近江鉄道200系・203形単語

1件

オウミテツドウニヒャッケイニヒャクサンガタ

3.0千文字の記事

掲示板へ

記事編集

近江鉄道200系、および203形とは、近江鉄道に在籍していた通勤型電車である。

概要

200系

近江鉄道200系は、1967年、東急に在籍していたデハ3150形（3両固定）を譲り受け、中間付随車を除いた制御電動車、モハ200形同士で運行されていた。が、その時点で老朽化が著しい状況で、すでに予備車扱いとなっていた。そこで1970年に西武所沢工場にて、小田急 1600形の車体に乗せかえられた。と同時に制御電動車（モハ200形）+制御車（クハ1200形）の2両固定となった。モハ200形は後の1973年に近江鉄道が使い慣れていた、国鉄払い下げの機器（DT12台車+MT15電動機）に交換され、一部別物になっている。クハ1200形は米原方に連結された名義上は新造の車両で、小田急 1600形の車体に、手持ちの部品を取り付けたもの。2両編成4両が在籍していた。

203形

近江鉄道203形は、200系の両運転台版のようなもので、3両が在籍していた。3両とも出自・車体などが違うので別々に解説する。

モハ203

基本的に200系と同じ出自である車両。東急デハ3150形が3両から2両に改造される際に発生したサハ3100形を、サハ100形 101として竣工されたのが始まり。1970年に小田急 1600形の車体に乗せ換え＆電装化され、モハ203形となった。1970年に運用開始。

モハ204(モユニ11形11)

基本的に200系・モハ203と同じ出自だが、この車両はクハ1212形1212を1973年に小田急 160 0系ではなく京王 170 0系デハ1707の車体に乗せ換え＆電装化している。

ちなみに、種車のデハ1707は京王時代に踏切事故の復旧工事をされた際に形状が他車と異なるものになり、京王 170 0系の中でも異端車であった。

晩年は荷物・郵便合造仕様に改造した上でモユニ11形11に改称されたが、1984年に郵便輸送が廃止されたため休車となり、1990年に廃車された。

その後も廃車体が彦根工場に放置されていたが、時期は不明だが一部の鉄道ファンから京王に対して買い戻し＆復元・保存を希望する声があった。しかし、後述のように東急由来の車両であり帝都電鉄の車両ではない、ということで立ち消えになってしまい、彦根駅東口再開発工事の影響でヤードが廃止された際(2004年)に解体された。

モハ204の考察

前述したように当車だけ京王 170 0系の車体を使用していたため、200系・203形の中では異端車となっているが、鉄道ピクトリアル№24　私鉄車両めぐり（8）には次のように書かれている。

デハ1700形

井の頭線戦災の報に急いで駆けつけた車で、本当は東横・小田原両線へ入る予定であったもので1701～1704はすでに3550形のナンバーを付けて元住吉工に入っていたのを変更してきたものです。（後略）

これだけでは意味不明だと思うので解説すると、本来京王 170 0系は東急 355 0系として製造され一部車両は東急元住吉検車区に入線していたが、井の頭線の永福町車庫が米軍により空襲されたため急遽京王 170 0系として井の頭線に入線^[1]、そのまま京王電鉄が引き継ぎ井の頭線で運用された。

その後、1372mm軌間に改造の上京王線に転属、京王6000系が登場した1972年に全車廃車となり、デハ1707のみが近江鉄道に譲渡された。

ここまでは特におかしいところはないが、問題は「本当は東横・小田原両線へ入る予定であったもので」という記述である。

当時の小田急に東急 355 0系（京王 170 0系）と同型の車両が導入されたという記述はどこにもなく、この記述が誤りなのではないかというのが一番有力な考え方だが、この文章を執筆したのは日本一の鉄道愛好家と言われるほどの情報量を持っていた吉川文夫氏であり、誤りとは考えにくい。

そうなると、当時小田急に導入されていた普通車は小田急 160 0系しかないので小田急 160 0系が東急 355 0系の同型車ではないか、という仮説が生まれる。

実際、東急 355 0系と小田急 160 0系は主電動機などの機器類こそ違うものの、

車体長は16m級
窓・ドア配置が一緒

と車体はほぼ同型であるといえる。つまり、東急 355 0系などの車両を参考に小田急 160 0系が設計された、と考えることもできる(実際、小田急 160 0系はそれまでの小田急の車両とは趣向がかなり異なる)。

そう考えると、モハ203・205とモハ204が全く無関係の車体を使用していると一概には言えないのではないだろうか。

モハ205

1980年に三岐鉄道からモハ140形141を譲り受け、改番したもの。もともとモハ204以外と同じ小田急 1600形（1605）である。三岐鉄道時代に両運転台化され、一部機器を取り替えられていたが、近江鉄道入線時に他の203形グループと同じ足並みにそろえられている。

本車両は他の車両と違い、パンタグラフが米原方に取り付けられていたため見分けがつきやすかった。

ちなみに、1983年の500系クハ1506新製の際に一度車籍を譲っているが、モユニ10形10の車籍を利用し再入籍している。

廃車とその後(モハ204以外の車両)

200系および203形は500系と同じ時期に営業運用を開始しているが、車体は戦中製造の小田急 1600形である。200系はかなり老朽化が進んでいたため、ワンマン化改造されずに休車、そのまま廃車となった。またワンマン化改造された203形（203、205）も老朽化が激しくなっていた。90年代に入り、老朽化が限界に達したため、ついに廃車となった。

さて、これらの車体は他の車両（モハ204含む）と違って2004年まで残らなかった。廃車されるとだいたい5年以内で解体、台枠のみ残された。この残された台枠の行方は・・・。

そう、今となっては近江唯一の両運転台形式、220形である。

200系と203形の車体は老朽化で限界であったが、台枠はまだまだ使える状況であった。さらに台枠を新製するにはかなりの技術が必要で、台枠をゆがみなく作るのは近江鉄道にとって至難の業だった。いや、できるのかもしれないのだが、近江鉄道にはやっぱりお金がない。しかも、このサイズの台枠は当時の近江鉄道に丁度いいものであったが、如何せん古い規格だったので、製造している企業は恐らくどこにも無かった。近江鉄道の「使えるものは使って、できるだけコストダウンしよう（車籍も）」という伝統は当時も、そして今も受け継がれていた。