Analogyとは (アナロジーとは) [単語記事]

analogyとは、

類推、類比；類似。
彩音の楽曲。「ひぐらしのなく頃に卒」OPテーマ曲。

ここでは１．と２．について説明する。

１．

アナロジーとは

"analogy"は、「類推」「類似」といった意味の英単語である。語源は古代ギリシア語の「ἀν α λ ο γία(ana log ia)」。日本語で書き下すと「アナロジー」となる。

日本語で「アナロジー」という場合は主として「類推」の意味で用いられる。類推とは、特に未知の物事に対し、別の物事と共通点を持つと認めた上で、一方が持つ性質が他方にもあるだろうと推察することである。具体例を以下に示す。

例）あなたが勤勉で律儀なドイツ人と友人になったとしよう。彼をAとする。後日、あなたは別のドイツ人Bと出会う。Bとあなたは初対面だが、BとAには「ドイツ人」という共通項があるため、Bもまた勤勉で律儀な性格だと推測することができる。

あなた「いやいや、ちょっと待って！ドイツ人だからといって勤勉で律儀とは限らないだろう。怠惰でずぼらなドイツ人もいるはず。論理が破綻している！」

…ごもっとも。アナロジー（類推）は必ずしも信頼できる推測方法ではない。その点に無自覚だと、最悪の場合差別や偏見を生み出しかねない。気をつけよう。

アナロジーの役割

ではアナロジーの何が重要なのだろうか？　端的に言えば、類推は「未知の物事への取っ掛かりを作る」点で有用なのだ。この意味では、アナロジーは「類推」というよりは「類比」と訳す方が適切だろう。

人間が未知のものを認識するときには、既知の物事に頼る必要があるとする考え方がある。つまり、人間は既知の物事と未知の物事の間に共通点を見出し、既知の物事の持つ性質を未知の物事も持つと推測するというわけである。つまり、アナロジーこそが認知の端緒を開くのだ。

卑近な例から説明しよう。皆さんは、ニコニコでも話題になった「ようかい体操第一」を覚えておられるだろうか。そう、「ようかいのせいなのね、そうなのね」のアレである。「どうした急に」とツッコまれそうであるが、ふざけている訳ではない。実は、「妖怪」はアナロジーという思考法から生まれたものだと考えることができるのだ。

ニコニコ大百科の「妖怪」の記事によれば、「昔の人は、説明のつかない不思議な現象や理由の分からないものや疫病、災害を妖怪としてきた」という。つまり「不思議な現象・疫病・災害」という未知の物事を、「悪事を働くのは意志を持った主体である」という既知の物事と照らし合わせ、「悪事の発生」という共通項を見出し、「不思議な現象・疫病・災害」にも意志を持った主体が関与していると推測したわけである。その人格を具体化したものこそが「妖怪」であることは言うまでもない。ここで見られる「未知の物事を既知の物事との類似から推測する」という構造はまさしくアナロジーである。

「ようかい体操第一」に戻ろう。この曲では、「朝は眠い」「あの子に振られた」「ピーマンを食べられた」「ウンチは臭い」という不思議（＝未知）を、「妖怪が不思議な現象を起こすこと」（＝既知）から推測し、これらの不思議を「ようかいのせいなのね」と結論づけている。この推測方法はやはりアナロジーだといえるのではないだろうか。

真面目な例も挙げておこう。みなさんは小学生のころ、電気回路に流れる電流を水流に例えて理解した経験があるのではないだろうか？これは、電流（＝未知）の性質を水流（＝既知）との類似性から理解するという意味で、アナロジーを利用している。このように、教育分野においてはアナロジーの有用性は古くから認知されており、応用例は枚挙に暇がない。しかし、アナロジーは理解しやすいがゆえにこそ表面的な理解だけが先行し本質的な理解が疎かになりがちという欠点もある。結局のところ、アナロジーは理解のきっかけを作ってくれるにすぎないという認識を忘れないことが重要なのだ。

補足

ここまでアナロジーについていくつかの観点から述べてきたが、正直なところ厳密性には欠けることをここに告白しなければならない！　より詳細かつ厳密な説明をお求めの方は、科学系では認知科学や科学哲学、人文系では認知心理学や文化人類学などの文献を参照してほしい。科学分野と人文分野では微妙に「アナロジー」の意味が異なってくるのでその点は注意してほしい（前者は類推、後者は類比という意味で用いられがち。必ずしもそうではないが）。また、論理学における「アナロジー」はそれらともまた異なる意味合いを持つ。