コスモサンビーム(Cosmo Sunbeam)とは、2001年生まれの日本の競走馬。青鹿毛の牡馬。
故障と苦闘を経て復活を果たした、2003年の2歳王者。だが……。
主な勝ち鞍
2003年:朝日杯フューチュリティステークス(GⅠ)、京王杯2歳ステークス(GⅡ)
2005年:スワンステークス(GⅡ)
父*ザグレブ、母*ロビースレインボウ、母父Rainbow Questという血統。
父は1996年のアイリッシュダービーをキャリア3戦目で制した馬。翌1997年から日高軽種馬農業協同組合(HBA)に輸入されて日本で種牡馬入りし、4年目までは80~110頭の牝馬を集めたが、産駒は絶対的にスピードが足りず、初年度産駒が中央2歳戦未勝利、地方ですら2歳戦で2勝しか挙げられないという絶望的な不振で5年目の種付け数は3頭に激減、6年目の2002年終了後に故郷へ送り返されてしまった。4年目の産駒であるコスモサンビームがデビューするのはその翌年のことである。
母はイギリスで9戦1勝。日本で繁殖入りし、コスモサンビームは第6仔。
母父レインボークエストは1985年凱旋門賞の(繰り上がり)勝ち馬。日本ではサクラローレルの父、アスクビクターモアの母父などでおなじみである。
2001年3月28日、新冠町のヤマオカ牧場で誕生。オーナーの岡田美佐子は、マイネル軍団の総帥・岡田繁幸の妻で、ビッグレッドファームの代表。「コスモ」の冠名を用い、同冠の同期には同じ*ザグレブ産駒でコスモ軍団の代表となるコスモバルクがいる。
岡田総帥は当時HBAの副組合長で、「絶対に走る」と*ザグレブの導入を推し進めた。結果は上述の通りだったわけだが、その代表馬2頭を自分のところで所有することになったのはせめてもの救いだろうか。
タップダンスシチーを管理していた栗東・佐々木晶三厩舎に入厩し、2003年6月28日、阪神・ダート1200mの新馬戦にて安藤勝己を鞍上にデビュー。2番人気に支持されたが、離された5着に敗れる。
そこで芝に切り替え、中1週で阪神・芝1600mの未勝利戦に武豊を迎えて臨み、4馬身ちぎられたが2着。続く小倉・芝1200mの未勝利戦を3馬身差で逃げ切り快勝して勝ち上がる。
この勝利で佐藤哲三と小倉2歳ステークス(GⅢ)に乗りこんだが、1番人気メイショウボーラーに5馬身ぶっちぎられて2着。収得賞金は確保したが、休まず翌月のききょうステークス(OP)に向かうと、武豊が戻ったコスモサンビームは1番人気に応えて1馬身半差の快勝で2勝目を挙げた。
さらに関西馬ながら東京遠征し、京王杯2歳ステークス(GⅡ)へ。当初は武豊にグレイトジャーニーの先約があったのだが、そっちが回避したので鞍上は引き続き武豊。ハイペースの流れを4番手で進めると、上がり最速の脚を繰り出してレコード快勝。*ザグレブ産駒の中央重賞初制覇を飾った。
陣営は当初ここで放牧に出す予定だったが、京王杯2歳Sがレコードでありながら楽な勝ち方だったため、引き続き朝日杯フューチュリティステークス(GⅠ)へ参戦。小倉2歳Sで蹴散らされた1番人気メイショウボーラーと再戦となった。武豊には2番人気グレイトジャーニーの先約があったため、新たにダリオ・バルジューを迎えることになったコスモサンビームは11.3倍の4番人気。
レースは大外からハナを叩いて逃げるメイショウボーラーを、最内枠から好位で追走。直線でメイショウボーラーがそのまま後ろを振り落として粘り込みを図る中、2番手にいたアポインテッドデイが外に斜行してコスモサンビームは前を一瞬カットされたが、動じることなく空いたインに突っ込むと、最後は狙い澄ましたようにクビ差メイショウボーラーを差し切った。
ダメ種牡馬の烙印を押されて返品されてしまった父の名誉を挽回する2歳王者タイトルを獲得したコスモサンビーム。年末のラジオたんぱ杯2歳Sは同父同冠のコスモバルクが勝ち、コスモ軍団のザグレブ産駒2頭が来年のクラシック戦線を賑わすであろう存在となった。
デビューから半年使い詰めだったコスモサンビームは放牧に出され、オーナーサイドと佐々木師との間で3歳戦線をどうするかが話し合われた。佐々木師は距離適性を鑑みてNZTからNHKマイルカップに向かいたがっていたが、コスモバルクともどもクラシックに挑みたいというオーナーサイドの意向が通り、スプリングステークスからクラシックへ向かうことになった。クラシックは岡田総帥の夢だから仕方ない。
というわけで引き続きバルジューと向かったスプリングステークス(GⅡ)では1番人気に支持されたが、道悪に加えて道中やや力んでしまい、ブラックタイドの豪脚に薙ぎ払われ、前のダイワメジャーらにも振り切られて5着。
それでも皐月賞(GⅠ)ではコスモバルクとブラックタイドに次ぐ3番人気(9.6倍)に支持されたが、前目の好位でレースを進めるも、伏兵ダイワメジャーの先行押し切りに突き放され4着。
続いてNHKマイルカップ(GⅠ)。バルジューは帰国してしまったので四位洋文がテン乗り、混戦ムードの中4番人気に支持される。レースは最内枠から外に出すタイミングがなく馬場の悪い内で我慢することになってしまったものの、それでも直線脚を伸ばして抜け出しを図る。――が、そんなコスモサンビームを並ぶ間もなく外からぶっちぎっていく馬が1頭。大王キングカメハメハ! コスモサンビームはできるだけのことはやっての2着だったが、キンカメには5馬身もちぎり捨てられてしまった。
そして岡田総帥の夢・日本ダービー(GⅠ)に引き続き四位と向かったが、前走キンカメに子供扱いされた上に明らかに距離が長いだろうと46.4倍の7番人気。灼熱の府中でマイネルマクロスの超ハイペース大逃げにより故障馬続出の地獄のレコード決着となり、キンカメが変則二冠を達成した影でコスモサンビームはあえなく12着撃沈。
そしてレース後、左第一指節種子骨の骨折が発覚。"死のダービー"の被害者の1頭となってしまう。全治1年の重傷で、引退も検討されたが、何しろ父が後継需要などあるはずもない大失敗種牡馬で、GⅠタイトルが朝日杯のみでは、このまま種牡馬入りしてもいい待遇は望むべくもない。現役続行、復帰を目指すことが決まった。
明けて4歳となった2005年7月。14ヶ月にわたる休養を経て、コスモサンビームはターフへと舞い戻った。小倉2歳S以来の佐藤哲三を迎え、復帰戦は関屋記念(GⅢ)。最後方から上がり2位の末脚を使って5着と、故障明けの復帰戦としては上々の内容を見せる。
ところが京成杯オータムハンデキャップ(GⅢ)では長期休養明け2戦目なのに57.5kgを背負わされる羽目になり、あえなく10着撃沈。ハンデキャッパーさんちょっと厳しくない?
