義務投票制とは、選挙の投票を強制する制度のことである。強制投票制ともいう。反対語は任意投票制や自由投票制である。
有権者が正当な理由を持たずに選挙の投票を怠ることを禁止する制度のことを義務投票制という。
普通選挙を導入したのに投票率が下がることがある。日本は、昭和時代において選挙の投票率が高かったが、平成時代以降において選挙の投票率が低くなった(資料1、資料2)。
組織票に恵まれている立候補者は、無党派層の浮動票が大量にやってこない場合において当選が確実となるから、選挙の投票率が低くなって無党派層の浮動票が減ることを歓迎する傾向にあり、選挙の投票率が低いことを問題視せず義務投票制を支持しない傾向にある。
一方で、さしたる組織票を持っていない立候補者は、無党派層の浮動票が頼みの綱となるから、選挙の投票率が高くなって無党派層の浮動票が増えることを歓迎する傾向にあり、選挙の投票率を高める義務投票制を支持する傾向にある。
義務投票制を導入している国は世界中に存在し、正当な理由がないのに投票を怠った有権者に対して低額の罰金を課すことが主流である。たとえばオーストラリアなら20豪ドルで、2023年4月の為替なら1,800円程度である。しかし、その程度の金額でも効果があるようで、オーストラリアの投票率は90%を超えている。
義務投票制の長所は、次のことが挙げられる。
この中で2.に注目すべきである。投票率が高くなって無党派層の浮動票が多い状態になると、立候補者の自浄作用が強くなる。投票率が低くなって無党派層の浮動票が少ない状態になると、立候補者の自浄作用が弱くなる。
たとえば、霊感商法と児童虐待で有名なカルト宗教団体がいて、そのカルト宗教団体が立候補者に対して「選挙運動員を派遣したり組織票を提供したりします」と申し出るとする[1]。
投票率が高い国なら、立候補者は「霊感商法と児童虐待で有名なカルト宗教団体と付き合いを持つと、無党派層の浮動票が離れてしまい、落選してしまう」という危機感を持つので、カルト宗教団体からの申し出を断るようになる。つまり、投票率が高い国は自浄作用が強い。
投票率が低い国なら、立候補者は「霊感商法と児童虐待で有名なカルト宗教団体と付き合いを持っても、無党派層の浮動票など極めて少ないのだから、落選することがない」と安心するので、カルト宗教団体からの申し出を喜んで受けるようになる。つまり、投票率が低い国は自浄作用が弱い。
また、たとえば、政権与党の中の派閥が、政治資金パーティーを開いて自らを支持する企業にパーティー券を買わせ、そのパーティー券収入を派閥の政治資金収支報告書に記載せず、議員に裏金として渡しつつ議員の政治団体の政治資金収支報告書に記載させず、議員にそうした裏金を選挙運動員の買収資金に充てさせる計画を立てたとする[2]。
投票率が高い国なら、立候補者は「裏金を作ったことがばれたり、裏金で選挙運動員を買収した疑いが高まったりすると、無党派層の浮動票が離れてしまい、落選してしまう」という危機感を持つので、裏金作りの計画に反対するようになる。つまり、投票率が高い国は自浄作用が強い。
投票率が低い国なら、立候補者は「裏金を作ったことがばれたり、裏金で選挙運動員を買収した疑いが高まったりしても、無党派層の浮動票など極めて少ないのだから、落選することがない」と安心するので、裏金作りの計画に賛成するようになる。つまり、投票率が低い国は自浄作用が弱い。
義務投票制の短所は、次のことが挙げられる。
1.は、義務投票制のしわよせが政府に及ぶことを示している。投票を怠っている人に対して「長期の出張に出ている」「健康の問題がある」などの正当な理由がある場合は罰金を免除する必要がある。しかし、正当な理由があるかどうかを審査するために、何らかのしわよせが発生する。政府が新たに人員を雇うと費用が掛かるし、政府が既存の人員で従来の公的サービスを維持しつつ義務投票制の審査を行うと職員の負担が増える。
2.は、自発的に長時間労働に従事する人が多い国で露呈する。日本はやりがい搾取が盛んな国であり、言葉巧みに従業員を「自発的に無償の長時間労働に従事したい」という心理へ誘導する経営者が多く存在する国である。そういう国では、自発的に長時間労働に従事する人が「政府に罰金を払いながら投票を怠って長時間労働を続ける」という選択肢を選びがちになり、義務投票制の罰金の分だけ所得を減らしがちになる。
義務投票制の特徴の中で、短所と扱われる可能性があるものは、次のことが挙げられる。
1.を主張する可能性がある宗教団体というと、エホバの証人である。この宗教団体は争いごとを全面的に禁止しており、小学生の信者に対して小学校のクラスにおける学級委員の選挙に参加させないし、大人の信者に対して国政選挙に参加させない。
