エイシンデピュティ 単語


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エイシンデピュティ

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エイシンデピュティEishin Deputy)とは、2002年生まれの日本の競走馬。栗毛の牡馬。

内ラチ沿いの粘り腰で重賞4勝を挙げ、1歳下の天皇賞馬アドマイヤジュピタとともに、父フレンチデピュティの「ダート短距離種牡馬」という評価を覆した晩成の泥臭いグランプリホース。

主な勝ち鞍
2007年:エプソムカップ(GⅢ)
2008年:宝塚記念(GⅠ)金鯱賞(GⅡ)京都金杯(GⅢ)

概要

父*フレンチデピュティ、母*エイシンマッカレン、母父Woodmanという血統。
父はクロフネとノボジャックの活躍で2001年に日本に輸入されたアメリカの種牡馬。エイシンデピュティはその輸入初年度の産駒である。
母もアメリカ産馬で、28戦2勝の条件馬で終えたが、その母ラダナムはアメリカでGⅠ2着2回、祖母ゲイスタイルは米GⅠを含む米仏で重賞7勝の名牝というなかなかの牝系。エイシンデピュティは第2仔。
母父は早熟短距離馬を出す種牡馬として成功を収めた、こちらもアメリカの種牡馬。日本ではヒシアケボノが代表産駒。

父は特にクロフネのダートでの強烈な印象から「ダート短距離種牡馬」として期待されて輸入された。母父も短距離種牡馬で、BMSとしての主な産駒も(彼の2歳下になるが)アストンマーチャン、カノヤザクラという世代戦から活躍した短距離の快足牝馬になる。
というわけで、血統的には明らかに早熟のダート短距離馬を期待された血統であった。

2002年4月9日、浦河町の栄進牧場で誕生。オーナーはもちろんその栄進牧場の創設者で、「エイシン」の冠名でおなじみの平井豊光。馬名も「冠名+父名の一部」というストレートな命名である。
あのディープインパクトと同じ2005年クラシック世代だが、4歳で引退したディープに対し、こちらは5歳春まで条件馬だったため、対戦したことは一度もない。

栄光へ進む代議士

一歩ずつ、コツコツと前へ

栗東・野元昭厩舎に入厩。脚元に不安があったようでデビューは遅れ、新馬戦もなくなってしまった3歳4月。2005年4月24日、京都のダート1200mの未勝利戦だった。戦績だけ見て振り返れば「え?後の芝のグランプリホースが?」という感じだが、上述の通り血統と脚元の不安を考えればごく自然というか当たり前の選択である。もっとも、デビューが遅れている時点で早熟を期待する血統にはもう反しているわけで、これ自体がそもそも後のフラグだったのかもしれない。
ちなみにこのデビュー戦は4着。続く2戦目(新潟ダート1200m)も3着。5月28日の3戦目、中京ダート1000m戦で勝ち上がる。鞍上はこの3戦目からしばらく安藤勝己となるが、この未勝利戦を勝ったときにアンカツは「芝でもやれる。距離はもっとあった方がいい」と陣営に進言していた。

その後もコツコツと条件戦での戦いが続く。6月の平場の500万下(阪神ダート1400m)は先行するも直線でかわされ5着。7月の有田特別(小倉芝1200m)で芝初挑戦するが行き脚がつかず10着惨敗。そのうえ脚元の不安で秋は全休となり3歳を終える。

明けて4歳、初戦の平場の500万下(京都ダート1400m)を4角で一度は置いていかれながら粘り腰で差し返して勝ち抜け。体質もようやく良化して、続く昇級初戦の1000万下・宇治川特別(京都芝1400m)で芝再挑戦すると、ここを4着。前述のアンカツの進言もあり、以降は芝に転向する。
3月の須磨特別(阪神芝1400m)を3着とし、1番人気に支持された4月の同条件の播磨特別を2番手先行から抜け出して3馬身差の快勝、3勝目を挙げる。

