として活躍しつつあったハットトリックだったが、2020年8月3日、2017年から拠点を移していたブラジルで種付け後に急死した。19歳だった。
8月30日(現地8月29日)残された産駒のウィンウィンウィン(Win Win Win)がアメリカのファーゴーステークスを勝利した。
1頭だけカメラにも映らないほどの後方にいたものの4コーナーで追いつき直線で差し切った。
レース後の記念撮影では虹が出ていたことが伝えられている。

主な産駒

2009年産

  • Dabirsim (牡 母 Rumored 母父 *ロイヤルアカデミーII)
    • 2011年モルニ賞(仏GI)、2011年ジャン・リュック・ラガルデール賞(仏GI)、2011年カブール賞(仏GIII)
  • King David (牡 母 Storm West 母父 Gone West)
    • 2012年ジャマイカH(米GI)

2010年産

  • Giant Killing (牡 母 Giant's Blondway 母父 Giant's Causeway)
    • 2015年ダルド・ロチャ大賞(GI)
  • Zapata (牡 母 Zeta 母父 You and I)
    • 2013年2000ギニー大賞(GI)、2014年クラシコ・レプブリカ・フェデラティーバ・デル・ブラジル(GIII)

2013年産

  • Hat Mario (牡 母 Stormy Marama 母父 Bernstein)
    • 2018年ホアキン・S.デ・アンチョレーナ大賞(GI)、2018年7月9日賞(GII)、2018年ブラジル連邦共和国賞(GIII)
  • Hat Puntano (牡 母 Stormy Pursuer 母父 Bernstein)
    • 2016年グランクリテリウム大賞(GI)、2016年2000ギニー大賞(GI)、2017年チャリティマイル(南アGII)

2016年産

  • Win Win Win (牡 母 Miss Smarty Pants 母父 Smarty Jones)
    • 2020年フォアゴーS(米GI)

2018年産

  • Macadamia (牝 母 Une Autre Etoile 母父 Northern Afleet)
    • 2021年マルガリータ・ポラック・ララ大賞(GI)、2021年エンヒキ・ヂ・トレード・ララ大賞(GI)、2023年ゲイムリーS(米GI)、2023年ウィルシャーS(米GIII)

2019年産

  • Ladário (牡 母 Notting Tomorrow 母父 Aragorn)
    • 2022年ジョアン・アデマール・ヂ・アルメイダ・プラード大賞(GI)、2022年イピランガ大賞(GI)
  • People Ask (牝 母 Varenne 母父 Choctaw Ridge)
    • 2022年マルガリータ・ポラック・ララ大賞(GI)
  • Punta do Iguassu (牝 母 Redencao 母父 Inexplicable)
    • 2022年ジョアン・セシーリオ・フェハス大賞(GI)、2022年プレジデンチ・ギリェルミ・エリス大賞(GII)
  • Raptor's (牡 母 Eurotrip 母父 Wild Event)
    • 2023年クルゼイロ・ド・スル大賞(GI)、2023年ブラジル大賞(GI)、2022年フレデリーコ・ラングレン大賞(GIII)

2020年産

  • Fígaro (牡 母 Arrivederci 母父 Put It Back)
    • 2023年ジュリアーノ・マルチンス大賞(GI)
  • Omnipontet (牝 母 Believable Winner 母父 Put It Back)
    • 2023年ジョアン・セシーリオ・フェハス大賞(GI)

血統表

*サンデーサイレンス
Sunday Silence
1986 青鹿毛
Halo
1969 黒鹿毛
Hail to Reason Turn-to
Nothirdchance
Cosmah Cosmic Bomb
Almahmoud
Wishing Well
1975 鹿毛
Understanding Promised Land
Pretty Ways
Mountain Flower Montparnasse
Edelweiss
*トリッキーコード
Tricky Code
1991 青鹿毛
FNo.1-o
Lost Code
1984 黒鹿毛
Codex Arts and Letters
Roundup Rose
Loss or Gain Ack Ack
Gain or Loss
Dam Clever
1985 黒鹿毛
Damascus Sword Dancer
Kerala
Clever Bird Swoon's Son
Sally Catbird

クロス:5代前までアウトブリード

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産駒の活躍

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関連項目

  • デュランダル(競走馬)
  • サッカーボーイ(馬名の由来が似ている同じGⅠの勝ち馬、最優秀父内国産馬で票が入ったのも大体こいつのry
  • エイシンプレストン
  • 競馬
  • 競走馬の一覧
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