1.に対する反論としては、「憲法15条4項により日本の選挙において秘密投票が堅持されていて、義務投票制を導入したとしても投票箱に白票のような無効票を投じることができ、形式的に政治的行為をするが実質的に政治的行為をしないことが許されるので、政治行為の拒否という思想・教義を尊重する環境が整っている。このため義務投票制は思想・良心の自由や信教の自由の侵害に当たらない」というものが考えられる。
2.について、義務投票制を支持する人の中の「義務投票制は無党派層の浮動票を増やすことにより立候補者に無言の圧迫を与えるという長所がある」と考える者は、短所と考えない傾向がある。「白票のような無効票が増えたとしても構わない。白票のような無効票には『もし自分がいかがわしいことをしたら、白票のような無効票を投じていた人が、気を変えて、自分以外の候補者に投票するようになるかもしれない』と立候補者に警戒させる効果がある。白票のような無効票にも十分に存在価値がある」といった考え方をする。
義務投票制とよく似ている制度としては、投票奨励制というものが考えられる。投票奨励制は投票をした人に政府がお金を給付するものである。
義務投票制が正当な理由がないのに投票を怠るものに罰金を課すもので「負の外発的動機付け」の範疇に入るのに対し、投票奨励制は「正の外発的動機付け」の範疇に入る。
投票奨励制については、本記事において後述する。
投票奨励制とは、投票をした人に政府がお金を給付するものである。
オーストラリアは正当な理由がないのに投票を怠った人に対して20豪ドル(1,800円程度)を罰金として課す義務投票制を導入していて、その効果もあって投票率が90%を超えている。
そこから考えれば、「選挙で投票をすると2,000円の給付金を支払う」という投票奨励制でも十分に投票率を引き上げる効果が見込まれる。
投票奨励制の長所は、義務投票制の長所とほとんど同じである。
投票奨励制の短所は、次のことが挙げられる。
1.は、政府の財政負担が増えることを示している。選挙のたびに有権者1人に対して2,000円程度を給付金として支払うので、そのお金を調達する必要がある。緊縮財政の支持者にとって1.は受け入れがたいといえる。
1.を短所として認めない政治勢力もあり、積極財政の支持者と言われる。
2.は義務投票制の短所と全く同じである。
アメリカ合衆国やイギリスや日本は伝統的に任意投票制の国である。
掲示板
11 ななしのよっしん
2024/05/29(水) 02:08:02 ID: EfzpnJ+fiE
この記事のダメなとこ
全体として
・基本的に日本の文脈(無党派層の多さなど)を前提としているのに一般論のように記述している(初版編集者の特徴)
・根拠や例示が編集者の都合の良いものを選択しており、長所と短所の議論があまりにもアンバランス。結果的に義務投票制を導入すべきという議論に誘導している
・一般論のように記述しているのに北朝鮮等の非民主国家における強制投票の記述がない
細かい点
・「長所」の記述
>投票率が高くなると民主主義の機運が高まる
→強制投票制採用国では投票率は高いものの、白票や無効票の割合も自由投票制の国に比べて高くなり、適当な党や候補者に投票する有権者も多くなることが判明しているので必ずしもそう言えない。
>投票率が高いと政治家の汚職やカルト宗教との癒着に対する自浄作用が高くなる
(省略しています。全て読むにはこのリンクをクリック!)
12 ななしのよっしん
2024/10/28(月) 11:10:34 ID: uw7YNloqKy
投票率を受けて義務投票制にしろという声がちらほら見られるけど、別に導入してるオーストラリアもベルギーも日本より優れた政治をしてるとも思えないんだがな……。
デンマークやフィンランドみたいにそういうことをしなくても自然と投票率が高くなるような政治をすることこそが理想なんであって制度がむりやりそう仕向けるのは違うと思うよ。
あと単純に政治参加したくない人の意思を尊重してないようにも見えるのでそういう意味でも反対。民主主義における国民の参政権は権利であって義務ではない
13 ななしのよっしん
2025/01/02(木) 17:16:20 ID: UWyPUpMm3L
投票行かないのを許容するならそれは民主主義である意味などない
国民に政治力なんか与える必要ないわよ
お望み通り一部のエリートのみの政治で社会の歯車として奉仕することに徹してもらって
急上昇ワード改
最終更新:2025/01/03(金) 12:00
最終更新:2025/01/03(金) 11:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。