1600万下でも芝1400mを走るが3着、6着と連敗して休養。その間に降級となり、休養明けの11月、降級初戦の宝ケ池特別(1000万下)は初のマイル戦ながら快勝。
しかしその後は1600万下の脱出に手間取り、12月の芝1600mを5着、1400mに戻して2着。明けて5歳、1月に1800mに伸ばして3着、2月にダート1400mに戻ってみたものの7着と勝ちきれない。

3月、再び芝1400mに戻り、阪神の心斎橋ステークスからは鞍上が岩田康誠となる。ここを1番人気に応えて勝利、17戦目でようやくオープンに昇格。
続く4月の京都、オーストラリアトロフィー(OP)では芝1800mに距離延長。5番人気に留まったが、ここをまんまと逃げ切り勝ちして連勝を飾った(ちなみに2着はブラックタイド)。

そして6月、強気に安田記念にも登録していたが、堅実にエプソムカップ(GⅢ)で重賞初挑戦。鞍上は田中勝春に乗り替わり。混戦模様の中9.3倍の5番人気に支持される。内枠からハナを切れず6番手の位置取りになったが、稍重の馬場、荒れた内を嫌って多くの馬が大きく外に出す展開。その集団の内寄りにじっと構えたエイシンデピュティは、大きく横に広がった混戦の中、最後クビ差だけ抜け出して勝利。6着まで0.1秒差、「クビ」「ハナ」「クビ」「ハナ」「ハナ」と並ぶ大混戦を制し、3連勝で重賞初制覇を飾った。
ちなみにこのレース、2着ブライトトゥモロー、3着サイレントプライドと*フレンチデピュティ産駒で馬券内を独占。5月のNHKマイルカップでピンクカメオが大穴を開けたのに続き、「道悪のフレンチデピュティ産駒」を強く印象づけるレースともなった。

エイシンデピュティ斜行事件

さて、晴れて重賞ホースとなったエイシンデピュティ。秋は天皇賞(秋)を目標に定め、毎日王冠(GⅡ)から始動。引き続き田中勝春を鞍上に4番人気に支持されたが、中団前目でレースを進めたものの4コーナーで下がってしまい見せ場なく8着。

前走は一叩きということで予定通り天皇賞(秋)へ。鞍上は松岡正海の予定だったが、騎乗停止になってしまい柴山雄一がテン乗りとなった。メイショウサムソン、アドマイヤムーン、ダイワメジャー、ポップロックの4強対決ムードの中、単勝92.3倍の14番人気。まあ実績と前走成績からすれば仕方ない評価だが、このレースでエイシンデピュティの名前は思わぬ形で競馬ファンに広く知られることになってしまう。
逃げるコスモバルクとデルタブルースを見ながら3番手に構えたエイシンデピュティ。直線に入り、荒れた内を嫌って馬群が横に広がる展開。エイシンデピュティは好位置から抜け出しを図ったが……内にいた先頭のコスモバルクが右に大きく斜行。それに驚いたエイシンデピュティが右に大きくヨレたことで、外にいた馬が玉突き状態になって大きな不利を受けることになってしまった。
(この事件、ニコニコにあるフジテレビの映像だとコスモバルクがアップになっていてエイシンデピュティの斜行が映っておらず状況がわかりにくい。YouTubeのJRA公式の動画の方が、何が起きたかわかりやすいだろう)
これで大きな不利を被ったのが外を回っていたアドマイヤムーンとダイワメジャー。一方コスモバルクの内に構えていたメイショウサムソンは被害を受けずにスルスルと抜け出して快勝。アドマイヤムーンは6着、ダイワメジャーは9着に撃沈することになってしまった。

問題のコスモバルクは5位、エイシンデピュティは8位で入線。当然ながら審議となったのだが……。
審議の結果は、エイシンデピュティが斜行で14着に降着、柴山騎手は4日間の騎乗停止に対し、コスモバルクの五十嵐冬樹騎手は戒告のみ。まあ確かに直接的な被害を与えたのはエイシンデピュティなので降着自体は仕方ないとしても、原因はどう見たってコスモバルクの斜行だったので、この裁定は競馬ファンの間で議論を呼ぶこととなった。
コスモバルクの斜行で前を塞がれたカンパニーの福永祐一騎手はマジギレするし、五十嵐騎手は結局この事件でコスモバルクを降ろされることになるし、降着を食らったエイシンデピュティともども、なんとも後味の悪いレースとなってしまった。

