![]() |
この記事は第333回のオススメ記事に選ばれました! より大きな数が体感できるような記事に編集していきましょう。 |
概要
巨大数とは、日常で使われる事が無い程の巨大な数である。とはいえ、その意味するところは曖昧で、どこからが巨大数でどこまでがそうでないかは人それぞれの考え方に拠るだろう。
科学や数学その他の分野では、しばしば一般的な範囲内を遥かに超えた数が現れる。このうちなじみ深いものとしては、「宇宙に存在する星の数」や「人体に含まれる原子の数」などといった宇宙やミクロに関連した数や、「~通り」などで表される組み合わせ論的数(累乗や階乗といった演算が絡むため)などがあると思う。
しかし、巨大数の世界は広大で、そういったまだ辛うじて理解の範疇に収まるような数は、ほんの氷山の一角に過ぎない。これまでに考察、考案された数の中には、具体的なモノで例える事が不可能であったり、想像することすら不可能となるような、途方も無く巨大な数が存在する。本記事では、そうした様々な巨大数を紹介する。
日常の数を超えて
一、十、百、千、万、億、兆・・・といった、我々になじみの深い数の単位がある。普段我々が日常的に用いうる数というのはおおよそ兆までといえるだろう。しかし、これにはさらに京、垓、秭、穣・・・といったさらに大きな単位が存在する。詳しくは数の単位一覧を参照の事。
ただし、このように漢字表記による単位は、大きくなればなるほど具体的な桁数がわかりにくくなり、実用に適さない。このため科学や数学では、その桁数を指数を用いて、例えば1040(1の後に0が40個続く数)、9.876...×1054(9876...と続く55桁の数)といった表記をする。
ちなみに、前述の漢字による数の単位で一般的に用いられるものとしては無量大数(1068)が最大であるが、指数表記であれば容易にそれを超えて、10128や109999といった数を作る事ができる。
このオーダーの数の比較例
- 7×1022個: 観測可能な宇宙の星の数
- 1047個: 地球上の水分子の数
- 1054: モンスター群
の位数
- 1068: 無量大数
- 1080個: 観測可能な宇宙の原子の総数(多めに見積もってもこれぐらいしかない!)
- 10100: グーゴル(googol)(全てのブラックホールが蒸発する年数に相当)
- 3.137×10106: 同じ所を2度通らない21×21格子の道順の数
- 10220通り: 将棋が取りうる場合の数
- 7.232×1048766通り: フルHD版テトリスmoreの場合の数(色まで考慮、不可能図含)
- 277232917–1 発見された最大の素数(2018年10月27日現在時点。2017年12月26日発見)
関連動画
指数の上の指数
この辺りから、いよいよ巨大数らしい凶暴な数となってくる。
例えば、1010000000000などと、指数そのものが膨大な数になってきた場合、=101010とまとめる事ができる。さらに、10101000と右肩の数を増やしたり、10101010とさらに指数を積み重ねる事で、容易に巨大な数に発展させる事ができる(原則として、このように指数を重ねた場合、計算は右上側から行う)。
だが同時にこれらの数は、桁数そのものが爆発的に増大しているため、もはや想像することすら困難な数となってしまう。既にこの段階で、観測可能な宇宙の全物質をインクに変えても、1000...000と十進表記する事は不可能である。
しかし天文物理学の分野でも、喰らい付くようにこのオーダーの数が幾つか弾き出されている。以下に実例を挙げる。
このオーダーの数の比較例
- 101012.11: L9999999999999^99999999999(BMS楽曲)を計算したもの
- 101016.90: アルキメデスが想定した最大の数((一億一億)一億)
- 101037.57: 不可説不可説転(漢字文化圏における最大の数詞)
- 101060: 観測可能な宇宙の全物質で十進表記できる限界(一文字あたり1020個の原子を消費すると仮定)
- 1010100: グーゴルプレックス(googolplex)
- 10101034: 第1スキューズ数
- 101010122光年: 宇宙の実際の大きさ(宇宙が有限だと仮定した時の解の一つ)
- 101010963: 第2スキューズ数
- 10101010101.1年: ポアンカレの回帰定理に従い、全ての物質が元の位置に戻る時間