続く富士ステークス(GⅢ)は柴田善臣が騎乗したが、得意の先行策から沈んで9着。
富士Sでの不可解な負け方に「ダービーでの骨折の痛みの記憶がトラウマになっているのでは」と考えた陣営は、なんと連闘でスワンステークス(GⅡ)を使うことに決めた。いやいやいや……。鞍上は本田優を迎え、オッズこそ混戦ムードで18.3倍だったが、18頭中11番人気。そらそうよ。
しかしこの逆療法で、コスモサンビームは使い詰めで朝日杯を勝った2歳時の感覚を思い出したのかもしれない。重馬場のレース、中団から脚を伸ばしたコスモサンビームは、1番人気サイドワインダーやウインクリューガーの追撃を振り切って勝利。ウインガー3着という結果にレースレベルを疑問視する競馬ファンもいたが、重篤な故障を乗り越えてほぼ2年ぶりの勝利を掴み取った。
父の威光での種牡馬入りが望めない以上、将来は自力で栄冠を重ねて掴み取るしかない。勝利の感覚を思い出したコスモサンビームは、5歳の目標を高松宮記念に定め、復活への道を歩み始めた。
……はずだった。
明けて5歳、放牧で英気を養ったコスモサンビームは、高松宮記念へ向けて、2月の阪急杯(GⅢ)で復帰。鞍上は引き続き本田優。5.3倍の2番人気に支持された。
……だが。
コスモサンビームはスタートから手応えが悪く後方から。3コーナーから本田優の手が動くが、にもかかわらずコスモサンビームはさらにずるずると後退していき、レースから脱落。
現役最終日の松永幹夫がブルーショットガンで有終の美の重賞制覇を飾ったその後ろ、誰もが直線の攻防に固唾を呑んでいたそのずっと後方で、現地観戦者によるとコスモサンビームは直線入口で内ラチ沿いに崩れ落ち、そのまま馬運車に乗せられるまでぴくりとも動かなかったという。
レース後、JRA公式サイトで、彼の身に何が起きたのかが発表された。
14番コスモサンビーム号(本田 優騎手)は、最後の直線走路で他の馬に関係なく馬体に故障を発症し、競走を中止しました。
馬 :急性心不全(死亡)
騎手:異状なし
復活を果たした2歳王者に、どうしてこんな残酷な結末が待っていなければならなかったのか。
問うても意味のないことではあるし、急性心不全はなると分かって避けられるものでもないだろう。それでも何か、他の結末はあり得なかったのだろうかと思ってしまう。
同父同冠のコスモバルクはクラシックこそ結局無冠に終わったが、コスモサンビームの死の3ヶ月後、シンガポールで国際GⅠを制した。しかし8歳まで走り続けた彼にも種牡馬のオファーはなく、父*ザグレブの系統は残ることはなかった。
岡田総帥はクラシックの夢を叶えられないまま2021年に死去。総帥が夢見たクラシックは、その年のオークスを制したユーバーレーベンによって捧げられることになる。
*ザグレブ 1993 黒鹿毛 |
Theatrical 1982 黒鹿毛 |
Nureyev | Northern Dancer |
Special | |||
*ツリーオブノレッジ | Sassafras | ||
Sensibility | |||
Sophonisbe 1981 黒鹿毛 |
*ウォロー | Wolver Hollow | |
Wichuraiana | |||
Southern Seas | *ジムフレンチ | ||
Schonbrunn | |||
*ロビースレインボウ 1991 鹿毛 FNo.1-h |
Rainbow Quest 1981 鹿毛 |
Blushing Groom | Red God |
Runaway Bride | |||
I Will Follow | Herbager | ||
Where You Lead | |||
Mary Martin 1983 栗毛 |
Be My Guest | Northern Dancer | |
What a Treat | |||
Centre Piece | *トンピオン | ||
Table Rose |
クロス:Northern Dancer 4×4(12.50%)
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最終更新:2024/12/23(月) 01:00
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