閉鎖経済とは、経済学の用語である。
閉鎖経済とは次の2つの意味を持つ言葉である。
1.の国は、経済学の教科書にしばしば登場し、IS-LMモデルなどを使って分析する対象となる。
2.の国は、国際金融のトリレンマによって発生する3種類の国のうちの1つである。
1945年~1971年のブレトンウッズ体制に参加した諸国もこの体制を採用していた。
保護貿易の長所の1つは、国内農林水産業を保護して国内の田舎において人口空白地域が発生することを防ぎ、草ぼうぼうの荒れ地が発生することを防ぎ、凶悪犯罪者が凶悪犯罪の証拠を隠滅しにくくなる状況を作り出して国内治安を維持して国家全体の生産技術を維持するところである。治安が良くなると、人々は生命・身体・自由・名誉・財産に危害を加えられることにおびえずに生活するようになって労働に集中できるようになり、労働者が職務専念義務を果たすようになり、労働強化が起こり、同一の労働時間であっても以前よりも生産が増えるようになり、国家全体の生産技術が向上する。国家全体の生産技術が向上すると実質GDPや実質賃金や実質資本レンタル料や労働生産性Y/Lや資本生産性Y/Kがすべて上昇するが、そのことはコブ=ダグラス生産関数で計算すれば明白である。
保護貿易の長所の1つは、国内工業や国内サービス産業を保護して国内企業が価格競争で敗北しにくいようにすることで労働者が賃上げを求めやすくなる状況を作り出し、労働運動を活性化させ労働者の賃金の引き上げを促し、人口減少を防いで言語や文化の統一性を維持して国家全体の生産技術を維持するところである。労働者の賃金が上がると、結婚率と出生率が上昇して少子化と人口減少が抑制され、人口が維持され、移民の流入に頼らずに済むようになり、国内の言語と文化の統一性が維持され、国内において情報が流通しやすい社会が維持される。社会の中で情報が流通しやすくなれば同一の労働時間であっても以前よりも生産が増えるようになり、国家全体の生産技術が向上する。国家全体の生産技術が向上すると実質GDPや実質賃金や実質資本レンタル料や労働生産性Y/Lや資本生産性Y/Kがすべて上昇するが、そのことはコブ=ダグラス生産関数で計算すれば明白である。
固定相場制を採用しているので、名目為替レートが固定され、物価が一定である短期において実質為替レートが固定される。このため、貿易の確実性が高く、企業の経営の見通しが立ちやすく、企業が在庫投資や設備投資を行いやすく、国家の投資が増えやすい。また、純輸出がプラスの国はその状態を持続させやすく、国家の純輸出が一定になりやすい。
閉鎖経済の国は、政府が財政政策を実行して中央銀行が金融政策を行うことで国内の実質利子率を自由に決定する体制の長所を確保できる。ちなみに、多くの場合において国内実質利子率の決定権は政府にあるのだが、そのことについては国際金融のトリレンマの記事の『国内実質利子率の決定の自由』の項目を参照のこと。
投資が増えすぎたときは過剰投資が発生してバブル景気とバブル崩壊が発生して大量の不良債権が生まれて長期にわたる不景気を作り出すので国内実質利子率を引き上げて投資を抑制せねばならないが、そうした経済政策を実行できる。投資が減りすぎたときは将来の資本量が減って将来において国家の生産力が低下するので国内実質利子率を引き下げて投資を促進せねばならないが、そうした経済政策を実行できる。
保護貿易の短所の1つは、企業の費用が増えるところである。保護貿易をすると安価な外国商品を購入することができなくなり、企業が原材料費などを削減しにくくなる。また保護貿易をすると企業経営者が労働者に「人件費の安い外国に対抗するため賃下げを受け入れろ」と言いにくくなり、労働運動を押さえ込みにくくなり、企業が労働者に支払う人件費を削減しにくくなる。
保護貿易の短所の1つは、企業の収益が増加しにくくなる点である。保護貿易をすると企業が海外の巨大な市場に商品を売り込みにくくなり、企業の収益が増加しにくくなる。
固定相場制を採用しているので、名目為替レートが固定され、物価が一定である短期において実質為替レートが固定される。このため、貿易の確実性が高く、企業の経営の見通しが立ちやすく、企業が在庫投資や設備投資を行いやすく、国家の投資が増えやすい。投資の余地が少ない先進国でそのような状態になると、過剰投資になり、需要が無いのに需要が有るかのように見せかけて投資家から融資を騙し取る投資詐欺を行う知能犯罪者が増え、不良債権が増え、バブル景気とバブル崩壊が発生し、長期にわたる深刻な不景気が発生する。
