えらいやつってのは始めからワルなんかにならねぇの!とは、漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」に登場する台詞である。
概要
コミックス42巻に収録された「仕事さがし!の巻」にて、両津勘吉が発した台詞。
この回は大原部長が連れてきた「まさし」という不良少年が会社をクビになり、就職の世話を両津が依頼されるというエピソードだが、不良からから立ち直ろうとする彼を褒める派出所メンバーに両津が釘を刺す。記事名はこの主張の一部分である。
両津「まておまえら!ちょっと勘違いしてるんじゃねぇのか!」
中川「えっ どうしてです?」
両津「こいつのどこがえらいんだ いったい!」
中川「ちゃんとまじめになったでしょう えらいですよ」
両津「えらいやつってのは始めからワルなんかにならねぇの!
正直で正しい人間がえらいにきまってるだろ!」
両津「こいつなんかわがままで勉強もしないでやりたいことやって
中川「でも……」
あのやかましいバイクで正面衝突してフォーカスかざった方がよかったんだ」
大原「こらっ 何て事いうんだ そういう目でかれをみるからひねくれて……」
両津「ごくふつうにもどっただけなのに
それをえらい 立派だと甘やかしてるでしょうが!
ひねくれるのは自分の勝手なんですから!」
両津「こいつから金とられたまじめな学生やバイクとられた人の方が悲惨でしょう!?
『正直者がバカをみる』の手本を示しているこいつのどこが立派なんですか?」
両津「同じ年で新聞配達などしてがんばってる少年の方が立派でしょうが
どうしてそんな単純なことがわからないのですが部長!」
両津「だからこういう連中を救ってやる必要なし!
おちるやつは最後までおちていいしもどりたいやつは勝手にもどればいい
自分できめる事!」
大原「おまえのいう事ももっともだ!」
両津「ぜんぜんわかってないじゃないすか!」
両津の渾身の主張も通じず、結局仕事探しの世話をすることになる。
「不良が更生することを過剰に褒めそやされる風潮に釘を刺す名言」としてインターネットを中心に広まっており、こち亀の台詞の中でも有名な一文である。
一見すると尤もらしい主張であるように見えるが、両津がこのように主張するのも「世話をするのが面倒くさい」という言い訳のための主張であり、そもそも主張の内容も「お前が言うな」というギャグであるといえる。
両津自身、少年時代から現在に至るまで何度も警察のお世話になったワルであり、紆余曲折を経て警察官になった=不良から更生した経歴がある。
また、両津が語っている「わがままで勉強もしないでやりたいことやってる」「金やバイクを盗む」「フォーカスを飾る(=新聞や週刊誌などに写真を撮られて報道されること)」などは全部両津自身が経験している。両津はまさしの性格も「上司と喧嘩してクビになった」「飽きっぽく、仕事も長続きせず複数渡り歩いてきた」「ギャンブルが趣味で金遣いが荒い」などを言い当てており、なんだかんだ言いながら結局不良の就職の世話をしたのも自分と似通った部分を感じていたのかもしれない。
このエピソードはせっかく世話をした就職先をまさしは無断欠勤しており、根気のなさを嘆く他メンバーと違い怒り心頭の両津は「もはや残された道は人間やめますか?しかねぇぞォあいつァ」と拳銃を抜きながら駆けだそうとするのを中川がなだめる、というオチで終わる。
ちなみに他のエピソードでも両津自身の行動に対して「少しは褒めろ」と主張することもある。コミックス120巻では一般市民を殴って謹慎処分を受け、謹慎から戻ってきたエピソード[1]があり、謹慎明けの両津を無視する派出所メンバーに対して「一か月ぶりに戻ってきたんですよ!少しは感激してくださいよ!!」と主張するも、逆に大原部長に「市民を殴って謹慎になったんだろ!なんで復帰して感激するんだ!バカモノ!」と叱責を受けている。
余談
「えらいやつってのは始めからワルなんかにならねぇの!」という物のたとえは、聖書にも似たような一文がある。
特に家を出て遊び惚けている弟がある日父の待つ家に帰郷し、盛大な宴が執り行われる中、真面目に仕事をしている兄が「真面目にやっていたのに遊び惚けている弟を祝うなんて」と不満をぶつける様子を記した『放蕩息子のたとえ話』は複数の画家が絵画として描かれているなど、昔から不良が更生したことで褒められる風潮に疑問を持つ人々がいたらしいことが分かる。
関連リンク
関連項目
脚注
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- 7
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