限界消費性向とは (ゲンカイショウヒセイコウとは) [単語記事]

限界消費性向（mar ginal pro pensity to consume）とは経済学の言葉である。MPCと略される。

関連する言葉は限界貯蓄性向である。

概要

定義

可処分所得Y－Tが1増えたときの消費Cの増加量のことを限界消費性向MPCという。

表記

限界消費性向MPCは「消費Cの増加量÷可処分所得Y－Tの増加量」で計算され、0以上1以下の数字をとり、0≦MPC≦1である。

現実の人間は限界消費性向MPCを0にすることが不可能であり、何かしらのご飯を食べるという消費行動をしないと生命活動を維持できない。また現実の人間は大抵の場合においてMPCを1にしない。ゆえに現実の限界消費性向MPCは0を超えて1よりも小さい数字をとり、0＜MPC＜1になる。

タテ軸消費C・ヨコ軸可処分所得Y－Tの消費関数モデルを書くとする。消費関数の線は右肩上がりの直線になり、傾きが限界消費性向MPCになる。消費関数の線がY軸と交わるY切片は基礎消費といい、人々が生命活動を維持するために最低限必要とする消費であって0になることがあり得ず、0よりも大きい数字になる。

限界貯蓄性向MPSとの関係

可処分所得Y－Tが増えたとき、人は消費Cか貯蓄Sのどちらかに可処分所得Y－Tを振り分け、それ以外に可処分所得Y－Tを振り分けない。

可処分所得Y－Tが1増えたときの国民貯蓄Sの増加量のことを限界貯蓄性向 MPSという。限界消費性向MPCと限界貯蓄性向 MPSの合計は常に1となり、MPC+MPS＝1となる。

国家の性質を示したり個人の性質を示したりする

限界消費性向MPCは、基本的に、国家の性質を示すマクロ的数値として使われる。

しかし、個人の性質を示すときに限界消費性向MPCを使うことがある。「高所得層に属する個人は限界消費性向MPCが小さく、低所得層に属する個人は限界消費性向MPCが大きい」とか「大金持ちのウォーレン・バフェットは質素な生活をしており限界消費性向MPCが非常に低い」とか「宵越しの金を持たない江戸っ子や浪費癖のある人は限界消費性向MPCが非常に高くて1に近い」と表現することがある。

性質

人々が安心して将来に対して楽観的になると、限界消費性向MPCが上昇する。

景気が良くなると人々が安心して将来に対して楽観的になり、限界消費性向MPCが上昇する。

政府が「我々には政府購入をする意思と能力がある」と派手に宣伝しつつ政府購入を拡大すると、人々が「困ったときは政府が助けてくれて、親方日の丸・親方星条旗で生きていける」と思うようになり、人々が安心して将来に対して楽観的になり、限界消費性向MPCが上昇する。

限界消費性向MPCが上昇すると、可処分所得Y－Tが同一であっても国民貯蓄Sが減るので、閉鎖経済の国や大国開放経済の国ならクラウディングアウトが発生し、実質利子率が上昇して投資が減る。

日本とアメリカ合衆国の限界消費性向MPCの差

日本の限界消費性向MPCは0.7程度で、アメリカ合衆国の限界消費性向MPCは日本よりも高くて0.7～0.9程度とされている。

この原因を簡単に分析すると次のようになる。アメリカ合衆国は世界最大の軍事国家であり、巨額の軍事予算を成立させて多くの人員を盛んに雇用していて、そのことを派手に宣伝している。アメリカ合衆国の貧乏な高校生は「高校卒業後に軍隊で数年働き、予備役になりつつ予備役軍人の学費を免除する大学に通い、大卒になって一流企業に就職する」という人生選択をすることができ、実際にそういう選択をする人が珍しくない。そのため人々が「困ったときは政府が助けてくれて、親方星条旗で生きていける」と信じ込んでおり、人々が将来に対して楽観的であり、人々の限界消費性向MPCが高くなっている。