MIDI Chord Helper とは、@きよし(Akiyoshi) により開発された、コード(和音)を簡単に演奏できるフリーソフトである。
このソフトをそのままハードウェア化したようなモバイル電子楽器 CAmiDion も作られている。→ CAmiDion(リダイレクトしていたのを別記事にしました)
関連タグ
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ソフトの概要
マウスでクリックすることにより、和音を簡単に鳴らして伴奏を楽しめるバーチャルMIDIキーボードの一種である。調号の#、♭の数の順に基づいた「五度圏」の順序で並んだコードボタンにより、どんなに難しそうな調であっても、よく使うコードが自然に1箇所に集中するため、最小限のマウス移動で楽に弾けるのが大きな特長である。
ちなみに五度圏で並べるという発想は今に始まったことではない。アコーディオンのコードボタンや、スティールパンなど、既存のいくつかの楽器ですでに導入されている。→ 五度圏
開発言語・実行環境
Java で書かれているため、Java の実行環境(JRE)や MIDI 音源などが整ってさえいれば、Windows や Mac、Linux など、OS(プラットフォーム)を問わず動作する。
Web ブラウザ上で動く Java アプレットとしても、ブラウザに依存しない Java アプリケーションとしても動作する。
便利な機能
コード演奏だけでなく、楽器演奏者にとって便利そうな機能が色々と盛り込まれている。その主なものとして下記の機能がある。
- ★ MIDIプレーヤー&編集機能
- 再生だけでなく、簡易編集機能もついている。
ただし、VOCALOID のエディタのようなピアノロール機能はついておらず、操作感はむしろ表計算ソフトに近い。これは Java Swing の JTable を使って実装していることによる。 - ★ 音階に応じてコードボタンが光る機能
- コードの構成音がすべて鳴ると、そのコードボタンが明るく光り輝く。複数のコードに解釈できる場合であっても、ちゃんと複数のコードボタンが光る。特に、協和している「近い」和音であれば、近接したボタンが光ることが多い。 これにより、鳴っているコードが視覚的にわかるため、コード進行の動きを直感的に理解できるようになっている。
- ★ コードダイアグラム検索機能
- ギターとウクレレに対応した、弦の押さえ方を検索できる機能。コード構成音の揃う押さえ方が複数あっても、そのすべて(ただし指がちゃんと届きそうな範囲に限る)をくまなく探索できる。コードブックに載っていないような押さえ方を簡単に作り出せる。弦のチューニングを変えた場合にも対応している。
- ★ 乱数による自動作詞作曲機能
- テンポやコード進行(キー近傍のコードボタンの範囲)をランダムに決めて曲を作り出す。歌詞は文字をランダムに並べているだけなので、意味不明な歌詞を簡単に作り出せる。
最新版ではポケット・ミクに歌わせることのできる形式で乱数歌詞を生成できるようになっている。 - ★ あの楽器的何か
- 初音ミクの「あの楽器」風の視覚エフェクトを表示する機能
- ★ MIDI接続組み換え機能
- MIDI入出力の接続をドラッグ&ドロップで自由に変更できる機能
歴史
このソフトを作ろうと思い立ったきっかけは、作者が DTM をきっかけに始めたウクレレやキーボードで、J-POP や洋楽などを「ゲッカヨ」を見たり耳コピでコードを見出して弾いているうち、調ごとによく使うコードに法則性があると感じたことである。
当初は JavaScript で実装していたが...
