エンタルピー(enthalpy)とは、熱力学における物質の熱と深く関係する概念である。
習いたての学生がエントロピー(entropy)とごっちゃにすることに定評がある。
※エントロピーとは全くの別物である。(大事なことなので2回書きました)
エンタルピーとはなんだろうか?
この工学系学生が必ずと言っていいほどつまづく謎の概念について、なんとなく理解できるよう解説してみようと思う。
まずは「状態量」という概念を獲得してほしい。
エンタルピーは状態量である。この状態量ということを理解しなければエンタルピーの重要性に気づくことは出来ない。
そこで簡単な概要を説明しよう。気体があるとする。この気体の温度をT1℃からT2℃に上げたい。それにはふたつの手段がある。気体を圧縮する等の仕事をするか、ヒーター等で加熱するか、少なくともどちらかを行わなければならない。
ここで、熱量と仕事の和が10になるように加えれば、T1℃からT2℃になるとする。つまり、「熱量が1なら仕事は9」や「熱量が10なら仕事が0」といった感じである。
このように、T1℃からT2℃にするには、10の熱量と仕事の合計が必要である。逆に言えば、合計が10でさえあれば仕事も熱量も加える量は自由である。色々な変化を取り得るような量があることを知ってほしい。
しかし、温度という量は物質の状態を決めるひとつの量なので経路に依存しない。T1℃からT2℃に上げたなら、上げた方法(経路)はどうでもいいのである。同様に、経路に依存しないものとして圧力、体積、内部エネルギーなどがある。これらのことを状態量(完全微分)という。
一方、熱量、仕事のような経路に依存する量は"不完全微分"という。
H=U+PV
Hがエンタルピー、Uが内部エネルギー、Pが圧力、Vが体積である。
内部エネルギーというのは、その物体の運動エネルギーと位置エネルギーをあわせて考えた状態量と考えてもらえればいい。要は物体の持ち得るエネルギーである。
つまりエンタルピーは
エンタルピー=(エネルギー)+(圧力)×(体積)
と表現できる。
ここで注目してほしいのが、右辺が全て状態量である。従って、エンタルピーも状態量なのである!
上で書いたとおり、熱量は経路に依存する不完全微分だったと書いた。つまりある物質の状態だけを観測して、熱量を計測するのは不可能である。このことからも、状態量というのは便利な量ということがわかる。なぜなら、その物質の状態だけを知ることさえできたら、温度や圧力といった量がわかるからである。
それでは、熱量をなんとか状態量にすることが出来ないか。そこででてくるのがエンタルピーなのである。
エンタルピーは定圧下だと、熱量と等しくなる。このことを証明するのは数学的な証明が必要なのだが、とりあえず受け入れてほしい。証明は別に下に書きます。暇なら読んでください。
つまり定圧下だと、熱量qとエンタルピーの変化ΔHは等しいのである。
ΔH=q
つまり、エンタルピーを導入すれば、我々のいる空間は大気圧というほぼ一定の圧力下に支配されているので、熱量がなんとエンタルピーに化けて状態量になってしまったのである。
まず、系(注目している物質群;気体など)がされた微小仕事をdw=-pdVということを知っていてほしい。この説明は割愛させてください。第一法則より
dU=dw+dq
dq=dU-dw
dw=-pdVを代入して
ところで、エンタルピーの微小変化(全微分)は
定圧ならばdp=0なので
①と②を比較すると全く同じなのでdH=dqとなる。従って、定圧変化なら状態量であるエンタルピーと熱量が等しくなる。
もっと暇な方用の↑の証明の補足
「定圧」の他に「準静的過程」を仮定しないといけないです。
具体的にいうと、実は上の証明ではpdVのpが「系の圧力」か「外界の圧力」の議論があいまいになっています。
正確に書くと、
となり、一致するわけではありません。そのため、「準静的過程」を仮定しないといけません。
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最終更新:2024/12/23(月) 08:00
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