法人成り 単語

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ホウジンナリ

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法人成りとは、個人事業主が自らの事業を法人化する事の通俗的な呼び方である。

概要

法人(会社)を設立せずに事業を行っている個人を一般に個人事業主(俗に「自営業者」と言う人もいるが言い方としては正しくない)と呼ぶ。
分かりやすい例でいえば、小さなお店(飲食店とか八屋さんとか)の経営者、各種士業法人を設立せずに事業を行う弁護士税理士農家、雇用関係ではなく契約関係で法人と結ばれている芸能人プロレスラー、(税務上では)プロスポーツ選手等が個人事業主にあたる。

この個人事業主が、自らの事業を法人化する事を一般的に「法人成り」と呼ぶ。
※なお、「法人成り」とはあくまでも一般的な通用であり、法律的に定められた言葉ではない。又、「成り」と言う言葉から法人になる事が尊いと言うにも捉える人もいるが、個人事業主日本経済を支える立メンバーである。

「法人成り」をする理由としてはいろいろあるが、事業を拡大したい場合や借入・取引等の都合、節税対策等がである。

以前は法人成り(特に株式会社化)に関していろいろと制限があったが、規制緩和や行政革、気刺策によって個人起業が奨励された結果、設立に関してだけは制限が相当に緩和された。
ただ、調子に乗って法人成りし、後々苦しむ例が後を絶たない為、メリットデメリットをキチンと峻別した上で「法人成り」するのが適切である。

又、税理士が「法人化しませんか?」と言ってきたら、疑ってかかる事。(法人化すると、税理士に頼まないと面倒になるケースも多いので、自己の顧客拡大の為に「法人成り」を勧める税理士が結構いるらしい)

メリット

所得の種類が
変わる

経営者であっても、法人と言う「存在」に雇用されていると言う概念になる為、確定申告を行う際の所得の種類が、事業から給与に変わる。

地方自治体の補助・融資制度の選択肢が増える

環境に配慮した設備投資や社員教育障害者雇用等のの施策に沿った行為を行うと得られる補助や融資制度について、法人である事が条件となっているケースがあり、費用負担を軽減しながら事業展開ができるようになる。

信用が増大する

大会社である程、通念的に個人<有限会社株式会社の方を信用ものさしとして見る事が多い為、門前払いされる可性が減るし、人もやりやすくなる。
※このものさしは、あくまでも一般的な事業者の場合であり、士業や特殊技活用したフリーランサー等は一概にはあてはまらない。

法人向けの税控除制度がある

個人事業主と違う法人向けの税控除制度が存在する為、法人成りによって結果として支払う税金が減る場合がある。
代表例としては、「給与所得控除」「設立年度から2事業年度間、消費税納付が免除(条件あり)」等である。
※但し、個人事業主の方が支払う税の額が少なくなるケースも多数あるので、要注意。

調達の選択肢が増える

法人向けの融資制度が使えるようになり、資調達の選択肢が増える。

デメリット

 

 

設立に当たって費用が必要

税務署に開業届だけ出せば良い個人事業主と違って、必要な書類をえて本社所在地を管轄する法務局法人登記を行う必要がある。
この必要な書類が複雑かつ多数である為、登記費用の納付(法務局で「登記印」と呼ばれる切手みたいな物を買って、書類の所定欄に貼り付けて納付の明とする)の他に法書士・税理士等に作成を依頼する事によって結構な額が掛かる事がある[1]

又、設立に当たっては、資本金が必要となる。
株式会社の場合、2006年の商法(一般的な事業をするに当たっての基本となる法律)正によって、資本金1円でも起業できるようになったが、それでも1円最低でもないと法人が設立できない。
そして、資本金1円で得られる信用は、場合によっては個人事業主とほぼ同じかより低くなってしまう。

青色申告特別控除」が使えなくなる

個人事業主にとっての税控除の切り札である最大65万円の「青色申告特別控除」が使えなくなる。
給与所得控除の方が上回るケースが一般的に多いが、ごくまれに青色申告特別控除と給与所得控除が同額、もしくは上回るケースもある[2]