そんな中、2003年9月頃にJavaScript で作った五度圏コード表をホームページ上で公開した。これが MIDI Chord Helper の前身となる最初のプログラムであった。
しかし、実際に音を出そうとすると、HTML と JavaScript の組み合わせでは機能不足であった。JavaScript から Flash、あるいは wav ファイルの再生で音を出そうとしても、レスポンスが悪すぎて楽器のように演奏するには非常に操作感が悪く、単なる「コード早見表」の域を出ることはなかった。
Java に変えたら楽器になった
そんな中候補に挙がったのが Java であった。Java には MIDI を扱えるライブラリがある。起動は遅くても、一度 Java アプレットとして動き出すと高速に動作する。これなら演奏して遊べるということで、2004年春ぐらいに MIDI Chord Helper の開発が始まり、2004年5月頃から作者が自身のホームページ上で公開した。
公開を始めた当初は「五度圏コード表つきJavaピアノ」として公開。このソフトが紹介されていることが確認できたブログ記事で最古のものは、2004年7月31日の記事である(inside out/ペンタトニックの筒の徒然)。 その後「Chord Helper」→「MIDI Chord Helper」という形で名前が変わっていった。
このように、当時はときどきブログにピックアップされることはあったものの、作者がこのソフトをオフラインミーティングで披露する機会はほとんどなかった。
動画で注目度が上昇
このことを一変させたのが、YouTubeやニコニコ動画といった動画投稿サイトの登場と、初音ミクブームであった。
みっくみくにされた作者が、既存のボカロオリジナル曲を中心に MIDI Chord Helper を使って演奏してみた動画を投稿するようになる。(詳細については @きよし の記事参照)
そんな中、2008年9月になると、モバイルDTMイベント「オトダスト」に参加。その際、ノートパソコンに MIDI Chord Helper を入れて 持ち込んでみたのが、オフラインミーティングでの最初の活用であった。だが、電池が30分しか持たず、AC アダプタで辛うじてしのいだことで、専用機としてのモバイル楽器ガジェットの良さを再発見する結果となった。
ニコニコ技術部への進出
2009年に入ると、初音ミクの「あの楽器」の影響を受け始める。
← リクエストに答えたこの動画の反響が大きかったようで、作者初の2000再生越えを記録するに至る。
この勢いで、作者自身がニコニコ技術部の「あの楽器」ミーティング(2009/02/01、秋葉原)に顔を出し、このソフトおよびそのもとになった考え方(音楽理論のツボ)のプレゼン(ライトニングトーク)を行った。
「なるほど、わからん」という雰囲気も感じられたものの、作者がこのソフトを通じてオフラインでの交流を増やしていくきっかけの一つにもなった。それと同時に、ニコニコ技術部員たちの作品を見た作者は、昔やってた電子工作をまた本格的にやってみたいと思うようになった。
これにインスパイアされてコード演奏機能を実装する人たちも続出した。似たような機能を持つアプリが iPhone などにも登場するまでになっている。→ 参考動画:【あの楽器】コード弾き専用の「Rayz Type C」を試してみた【iPhone】
以上のような背景から、作者はモバイル楽器を作ってみることを決意、ハードウェア化計画へとつながっていく。→ 続きは CAmiDion の記事へ
海外でも注目?
また、英語のページも作っていたため、2010年3月頃から海外の複数のフリーソフト辞書に相次いで掲載されるようになった。2010年7月6日時点で掲載が確認できているのは下記のサイトで、これらのサイトからも jar ファイルをダウンロードすることができる。
開発環境の変遷
開発を始めた当初は、テキストファイルとしてメモ帳で編集し、バッチファイルでjavacを起動してコンパイルするという、とても原始的な方法で開発していた。
その後、作者が2012年頃から仕事でeclipseを使う機会が増えたことや、Windows XP サポート終了が迫る2013年にマザーボードを新しくしてWindows7に乗り換えたことから、MIDI Chord Helper もeclipseを使った開発に切り替えた。このタイミングで久しぶりに多くのリファクタリングや改良が行われている。
ハードウェア化計画
→ CAmiDion を参照。
関連項目/関連リンク
- CAmiDion
- あの楽器 / ニコニコ技術部
- MIDI / DTM / 五度圏 / ニコニコ音楽科
- @きよし
- MIDI Chord Helper のホームページ
- MIDI Chord Helper プロジェクト(SourceForge.jp)
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