キログラム(kilogramme, kg)とは、SI基本単位のひとつで、質量を表す。
Shift JISおよびUnicodeでは、組み文字の「㎏」も設定されている。
概要
現在の基準では「単位s−1·m2·kg(J·sに等しい)による表現で、プランク定数hの数値を 6.62607015×10−34 と定めることによって設定される。」となる。
メートル法の制定以来長らく存在した単位だが、以下のように様々な問題がつきまとう単位でもある。
- 基本単位なのにSI接頭辞がついている
- 1000kgが慣例的に「トン(t)」という単位で表されており、1Mg(メガグラム)などの一貫した体系になっていない
- 定義づけが非常に難しく、長い間SI基本単位で唯一人工物によって定義されていた
定義の変更について
当初の定義では「水1立方デシメートル(1リットル)の質量」であった。
しかし、水の密度は温度によって変わってしまうため、「大気圧下で氷の融点における水」という定義が追加された。ところが、水の密度が最大になるのは約4℃の時ということが判明し、この定義が「最大密度における」と変更された。
さて、小学校の理科は「水は圧縮できない」と学習するが、それは「手で押した程度では目に見える大きさでは圧縮されない」という意味であり、実際には非常に大きな圧力を加えればごくわずか圧縮される。つまり、水の密度は温度だけではなく圧力にも依存することになる。
圧力は「力/面積」の次元を持ち、力は「質量・長さ/時間2」の次元を持つので、キログラムを定義するために温度と圧力を設定する場合、「質量の定義の中に質量の単位が含まれる」という循環定義になってしまう。
キログラムに関するこうした問題が判明したのは18世紀終わり頃だが、当時の技術ではこれらを解決するのが難しかったため、1799年に国際キログラム原器が制作され、以降2019年までの220年間、キログラムの定義が「国際キログラム原器の質量」となっていたのである。
人工物による定義は、それが破損したり経年変化をしたりする可能性があり、基準としては不適切である。
そこで他の物理的に1つに定まる方法でkgを定めることが議論された結果、2018年にプランク定数を用いた定義に変更することが決定され、2019年に施行された。
プランク定数による定義
質量とエネルギーの等価性により、キログラムは「◯◯ジュールのエネルギーと等価である質量」と定義することが可能である。
また、光子のもつエネルギーは「プランク定数×周波数」であり、上記を繋げれば、キログラムを「周波数◯◯ヘルツの光子が持つエネルギーと等価の質量」と定義できる。
ここで、エネルギーをE、質量をm、光速度をc、周波数をνとおけば、
m=(h/c2)・ν
となる。この値を1としたければ、ν=c2/h に設定すればよい。
光速度はメートルを定義するときに定義されているため、あとはプランク定数を定義すればキログラムも定義できることになる。
2019年の決定により、各物理定数は以下のように定義された。
- c= 299 792 458 [m/s]
- h=6.626 070 15 × 10-34 [J・s]
計算すると、キログラムは
ということになる。
国際キログラム原器
パリ郊外のセーヴルの国際度量衡局に保管されている、かつてキログラムの定義となっていた原器。
この国際キログラム原器は直径高さ共に約39mmの白金90%、イリジウム10%の合金製でできており、3重のバリア気密容器に入れられており、内部は真空になっている。
なお、国際メートル原器は1960年まで定義として使用され続けていた。
関連動画
関連項目
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- 0
- 0pt

