楽な作業ですよ、地球守ればいいんだから とは、くわはらの生んだ無駄にかっこいい名言である。
突如新種の巨大生物の襲撃を受けたEDF(Earth Defence Force:地球防衛軍)の欧州拠点が壊滅的な打撃を被り、市民避難が完了していない市内への侵入を許すことになる。
市内に少数配備されていたEDF一個中隊がこれの迎撃にあたるが巨大生物乙種(蜘蛛型)の、既存の巨大生物からは考えられない挙動と極めて殺傷能力の高い攻撃に然したる抵抗も叶わず、極東から派遣されていた陸戦兵よーらい1曹、ペイルウィングくわはら2士、両名を除き事実上の戦闘不能状態に陥ってしまう。
この段階で、市内に残された市民の救出はほぼ不可能とされ、それどころか後方45km先に存在する避難民キャンプにまで危険は及んでいた。
即座に別拠点への避難民の誘導が開始されたが、最低限の避難でさえ、完了の五時間前には巨大生物群が避難キャンプに達するという絶望的な試算が出されていた。
進行中の巨大生物はここで全滅させねばならない。
そこで現場に残されたEDF隊員である陸戦兵よーらい2曹は非情の決断を下すこととなる。
インベーダー侵略初期から(具体的には巨大生物甲種<アリ型>が始めて出現した際から判明していた事実だが) 、彼らは非戦闘員と戦闘員の区別を一切つけないという習性が確認されていた。
この作戦はその習性を最大限利用、つまりは市内の避難所で辛うじて生存していた市民たちを囮に使用するといった極めて非人道的なものであった。
具体的な作戦概要は機動性に富むペイルウィング隊くわはら2士が避難キャンプ近くに待機、その後よーらい1曹が狙撃位置の確保したタイミングを見計らって、市民避難を誘導。それに反応した巨大生物を「ライサンダー2」の火力にて殲滅するというものである。
結果から言えば、この作戦は成功した。
市内に存在していた巨大生物は一掃され、後方の避難キャンプの安全は確保された。
しかし、囮とされた市民は悉く命を落とし、また本作戦を実行したEDF隊員にも深刻なトラウマを残す結果となった。(市民が強烈な酸を含んだ糸に絡め捕られ、凄惨な食害の犠牲になっていく現場を目の当たりにすることは、鍛え抜かれた戦士であっても心に傷を残すには十分なものであった。)
ペイルウィング隊くわはら2士は作戦の最中、この様な言葉を残している。
「楽な作業ですよ、地球守ればいいんだから」
命の取捨選択。そしてそれを決断しなければならないものの苦悩。
今日、人類の生存は守られ、地球はあの日に比べ驚くほど平和である。
破壊された都市の復興も目覚しく、我々はあの日の暗い影から立ち直りつつある。
しかし、だからこそ。取捨選択の果てに生き残った我々はこのことについて深く考えていかなければならないのではないだろうか?
彼らがあの日に下した決断、その過程を経ることなしに、我々が自らの生を全うすることはもはや不可能なのではないだろうか?
私はそう強く思わずにはいられない。
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最終更新:2025/12/10(水) 16:00
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