健文の公開手記(たけふみのこうかいしゅき)は日本のライトノベル作家美濃健文が公開した彼の手記である。それは2014年3月1日より書きつづられているようであるが、本当の所いつかかれたものであるのかよくわからないようだ。
健文の公開手記以前に、彼はあるやりとりを行っている。
やあ、この手記を手にとった君、君だ。
実はぼく、人を探している。
千尋という人を、知らないか?
うさぎみたいな子だ。知っている?知らない?
見かけたことはない?
どんなことでもいい。知っていることがあったら、ぼくに教えてほしいんだ。
ぼくはどうしても、その人に会わなければいけないんだ。
■
君にとってその人は何なのかって?
それを今言葉にすることは、できないよ。
言葉にすれば、きっとそれがまた何かを曇らせてしまうからだ。
だからぼくは、ただ静かに彼女を探すことになった。つまり、歩くということだ。
■
君はその人を憎んでいるのかだって?
どうしてそんなことを言うんだ?
憎む理由がいったいどこにあるんだ?
本当に、ぼくは何も憎んでいない。
■
もうすこし手がかりが欲しい?そうだな…。
とても彼女は、大きな人だった。すごく、本当に。
それだけはよく覚えている。
だけど、じつはぼく、ずっと眠ってたんです。どれくらい眠っていたのかも、わからないくらい。
目が覚めたら、彼女はいなかった。べつに、悲しいとか、寂しいとか、思わなかった。
ただ彼女は、何かの必要のために、どこかに消えたんだ。そういうことが、彼女の置手紙に書いてあった。
■
もう会えないのではないか?
あなたはまだ夢をみているのではないか?
そんなことはない。ぼくはすっかり元気だよ。
ぼくは元気さ。いつも通りに。
なあ、さっきから気になっていることがある。
君達は、どうしてそんな悲しい顔をしてぼくを見るんだ?
■
手記を公開してから、ぼくのことが心配だという便りをいくつかもらった。
その気持ち、感謝するよ。だけど心配はいらない。
ぼくはこれから、ある手がかりを求める。
どうもこの先に、めったに人の立ち入らない深い迷宮があるらしい。
そこは人の体が役に立たない、暗黒と無音の世界であり、言葉と文字だけが道を開くという。
不思議な話だ。いったいどんなことになるのだろう。
■
ぼくはあれから少しだけ考えた。
きっと千尋(いや、もう名前はわからない)は、ぼくの言葉に、言葉で答えようとしたのだ。
言葉をつかってはいけなかったのだ。それでも、気持ちを交換するためには言葉が必要になる。
組み立て、にこだわったときから、迷宮がはじまる。
きっとここはそんな迷路だと思っている。
ここに来る前に、時計塔に寄った。なんでも王女に、森の管理をまかされているそうだ。(王女?なんのことだろう)
おしゃべりな鳥を連れた、小柄な青年だった。森には入るべきではないと、何度も聞かされた。
「何かがある、と思わせるだけで、何の価値もない世界」なのだそうだ。
■
彼に尋ねた。どうして「何もない」とわかるのか?
彼はきっと、森に入ったことがあるのだろう。そして、気が済むまで何かを探したのだ。
そして、何もなかった。
「彼には」見つけられなかったのだ。
では、ぼくは、何かを見つけられるのか?
ぼくは、「彼には」見つけられなかったものが見つけられるのではないだろうか。
彼はそこまで話したぼくに、大きな声で(急に大声を出されて驚いた)忠告した。
ぼくは彼に返した。だから、探検なのではないか?それが発見ではないか?
■
もっとも、彼の伝えたいことはよくわかっている。十分に。(わかってないといわれることも含めて)
彼は人間だ。だから何かを守らなければいけなかった。そのために、森の番人にならざるを得なかったのだ。
きっとぼくは、人間ではない。おかしな話だが、そんなことを感じている。つまり、ぼくには守るものがない。
それなら、彼の分身として、ぼくが何かを見つけてあげることが、彼を救うことにもなるのではないだろうか?
おしゃべりな鳥が、お菓子をくれた。(あと何か、難しいことを話していたが、すぐ思い出せない)
鳥は言葉を話すものだったのか?ぼくが眠っている間に、何かが変わってしまったのだろうか…?
■
森に入ってからもう2週間になるだろうか。
たしかにこれは、気の滅入りそうな場所だ。奇怪なことばかりが起こる。
それでいながら、常識を疑われるのは自分である、という具合だ。
(そう、たとえば小便を漏らした子供に「お兄さんはなんで漏らさないの?」と聞かれてしまうように)
それでも時間をかけると、歩き方の「コツ」だけはわかってくる。
ようは、ここはいつもと発想が「逆」なのだ。
「歩きたい」と思うのであれば、足を止めることを考える。
「何かを考えたい」と思うのであれば、思考のスイッチを切ってみる。
何かが気になったら、それを「見ない」ようにしてみる。(すると見えてくる)
そんな調子がわかってくると、これはこれで居心地がいい。
ただし、どっぷり浸かってしまうのも危険だと思える。だから危険なのだろう。
どこかに自分が持っていた正常な感覚を残しつつ、森の感覚にも慣れる。
■
ぼくはもともと、千尋という人を探してこの森へ入った、記憶がある。
自分が何者であったか、何を考えていたのか。どんな物語を考えていたか。
文字を追って、ようやくちぎれかけた記憶が再びつながってくる。
なるほど、これが時間というものか。
■
この森は3人で入るものだという噂を聞いた。なんでも天国にいけるのだそうだ。
「何もない」はずの場所に、そんな噂が立つのも不自然ではないか?
それは単純に、ここが樹海のような場所だ、という意味ではないだろう。
おそらくここでは何度も、人が何かを冒してきたのだ。
そのような歴史を持っている。
ふと見た木の枝に、人の衣類らしきものがかかっていた。
■
ぼくはいったい、どうかしてしまったのだろうか?
心は今も、ぴんぴんしている。
次々といろんなかんがえがうかんでくる。
それでもふしぎなことに、
それをつかまえるものがない。
みみからこえがきこえる?
だいじょうぶぼくはげんきだ。
■
ぼくはとしよりにかわってしまっただろうか?そんなことはなかろう。
だがまちがったことに、かがみをもってこなかった。だからきっと、としよりになった。
なにをしているのか、ちょっとおもいだすことがむずかしくなってきた、きがする?
だが、ひとはわすれないように、めもをのこす。だからめもをみている。
めもをわすれることがないように、ひもでくくりつけている。だからおきるとまず、めもをみる。
さんもじかいてある。ひとのなまえだろう、
そう、そう。そう。そう。おぼえてる。わすれてない、
■
きぶんしだいで、ひきかえすこともできるのだよ?
あとすこしで、ほんがくずれてしまうよ?
おなかはへってない。
■
(つづく)
みかけました(いい人そうだった)森にいくっていってました(やめろといった)
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最終更新:2025/12/15(月) 23:00
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