決算の可視化・情報開が必要になる

株式会社の場合、決算書を表する義務(決算告の義務)がある。
決算告…大企業とかで日本経済新聞や自社ウェブサイトIR情報コーナーに掲載しているアレ

定款(会社の存在の根拠となる決まり事。法務局に提出しないといけない書類のひとつ)で告方法を定めればいいので余り気にしなくても良いといえば良いのだが、決算書がキチンと作られていないと後でかなり面倒が起きる。

但し、有限会社に関しては決算告の義務は存在しないが、融資を受けたり補助を申請する場合には決算書類が必須となる為、キチンと作るのが最低限の常識である。

経理が複雑化する

法人税の計算や会計帳簿が複雑化する為、法人経理の経験者や簿記の知識(最低でも日商簿記3級程度は必須)を持つ人を別途に雇うか、弥生会計とか勘定奉行とかを入れて毎日伝票入するのが効率的である。

経理がザルだと、決算の時に泣きを見たり、税務署に痛くないを探られる。

税理士公認会計士厄介にならないといけない

経理のできる職員を雇っても、決算に関しても経理に関しても法人化すると複雑になる事から、自社内でできないケースが多くなる。
その為、大抵の中小企業決算書や帳簿の作成等に関して税理士厄介になるケースが多い(そして、この稼ぎが税理士の大切な収入である)。

又、大企業になると上場・非上場関わらず、決算に関して会計法人の監を受ける(上場企業の場合は義務付けられている事が多い)為、公認会計士との関わりも必要である。

社会保険の加入義務が発生する

個人事業主の場合、5人以上でないと義務が出ない社会保険の加入義務が、社長1名だけの法人であっても加入義務が発生する。(従業員5人未満の商業・サービス業を生業とする法人のみは例外として義務ではなくなる)

加入していない事が発覚した場合、最悪では立入検に発展するケースがあり、これを拒否すると「50万円以下の罰か6ヶ以下の懲役」が罰則として適用される。

支払義務のある課が発生する

個人事業主の場合、事業が赤字になった場合の控除が充実しており、結果として税金を払わないで済むケースがでるが、法人になると下記課を最低限支払わなければならなくなる。

・設立第3期以降の消費税[3]
・住民税の法人割り分(最低7万円[4])
社会保険法人割り分(総必要支払額の5割。残り5割は個人給与から差し引いて支払わせる)

どうしても法人成りしたいけど、どの形態にすればいい?

まず、法人と一口に言っているが、法人というのは大きく分けて営利法人(会社)と非営利法人の2種類がある。今回、営利事業を法人化したいのだから、当然設立するのは会社になる。

この会社というのは、全部で4種類の形態がある。

  • 株式会社 - 株式というものを発行して資を調達する。株式を持っている人()は、その出資額を上限として責任を負う(つまり会社が破綻した際は、株式切れになる)。は1人以上いれば良いため、事業を起こした人が全額出資をして、所定の手続きをすれば完成である。ただし、多くの場合、銀行から融資を受ける際、経営者個人が連帯保人にされることが多いため、会社が負った債務から免れないことが多い(経営者保)。なお、発行した株式は、譲渡制限がなければ自由に譲渡ができ、譲渡された人が経営に口出しできるようになる。資本金1円以上必要
  • 持分会社 - 株式会社以外の会社のこと。出資者は社員と呼ばれる。出資者の出資(持分)は原則として譲渡不可、一身専属であり[5]、譲渡にあたっては全社員の同意が必要。このため、意図しない人が経営に口出しするようなことは起きない
    • 合同会社 - 全ての社員が有限責任社員(つまり、出資額を限度として責任を負う)。社員は1人以上いれば良い。社員は共同で会社の経営にあたる。経営者保に関しては株式会社とだいたい同じなので割愛資本金1円以上必要
    • 合名会社 - 全ての社員が無限責任社員。社員は1人以上いれば良い。無限責任というのは、い話が会社の負った債務を、制限なくその社員が弁済する義務を負う、ということである。正直、個人事業主と大差ないため、個人の信用を法人にそのまま持ち込みたいなどの理由がなければ出番はない。労務出資が可なので、極端な話、資本金0でも問題ない
    • 合資会社 - 有限責任社員と無限責任社員が混在する。このため、社員が2人以上必要。最終的な経営は無限責任社員が責任を持つが、有限責任社員もある程度は口を出す。こちらも、資本金0でも問題ない(有限責任社員は、株式会社合同会社と異なり、直接有限責任という形で、債務の支払いをめられた際にその出資額を限度として弁済するという形を取ることができるし、無限責任社員に関しては合名会社と同様)