固定相場制を採用しているので、名目為替レートが固定され、物価が一定である短期において実質為替レートが固定される。純輸出がプラスの状態の国はその状態が維持されやすくなる。産業の規模が大きい先進国でそのような状態になると、「あの国は近隣窮乏化政策を実行している」と厳しく批判されやすくなる。
国際的資本移動を制限するので、自国の企業が外国の企業を買収して傘下に収めることや、外国の企業が自国の企業を買収して傘下に収めることが発生しにくい。このため多国籍企業が発生しにくい。
自国企業が外国企業に買収されることを屈辱と感じて嫌がる心理や、民族資本・土着資本の自立を目指す心理は、世界中で見られる。これは国家主義(ナショナリズム)とか愛国主義(パトリオティズム)の1つとされる。そうした心理の持ち主にとって閉鎖経済が望ましい体制になる。
物価が一定の短期において閉鎖経済の国で財政政策を変更し、政府が国債を発行してお金を借り入れてから政府購入または消費を増やすと、投資が減るが、実質GDPが増える。
物価が一定の短期において閉鎖経済の国で政府が国債を発行して、長期金融市場からお金を借り入れ、その資金を使って政府購入を増やして実質GDPを増やしたり、もしくはその資金を埋め合わせに使いつつ減税して国民の可処分所得Y-Tを増やして消費を増やして実質GDPを増やしたりしたとする。実質GDPが増えたので実質貨幣残高M/Pへの需要が増えて国内名目利子率が上昇し[2]、短期において期待インフレ率が一定なので国内実質利子率が上昇する。国内実質利子率が上昇するのでクラウディングアウトが起こって投資が減少し、実質GDPが減少する。しかし、財政政策に伴う実質GDPの増加幅は、投資の減少に伴う実質GDPの減少幅よりも大きいので、実質GDPの増加が完全に相殺されずに残るし、名目利子率や実質利子率の上昇が完全に相殺されずに残る。
タテ軸名目利子率・ヨコ軸実質GDPのIS-LMモデルで説明すると次のようになる[3]。政府が財政政策を拡大し、国債を発行してお金を借り入れ、そのお金で政府購入を増やすとIS曲線が右に平行移動し、LM曲線との均衡点が右上に移動して、名目利子率の上昇と実質GDPの増加を生む。名目利子率が上昇し、短期において期待インフレ率が硬直的なので実質利子率も上昇し、投資が減る。しかし、「政府購入の増加に伴う実質GDPの増加幅」の方が「投資の減少に伴う実質GDPの減少幅」よりも大きく、「政府購入の増加に伴う実質GDPの増加幅」から「投資の減少に伴う実質GDPの減少幅」を差し引いた分だけ実質GDPが増加する。
物価が一定の短期において閉鎖経済の国で金融政策を拡大し、中央銀行が国債を買いオペしてマネーサプライMを増やすと、投資が増えて実質GDPが増える。
物価が一定の短期において閉鎖経済の国で中央銀行が国債を買いオペして、マネーサプライMの供給を増やし、短期において物価Pが一定なので実質貨幣残高M/Pの供給を増やし、名目利子率を下げる[4]。短期で期待インフレ率が一定なので実質利子率が下がる。これによって投資が増え、実質GDPが上がる。
投資や純輸出が増えて実質GDPが増えるので実質貨幣残高M/Pへの需要が増えて国内名目利子率が上がり、短期で期待インフレ率が一定なので国内実質利子率も上がるのだが、国内名目利子率や国内実質利子率が元通りになるほどではない。
タテ軸名目利子率・ヨコ軸実質GDPのIS-LMモデルで説明すると次のようになる[5]。中央銀行が金融政策を拡大してマネーサプライMを増やすとLM曲線が下に平行移動し、IS曲線との均衡点が右下に移動して、名目利子率の下落と投資の増加と実質GDPの増加を生む。
前項目と本項目を合わせると次のようになる。物価が一定の短期において閉鎖経済の国で政府が国債を発行してお金を借り入れて政府購入を増やすと、実質GDPが上がる。その国債を中央銀行に買いオペさせて肩代わりさせると、投資が増えて実質GDPが上がる。
物価が変動する長期において閉鎖経済の国で財政政策を拡大し、政府が国債を発行してお金を借り入れてから政府購入または消費を増やすと、実質利子率が上昇し、クラウディングアウトが起こって投資が減る[6]。
「長期において実質GDPが一定を保つ」という自然率仮説を採用するのなら、政府購入や消費の増加幅は投資の減少幅と一致する。

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最終更新:2025/12/16(火) 11:00
最終更新:2025/12/16(火) 11:00
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