内ラチ沿いの粘り腰

エイシンデピュティは気を取り直して12月の鳴尾記念(GⅢ)へ。鞍上も岩田康誠に戻り、3番人気に支持される。好スタートから逃げを打って直線でも外から襲いかかるドリームジャーニーやアドマイヤオーラ相手に粘りに粘ったが、鋭く伸びてきた伏兵ハイアーゲームにゴール寸前でかわされハナ差の2着惜敗。

明けて6歳、初戦は1月の京都金杯(GⅢ)。内枠から逃げを図るオースミダイドウ、掛かり気味に上がって来たキンシャサノキセキと3頭で逃げ集団を形成する。直線に入り、一緒に逃げた2頭の間を割って力強く抜け出すと、後方から猛然と追い込んできたアドマイヤオーラとカネトシツヨシオーをしぶとく凌ぎきって1着でゴール。重賞2勝目を飾った。

これで2月の東京新聞杯(GⅢ)では2番人気に支持されたが、4番手で先行するものの直線でもうひとつ伸びを欠き、ローレルゲレイロの逃げ切りの後ろで混戦の中7着と煮え切らない走り。

続いて向かったのは4月の産経大阪杯(GⅡ)。全2走がマイルからの秋天以来2度目の2000mへの距離延長、しかも相手はあのダイワスカーレット。同じ先行馬同士では分が悪いと見られるのも仕方ない。32.5倍の11頭立て7番人気であった。
ダスカにハナは譲らないとばかりに押してスタートで前に出たが、隣の枠のダスカがすっとそれをかわしていき、外のアサクサキングスと2頭でダスカを追走する形となる。逃げるダイワスカーレットに最内から食らいつくエイシンデピュティ。止まらないダイワスカーレットに最後まで食い下がり、3/4馬身差の2着。ダスカの強さが際立ったレースではあったが、エイシンデピュティも鳴尾記念や京都金杯のような粘り腰を2000mでも見せられることを示したレースであった。

2000mでも充分戦えるということで、次は5月の金鯱賞(GⅡ)へ。天気は小雨で馬場は稍重。フレンチデピュティ産駒には絶好の条件である。長期休養明けのカワカミプリンセスや同期のインティライミなどの実績馬も揃う中、ドバイ帰りのアドマイヤオーラに次ぐ2番人気。
外目の6枠から気合いをつけて内に切れ込み、逃げ態勢を採ったエイシンデピュティ。後ろを離して単騎で悠々と逃げていく。3コーナーで先行勢が詰めてくるが、内ラチ沿いを綺麗に回って粘る粘る。そう、この馬は内ラチ沿いで粘らせたら天下一品なのだ。最後は追いすがるマンハッタンスカイを逆に突き放し、1馬身半差をつけて鮮やかに逃げ切った。

未知の1ハロンの二枚腰

金鯱賞の勝利で自信を深めた陣営は、宝塚記念(GⅠ)への出走を決める。岩田騎手は2番人気のロックドゥカンブに回ったため、平井オーナーの指名で内田博幸がテン乗り。断然の1番人気はメイショウサムソン(2.1倍)で、2200mは初挑戦となるエイシンデピュティは11.3倍の5番人気。
しかし当日の天気は小雨! 馬場は……重! そして他に目立った逃げ馬はなし! そう、エイシンデピュティにとっては絶好の条件が整っていた。

内田騎手が気合いをつけてハナを切ったエイシンデピュティ。ロックドゥカンブに突かれながらもマイペースで逃げる。内ラチ沿いを回って直線に入り、早めに仕掛けたアサクサキングスやインティライミが迫ってくるが、先頭で粘る粘るエイシンデピュティ。
先頭のまま残り200m。彼にとっては未知の最後の1ハロン。そこで外から襲いかかってきたのは、1番人気の武豊メイショウサムソン! 猛然と追い込んでくるメイショウサムソンに、内田騎手は何度も左鞭を振るって必死に追う。一完歩ごとに迫ってくるサムソン。内田騎手の鞭に応え、未知の1ハロンをしぶとく二枚腰で粘るエイシンデピュティ。最後は2頭が並んでゴール板に駆け込んだ。