- 10101010102.09: 実際の大きさの宇宙の場合の数(101010122個の原子を101010122通りの場所に配置)
関連動画
- 不可説不可説転関連
純粋数学の世界へ
既にここまででも凄まじい数の世界であるが、例えば指数の積み重ねそのものを爆発的に増大させる、そういった操作の繰り返しそのものを爆発的に増大させる、などといった方法により、さらに超巨大な数を作る事が出来る。ただしこのオーダーになると、もはや天文物理学ですら手の及ばない数(前述の指数タワーがその限界と思って良い)となり、そこから先の世界は純粋数学のみに委ねられる。また、指数を駆使しても書き下すのが困難ないし不可能な数となってくるため、特殊な数学記号が必要となる。
タワー表記(クヌースの矢印表記)
詳しくは個別記事を参照。
- xy=x↑y と表記する。
- x↑x↑…(y回)…↑x↑x (= xx…(y回)…x) = x↑↑yと表記する。
- x↑↑x↑↑…(y回)…↑↑x↑↑x = x↑↑↑y
- x↑↑↑x↑↑↑…(y回)…↑↑↑x↑↑↑x = x↑↑↑↑y
・・・という風に、↑の本数をどんどん増やしていくことができる。
これらは足し算→掛け算→累乗の発展と同様であるが、指数タワー表記と同様、↑表記以上は必ず右から計算することに注意。ハイパー演算子の記事も参照のこと。
多角形表記
- 三角形の中のnは、nのn乗と定義される。
- 二重の三角形の中のnは、三角nの三角n乗となる。
- 四角形の中のnは、n重の三角形の中のnを表す。
- マルの中のnは、n重の四角形の中のnを表す。
- さらに、マル=五角形と見なすと、さらに高いレベルの演算が可能となる。
- 六角形の中のnは、n重の五角形(またはマル)の中のnを表す。
- 七角形の中のnは、n重の六角形(またはマル)の中のnを表す。
- ・・・
このように、操作の繰り返しをさらに繰り返していくという性質はタワー表記と似ているが、その根本となる拡大操作の方法はだいぶ異なるため、多角形表記の大きさをタワー表記に変換させることは結構難しい。
このオーダーの数の比較例(といってもあまりネタが無い・・・)
厳密に表そうとするとさらに表記の工夫が必要になり、また複雑になるため、ここではおおよそのオーダーを示す。
- 約10↑↑117: ビジービーバー関数のn=12の時の下限の一つ
- 約10↑↑257: ②(多角形表記)の大きさ
- 約10↑↑7625597484986: 3↑↑↑3(グラハム数の計算過程の数)の大きさ
- 約10↑↑↑10: ⑨(多角形表記)の大きさ
- 約10↑↑↑(10↑↑257): 6角形の中の2(モーザー数の計算過程の数)の大きさ
- 約10↑↑↑(10↑↑7625597484986): 3↑↑↑↑3(グラハム数の計算過程の数)の大きさ
関連動画
究極の超巨大数
さらに、こういった数で表される数だけタワー表記の↑を重ねる、といった操作やその繰り返しにより、さらに途方もない数が得られる。こういったオーダーに相当する数がモーザー数やグラハム数といったものである。
モーザー数
前述の多角形表記を用いて表される、②角形の中の2がモーザー数である。②は既に相当な巨大数なので、その数だけ多角形の拡大を繰り返したこの数は、とんでもない数になるのは自明である。ただし、グラハム数と比べると遥かに小さい。
ネット上におけるモーザー数の扱いは、主にグラハム数やその関連関数との比較ばかりに始終しているのが殆どで、その具体的な大きさに言及しているものはあまり見かけない。下記動画ではタワー表記を用いてその大きさに迫る試みを行っており、おおよそ3↑↑↑...(②-2本の↑)...↑↑↑3に相当するとしている。
グラハム数
『巨大さ以外で意味のある考察がなされた最大の数』としてギネスブックに載っているこの数は、まさに究極の数であり巨大数における金字塔と言えるだろう。タワー表記を用いて表された3↑↑↑↑3を土台(1段階目)とする。この土台の数は既に、
3↑↑↑↑3
=3↑↑↑3↑↑↑3
=3↑↑↑(3↑↑3↑↑3)
=3↑↑↑(3↑↑333)
=3↑↑↑(3↑↑7625597484987)
=3↑↑↑(33…(7625597484987回)…3)
=3↑↑3↑↑…(33…(7625597484987回)…3回)…↑↑3↑↑3
などという数であるが、さらにこの数の本数だけ3と3の間に↑を挟んだ数が第2段階(この段階でモーザー数を超える)、さらにその数だけ3と3の間に↑を挟んだ数が第3段階・・・と繰り返していった64段階目の数、これがグラハム数である。ブラケット括弧を駆使すれば、グラハム数を紙の上の限られたスペースに記すことは可能であるが、その姿はさながら無数の柱となった矢印に支えられた巨大な塔の様である。
