概要
ブンブク目に属する、不正形類という「ウニらしくない」ウニの一員で、たわしのような姿だがれっきとしたウニの仲間である。不正形類には他にもタマゴウニ、面白い名前繋がりのカシパンやタコノマクラなどがいる。
名前は昔話の分福茶釜から来ており、タヌキ(キツネとも)が化けた茶釜にその姿を重ねたのが由来。ブンブクチャガマという和名の種もいる。また、タヌキブンブクやキツネブンブク、アナグマブンブク、ネズミブンブク、ライオンブンブクなど哺乳類の名前が付いた種が多い。英名は殻がハート形をしていることから「heart urchin(ハート形のウニ)」。なお食用には向かない。
多くが埋在性の底生生物(エンドベントス)で、夜に活発に活動する。短く密集した棘や管足で海底の砂や泥の中を器用に、そして力強く掘り進み、有機物を食べて暮らしている。棘の種類も体の場所によって違い、地中を掘り進めることに特化した配置になっている。海底を掘り進めるブンブクにとって棘は装甲ではなく掘削道具なのである。オカメブンブクは海底の堆積物を大きく攪乱し、生態系に強い影響を与えていることが分かっている。
例外としてウルトラブンブクのように潜るのをやめて海底を這うようになった種もいる。また、ブンブクの仲間は有名なウニの口器であるアリストテレスの提灯を持たない。
不正形類はジュラ紀頃に出現したウニの中では比較的新しいグループで、砂や泥に潜ることに特化している。ウニを含む棘皮動物の特徴である五放射相称を歪ませ、疑似的に左右相称の体をしているが、ブンブクは特にそれが分かりやすい。肛門が殻の頂上ではなく後ろ(進行方向の反対)にあるのも特徴。殻には呼吸に使う五放射の花や星のような模様(花紋)がある。
ブンブクの仲間は白亜紀後期に出現したとされているが、実は現在ではウニの仲間で最も種数が多く、多様な場所に生息するグループとなっている。
ブンブクの仲間たち
- Ova lacunosus ブンブクチャガマ
ブンブクチャガマ科。殻長5.5cm。潮下帯~水深90mに生息。 - Brisaster latifrons キツネブンブク
ブンブクチャガマ科。殻の模様がお稲荷様の狐に似ていることから名付けられたとされる。日本近海のキツネブンブクとされてきた種は海域ごとに形態の変異が大きいため、今後の精査が必要らしい。 - Brisaster owstoni オーストンキツネブンブク
ブンブクチャガマ科。殻長3cm。水深35~1900mに生息。日本近海のみで見つかっている。キツネブンブクの仲間で、日本のキツネブンブクとされてきた種の1つ。 - Maretia planulata オニヒメブンブク
ホンブンブク科。殻長5cm。潮下帯~水深60mに生息。海底表面を歩くこともあり、その際は棘を逆立てて身を守る。アクアリウムのショップで流通しており、生態が良く分かっていないながら水槽の底砂の掃除役として採用される場合がある。 - Lovenia elongata ヒラタブンブク
ヒラタブンブク科。殻長7.5cm。潮下帯~水深90mに生息。長い棘を数十本持っている。危険を感じると海底表面に出てきてかなりのスピードで逃げる。海水浴場にも現れ、間違えて素足で踏んでしまいケガをするケースが報告されている。 - Echinocardium cordatum オカメブンブク
ヒラタブンブク科(オカメブンブク科とする場合も)。殻長3cm。潮間帯~水深230mに生息。世界で最も分布域が広いウニとされるが今後数種に分けられる可能性がある。 - Brissopsis luzonica タヌキブンブク
オオブンブク科。殻長5cm。水深130~2140mに生息。オーストンキツネブンブクと同じ環境を好むらしく、タヌキとキツネが共存している模様。 - Brissopsis lyrifera ヨーロッパタヌキブンブク
オオブンブク科。殻長5cmくらい。ノルウェーやアイスランド、イギリス、地中海などのヨーロッパ~南アフリカ、北アメリカの東海岸などの水深5~365m超に生息しているタヌキブンブクの仲間。当然日本にはいない。花紋を取り囲む黒い輪のような模様(周花紋帯線)がよく目立つ。早川いくを・著『またまたへんないきもの』で名前だけ取り上げられているため名前を聞いたことがある人は多いかも。個別項目あり。 - Brissus agassizii オオブンブク
オオブンブク科。殻長10cm。潮間帯~水深10mの浅い場所にいるが、砂利の下に潜っていて見つけて採集するのが難しい。恐らく日本近海のみに生息。 - Linopneustes murrayi ウルトラブンブク
ヘイケブンブク科。強烈な和名が有名なブンブク最大種。殻長が最大20cmもある。水深560~1600m程に生息。海底に潜るのをやめたブンブクで、代わりに海底表面を歩行するのが上手い。群れを成して深海底を歩行している姿が観察されている。個別項目あり。
ここに挙げた種はごく一部であり、他にも様々な種がいる。
余談だが、ブンブクモドキやトックリブンブクなどのブンブクモドキの仲間もいる。ブンブク目の下にブンブク亜目とブンブクモドキ亜目が置かれたり、Atelostomata上目の下にブンブク目とHolasteroida目(ブンブクモドキの仲間の目)が置かれたりしているが、後者の方が新しい分類だと思われる。ここではブンブクモドキの仲間について詳しくは書かないが、Echinosigra paradoxaという種はとてもウニとは思えない姿をしており必見。
関連動画
関連リンク
- 第1回 ウニの世界 〜多種多様なウニ殻の魅力|あなたの知らない○○ワールド|連載記事|BuNa - Bun-ichi Nature Web Magazine |文一総合出版
- 生物学者が「オカメブンブクこそ最強の生物だ」と断言する理由 「分福茶釜」のタヌキに似たウニ | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
関連項目
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