雑切り抜き

概要

　雑切り抜きとは文字通り雑な切り抜き動画であり、ざっくり言うと録画した元動画の一部を無加工またはほぼ無加工で切り抜いた単なる転載である。

　録画やダウンロードした元動画を動画編集ソフト上で範囲選択して書き出すだけで済むため手軽ではあるが、下記の問題があるためそのまま公開することは基本的に避けるべきである。

　この項では主に雑切り抜きのリスクについて記載する。

問題点・リスク

　そもそも切り抜き動画自体が二次的著作物であるため、本来は元配信の著作権者に明示的な許可を得ない限り著作権法に触れる行為であり、黙認または容認してくれているだけである。権利者の意向として二次創作に関するガイドライン等が公表されている場合は、その許諾内に収める必要がある。（著作権法第63条）。これが無い場合は著作権法の規制をダイレクトに受ける。

　なお、「歌枠」「ゲーム配信」においては元の楽曲やゲーム自体の著作権者が配信者とは別になり、歌については作詞家・作曲家・演奏家等の権利に関係し、ゲームについてはゲーム制作会社やBGM等の権利に関係する。またゲームによってはプレイヤーがプレイしている動画のみ配信可能としているケースがある（ゲーム配信の切り抜き禁止）など、権利関係がより複雑になる。これらについては個別に許諾を得る必要がある（編集切り抜き等で主眼が雑談等に置かれている場合は映り込みとして（著作権法第30条の二）で許可される場合がある。）ため、特に雑切り抜きではリスクが高まる。

　加えて、何の編集や加工も行われない切り抜きは単純に無断転載であり、アップロードの時点で著作権法上の問題（第23条公衆送信権）を孕む。ただし、（字幕編集などで）会話や発言等を主とする切り抜きについては、第30条の二（付随著作物）の除外規定、第20条2項の四（例外規定）でゲーム等の映り込みが付随著作物（映り込み）とみなせる場合は、リスクが大幅に低減する（申し立てや反論ができる編集動画のほうが低リスク）。

　また、2020年1月ごろ、雑切り抜きによって本家の動画がYoutubeのAIによって「再利用されたコンテンツ」と判断され、収益化を剥奪される事例（ホロライブ、のりプロ、一部個人勢等）が相次ぎ、それ以降は切り抜き動画の投稿に関してガイドライン上で制限をかける企業・プロダクションが現れた。

　切り抜き動画での収益化やクリエイター奨励プログラムの利用は、禁止されている場合を除いて、同人やファン活動の範囲を超える営利目的とみなされないよう注意が必要である。

　ただし、一部のグループ・企業ではガイドラインで無編集の切り抜き動画や切り抜き動画での収益化を認めているケースがあり、全てが確実にアウトというわけではないが、ガイドライン等に準拠すれば無編集切り抜き動画は大半のケースで禁止または制限がかかるため、基本的に避けた方がよい。

二次創作に関するガイドライン等

　企業・プロダクション等では切り抜き動画を含む二次創作に関して、権利者の意向を示すガイドラインを公表していることがある。二次創作ガイドライン等に沿って製作された二次創作物に関しては、著作権者が権利を行使しないとしている場合がほとんどである。

　二次創作に関するガイドライン等は「こういう条件を満たしていれば著作権法上の権利行使をしない」という著作者の意向であり、そこから外れた場合、著作権法上の権利を行使される可能性がある。

　切り抜き動画を作成する際には、あらかじめ二次創作ガイドライン等の有無、およびその内容を確認する必要がある。ガイドラインが無い場合、およびガイドラインから逸脱した場合は、切り抜き動画のアップロードは著作権法上の権利を行使される可能性がある。中には切り抜き動画に関する規定がないものもあり、その場合は外ガイドラインがあっても対象外となる可能性がある。たいていの場合は認知されず見逃されるが、犯罪状態には変わりないため，無編集動画より編集済み動画のほうが低リスクである。

各社ガイドラインへのリンク集

　下記に各社動画配信系の事務所等のガイドラインへのリンクを示す。切り抜きを行う際には該当するガイドラインの原文を参照し、充分に読み込んで理解したうえで製作する必要がある。なお、当然ながらここにあるリンクが全てではない。ひろゆきのように文書化されていないが全面的に許可している場合もある。記載されていない事務所・プロダクション・個人等であっても、また、記載されて要る事務所等についても、二次創作ガイドライン等があるかどうか、ある場合は切り抜きを含む二次創作についてどう扱われているか調べる必要がある。

　複数の事務所・グループのタレントが参加したいわゆるコラボ動画の切り抜きに際しては、より厳しいほうに合わせたほうが低リスク。

事務所名	ガイドラインへのリンク
ANYCOLOR	ANYCOLOR二次創作ガイドライン
カバー株式会社	二次創作ガイドライン
774.inc	二次創作ガイドライン
のりプロ	動画の転載・切り抜きについてお知らせ
Re:Act	二次的創作ガイドライン
株式会社ドズル	切り抜き動画の規約
富士葵	富士葵および「Aoi ch.」創作ガイドライン
キズナアイ	キズナアイ キャラクター利用規約
プロプロダクション	二次創作ガイドライン
ヒメヒナ （田中工務店）	ヒメヒナ創作ガイドライン
VOMS	Guideline / FAQ
.Live	公式ツイート及び「電脳少女YouTuberシロ」と「アイドル部」と「メリーミルク」ライセンス規約
GEMS COMPANY	二次創作に関するガイドライン
ウェザーニュースLive	ネットワークサービスにおける番組映像等の利用に関するガイドライン
ボンド株式会社	切り抜き動画ガイドライン

関連項目

• 切り抜き

外部リンク

• 著作権法（e-Gov法令検索）
• 文化庁「著作物が自由に使える場合」
• ANYCOLOR二次創作ガイドラインに学ぶ、切り抜き動画の権利問題【コンビニ三笠】
• 「にじ歌で救える命がある」削除の顛末と、切り抜きの権利リスクについて【コンビニ三笠】
• バーチャルYouTuber・VTuberコンテンツの利用に関するガイドラインについて（弁護士法人モノリス法律事務所）