五度圏 (Circle of fifths) とは音楽用語の一つで、ハ長調、イ短調(C major、A minor)などの調(キー)の名前を、調号の#、♭の数の順で円形に並べて作った図のことである。
概要
音楽理論を解説するときに便利な図の一つで、#や♭が何個のとき何調なのか一目でわかる。 長調だけ、短調だけの場合もあれば、両方描かれていることもある。 両方の場合は、平行調(同じ調号を持つ長調・短調のペア)同士が並んで描かれる。
1オクターブの音階の数は、白鍵・黒鍵合わせて12個ある。これにより、五度圏を時計の文字盤として使うこともでき、「何時の位置は何長調と何短調」という対応付けができたりする。つまり、時刻がそのまま調号の#の数を表す(♭の数の場合は12時からn時間前として数えればよい)。
また、時計の文字盤として1時間進むごとに完全五度(Parfect fifth : ド→ソ の音程、半音7個分)だけ高くなるという規則性がある。これが五度圏の由来である。5時~7時の位置には異名同音の調(例:6時の位置は、嬰へ長調 F# major、変ト長調 G♭ major)として2種類の表記が存在する。
数学的な背景
完全五度上の音が音楽的に特別扱いされるのには数学的な理由がある。元の音の3倍に極めて近い周波数成分を持つ自然発生しやすい音程であることから、脳が無意識にそのことを経験して「近さ」を感じているのではないかと考えられている。ちなみに、1オクターブ=周波数2倍なので、3倍の代わりに1.5倍でも0.75倍でも6倍でも12倍でも24倍でも48倍でも96倍でも、オクターブ違いの全く同じ音階に聞こえる。
また、五度圏を一回りした時に(オクターブ違いの)元のキーに戻ってくるのは
(3/2)12 ≒ 27
との近似を利用したもので、昔の音階の定め方であるピタゴラス音階と同じ近似を利用したものである。
和音との関係
五度圏は本来、調についての図だが、調をそれと同名のコード(和音)として眺めることで、その調でよく使われるコードが自然に近くに集まるという性質をもつため、調とコードの関係や、コード進行とその感じ方について学習するときに威力を発揮する。また、少ないながらも、この性質を応用した楽器がいくつか存在する(後述)。
楽器への応用例
- アコーディオン - あのポチポチした丸いコードボタンの並び順が五度圏と同じになっていて、コードによる伴奏がしやすくなっている。
- スティールパン - 外側のへこみが五度圏と同じ配列になっている。
- MIDI Chord Helper - 五度圏と同じ配列の和音ボタンインターフェースを持つソフト。作者自身の手でハードウェア化した楽器(CAmiDion)の製作も行われている。
- 輪音 - 意味を奏でる楽器
- Tonnetz - 完全五度、長三度、短三度を示す無数の直線からなる図形。各直線で囲まれた三角形が三和音、三角形の頂点が和音の構成音を示し、完全五度の直線上では五度圏の順番で各音が出現することになる。参考
関連動画
関連項目
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