関連動画
グラハム数の先へ
グラハム数より大きな数を作る事は簡単である。例えばグラハム数+1としてもいいし、グラハム数グラハム数としても良いだろう。ただこのレベルじゃグラハム数と表記的に限りなく近似するだけのレベルに過ぎないので、より本質的な意味で超えるならば、例えばタワー表記よりもさらに上位の表記であるチェーン表記を用いて、3→3→3→3と書けば、それだけでグラハム数を遥かに超える数が生まれる。チェーン表記の拡大の巨大さを知れば、次は3→3→…(グラハム数回)…→3→3などという着想に至るのも難しくないであろう。2chでは、そういった数をも超える伝説の巨大数、「ふぃっしゅ数」などが生み出されたりもしている。
しかしグラハム数において何より重要なのは、「単なる巨大さ以外で意味のある考察がなされた最大の数」という部分である。逆に言えば、現時点でグラハム数より大きな数というのは、それこそ宇宙の外に飛び出してしまった状態と同じで、数学的にですら、ただ何の意味も持たない虚無の世界が広がっているに過ぎないのである(無限数以上の概念を除く)。勿論、今後の数学の発展の中で、グラハム数よりも大きな、巨大さ以外の意味を持つ数が生まれ、例えば現時点でグラハム数の大きさを示すだけの道具に留まっているチェーン表記が、やがてその本領を発揮するようになる時が来るかも知れない。
無限、そして
無限は『数』ではない。巨大数とはあくまで有限の『数』であり、よって無限を振りかざして「グラハム数より大きい」「ふぃっしゅ数より大きい」などというのは無意味な議論と言える。でも面白いもので、数学的には無限にも大小の概念があるらしいが、ここではその性質には触れない事にする。
ただこれだけは言える。無限は指数タワーやグラハム数などとは違い、日常生活でも頻繁に飛び交う語の一つである。しかし、これまで想像すら許されない程の超巨大数の世界を何とか眺めようとした末に見えてくるのは、そこまでやっても決して辿り付く事のできない、そして常にそういった数の背後にある、『無限』というものの本当の恐ろしさである。
また、巨大数というものを追い求める一方で、逆に以前の段階に戻って、改めてその大きさを良く良く想像してみる事も必要かも知れない。かのふぃっしゅ数を開発したふぃっしゅっしゅ氏が、考えさせられる言葉を掲示板に残している。
- 628 名前:ふぃっしゅっしゅ ◆gicLO6y6 :02/07/23 23:48
- すみません、文学的才能がないものでどうやって表現していいか
分かりません。というよりも、私自身ふぃっしゅ数の大きさが
どの程度のものなのか想像できていません。グラハム数ですら、
どの程度の大きさなのか想像もつきません。
ただ、よく考えてみると、10^1000という数ですら、本当にその
大きさを想像できているか?となると、実はできていないのでは
ないでしょうか。冪上という演算を定義して、その演算を理解
するにつれて、だんだん10^1000はとてつもなく大きな数だ、
ということが分かった気になるだけのこと。それはつまり、
10^1000の大きさを私たちの頭が認識したというよりは、冪上の
定義を理解した、というだけのことでしょう。
ふぃっしゅ数の大きさについても同じことで、定義を理解して、
そういうものだと納得する以外には、説明がつかないと思うのです。
2ちゃんねる 数学板のスレ “一番でかい数出した奴が優勝” より(ミラー
)
考えてみれば、例えば無量大数(1068)が巨大数の世界の中では小さいとはいえども、その無量大数ですら、「銀河一つに含まれる全ての原子の総数」に相当する数なのである。そんな膨大な数を、本当に我々は想像できるだろうか。少なくとも「無量大数()」などと嘲笑えるような対象でない事は確かではないだろうか。
関連動画
関連リンク
- 数の比較
- Wikipedia
- 巨大数
- Wikipedia
- 巨大数研究 Wiki
- wikia
- Googology Wiki
- wikia 英語
- 巨大数研究室
- 2ch発祥による巨大数のページ
- 巨大数論
- ふぃっしゅっしゅ(ふぃっしゅ数考案者)による巨大数解説サイト
- 寿司 虚空編 -Sushi Kokuu Hen-
- 小林銅蟲による巨大数漫画
関連商品
書籍
雑誌
関連項目
- 32
- 0pt