まず、会社を設立するにあたっては、定款というものを作成する。これは、会社の的など、さまざまな規則を取り決めたものである。なお、この定款は、電子的に作成すると、印紙税4万円が不要になる。もし個人で電子署名等ができる環境があるなら、それを使うと設立費用の削減につながる。

次に、株式会社の場合、役場にて定款の認を受ける必要がある。大きなに行けばだいたいはあるが、詳細は日本公証人連合会のサイトexitを参照せよ。必要な額は以下の通り。

このほかに、電磁的記録の保存のために300円がかかる。もし同一の情報提供が必要な場合、1通につき700円が必要となるが、大元のデータは手元にあるのだから、基本はいらないだろう。

その後、株式会社合同会社の場合は、資本金の払い込みを行う(合名会社・合資会社の場合は不要)。株式会社合同会社の場合、・社員は間接有限責任なので、設立時に出資額の全額を払い込む必要がある。

最後に、もろもろの必要な書類とともに、法務局に登記の手続きを行う。その際、以下の額の登録免許税がかかる。

これで法人自体の設立は了したが、やることはまだある。

これでようやく法人の設立に伴う諸手続きが了となる。当然、この後、個人事業から法人へ事業を移転するわけだから、個人事業の方は業となるため、そちら側の手続きを行うことになるだろう。

関連動画

参考リンク

法人成りに関しては、ググるといろいろ出てくるが、おすすめをいくつかご紹介
(編集者註:なお、本記事作成に際して、下記リンク内のコンテンツを参考にさせて頂きました。深く感謝申し上げます。)

脚注

  1. *合同会社等であれば定款の認が不要なので、最悪独で設立できないこともないが、そもそも定款を作ること自体が初心者にはやや難しい。合同会社の場合、登録免許税は6万円か資本金の0.7%のいずれか高い方
  2. *給与が年間190万円(賞与がないと仮定すると、おおむね額面15万8333円。経営者は雇用保険に加入できないので、支払いは健康保険厚生年金の2つ。協会けんぽに加入する、東京都の40歳以上64歳以下の場合、この額面の場合は24096円がこれらの保険料(介護保険料込み)の労働者支払い分(つまり当然同額を会社が支払う)として控除される。また、徴収により所得税も差し引かれるが、この会社をたる給与の受取元として申告している場合で、特に扶養家族等がいない(独身だとは限らない)場合、この額面なら2460円が徴収される。このため、手取りに直すと13万1777円)の時、給与所得控除が65万円になる。このため、きちんと複式簿記で記帳して、しかも電子帳簿保存しているかe-Tax経由で確定申告書と財務諸表の提出を期限内に済ませられる状態で、しかも給与相当額が190万円を下回るのであれば、法人成りはむしろ税額を増やす結果に陥るだろう。
  3. *資本金1000万円未満、かつ特定の大規模事業者に支配されておらず、2年度前の売上高1000万円以下、かつ前年度上半期の売上高1000万円以下で、インボイス発行事業者でなければ、免税される(これは個人と同様)
  4. *資本金1000万円以下、従業員50人以下の場合、都道府県民税2万円と市町村民税5万円
  5. *その関係で個人の出資者が死亡したり、会社が合併で消滅したりすると、特別な定めがなければ退社となる(この場合、承継した相続人や合併先の法人は、出資額の払い戻しを請できる)
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