クヌースの矢印表記とは、累乗の考えを拡大したもので、特に巨大な数を表すために数学者のドナルド・クヌースによって考案された方法である。日本ではタワー表記ともいう。
導入
たとえば、「5+5+5+5」という計算があったとしよう。義務教育を受けた各位であれば、これを「5×4」と表記することを考えるはず。つまり、同じ数字nの足し算をm回繰り返すのが掛け算n×mなわけである。
同様に「5×5×5」という計算は指数表記を用いて「53」と表記できる。つまり、同じ数字nの掛け算をm回繰り返すのが累乗nmなわけである。
ここで矢印が登場する。累乗の指数は矢印に置き換えて「5↑3」と書くことができ、意味としては「5^3」や「53」と全く同じである。これがクヌースの矢印表記である。
概要
クヌースの矢印表記の便利なところは、矢印を重ねることで累乗の繰り返しが表現できることにある。つまり、同じ数字nの掛け算をm回繰り返すのがn↑mなら、同じnの累乗をm回繰り返すのがn↑↑mである。
これだけじゃピンとこないと思うので具体例を挙げてみよう。例えば累乗の場合、指数が大きくなりすぎて53125とか、265536みたいになる可能性もある。まだこのくらいならいいものの、これが10010000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000(※0が100個)だったら卒倒モノである。
なので、指数部分も無理やり累乗で表現することができる。例えば
「2216=2↑2↑16」
「53125=555=5↑5↑5」
「1010000000000=101010=10↑10↑10」
「10010000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000
=100100100=100↑100↑100」といった感じである。
こういった「同じ数の累乗の○回繰り返し」、すなわち「53125=555=5↑5↑5」「101010=10↑10↑10」のことを「5↑↑3」「10↑↑3」と表記することができる。同様に10回繰り返し、
10101010101010101010=10↑10↑10↑10↑10↑10↑10↑10↑10↑10 なら10↑↑10と表せる。
また、上記の2216=2↑2↑16をさらに分解すれば 16=24=222 なので
22222= 2↑2↑2↑2↑2 = 2↑↑5 と表せる。
例えば3↑↑3を普通の表記に直すと以下のようになる。
※クヌースの矢印表記では右から計算する。通常の加減乗除とは逆なので注意。
3↑3 = 33 = 27
3↑↑3
= 3↑3↑3
= 3↑(3↑3)
= 3↑27
= 327
= 7兆6255億9748万4987
もうこれだけで途方もない…いや、まだ人類が余裕で扱える範囲の数である。しかしこれで飽き足りないのがクヌース。
さらにこれを繰り返し、「3↑↑3↑↑3」という計算を「3↑↑↑3」と表記することができる。
この3↑↑↑3を普通の表記に直すと、
3↑↑↑3 = 3↑↑3↑↑3 = 3↑↑(3↑↑3)
3↑↑3はさっきやった通り7625597484987なので、
3↑↑7625597484987
=3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3↑3…(3を7兆6255億9748万4987個繰り返す)
ちょっと無理、ギブ。
ちなみに2↑↑↑3ならまだ簡単。
2↑2=4
2↑↑2=2↑2=4
2↑↑↑3
=2↑↑2↑↑2
=2↑↑4
=2↑2↑2↑2
=2↑2↑4
=2↑16
=65536
理論上は↑の数を増やすだけで、どんどん上位に行くことが出来る。
なお、数学上の証明に用いられた範囲では最も大きな数字としてギネスブックに載っている「グラハム数」はクヌースの矢印表記を用いて表されるが、その計算途中に登場する数字が3↑↑↑↑3である。
類例
「5 ↑5 2」などの書き方をする。指数の数は矢印の数を示しているため、意味は「5↑↑↑↑↑2」と同じ。
チェーン表記にこれを直すと、5→2→5となる。5に2を↑5回やるという意味になる。
関連項目
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