先頭エイシン、先頭エイシン、インティライミ突っ込んで来る、
外からメイショウサムソン! メイショウサムソンの底力!
内からインティライミ! しかしエイシンだエイシンだ!
エイシンデピュティ、外から、メイショウサムソン変わったか
2頭並んだ僅かにエイシンデピュティか!

――関西テレビ 石巻ゆうすけアナ

内田騎手はゴールした瞬間「差されたかな」と思ったというが、最後はアタマ差、粘りきっての逃げ切り勝ち。6歳にしてグランプリホースに駈け上がった。内田騎手は宝塚記念初騎乗で初勝利、これが中央移籍後初のGⅠ制覇となった。宝塚記念の逃げ切り勝ちは1998年のサイレンススズカ以来で、以後は2022年現在もこのエイシンデピュティが最後である。

この年の天皇賞(春)では、同じフレンチデピュティ産駒のアドマイヤジュピタがメイショウサムソンを破っており、このエイシンデピュティの勝利でフレンチデピュティの評価は「道悪巧者で芝ダートを問わない万能種牡馬」と固まった。父の名を嗣いだ晩成の孝行息子エイシンデピュティであった。

その後

夏場は休み、秋は天皇賞(秋)で前年の汚名を払拭することを目標に定めたエイシンデピュティ。しかし9月に右前脚の球節を痛め回避。有馬記念に目標を切り替えたが、直前に繋靱帯炎を発症。年齢的には引退でもおかしくなかったが、復帰を目指して長期休養に入る。

明けて7歳、9月のオールカマー(GⅡ)で1年3ヶ月ぶりに復帰。鞍上は田中勝春。3連覇を目指して逃げるマツリダゴッホを2番手で追走したが、もう彼に全盛期の粘り腰は残っていなかった。4コーナーでもう馬群に呑まれブービー14着。
戸崎圭太の騎乗した天皇賞(秋)では気合いをつけて逃げ、直線で内ラチ沿いで粘り込みを図ったが沈んでカンパニーの9着。
そしてジャパンカップでは逃げるリーチザクラウンとアサクサキングスを見ながら3番手で進め、直線でリーチザクラウンに並びかけたが、外からウオッカに置いていかれて6着。
このレースの後、繋靱帯炎が再発。引退、種牡馬入りとなった。

通算30戦10勝。道悪をマイペースで逃げてしぶとく粘りきるレーススタイルといい、コツコツと条件戦からステップアップして徐々に距離を伸ばしていった晩成の競走生活といい、なんというか「グランプリホース」という華やかな勲章に対して良い意味で泥臭い馬であった。GⅠ勝ちが宝塚記念だけの馬って彼に限らずなんかそういうイメージがある気がする。宝塚記念の後の故障が惜しまれる。

引退後はレックススタッドで種牡馬入りしたが、晩成なところが嫌われたかロクに牝馬は集まらず、8年間で産駒は83頭、地方重賞2勝、中央ではたった4勝に留まった。2018年限りで種牡馬を引退し、現在は栄進牧場で功労馬として余生を過ごしている。

血統表

*フレンチデピュティ
1992 栗毛
Deputy Minister
1979 黒鹿毛
Vice Regent Northern Dancer
Victoria Regina
Mint Copy Bunty's Flight
Shakney
Mitterand
1981 鹿毛
Hold Your Peace Speak John
Blue Moon
Laredo Lass Bold Ruler
Fortunate Isle
*エイシンマッカレン
1995 栗毛
FNo.5-g
Woodman
1983 栗毛
Mr. Prospector Raise a Native
Gold Digger
*プレイメイト Buckpasser
Intriguing
Ladanum
1984 鹿毛
Green Dancer Nijinsky II
Green Valley
Gay Style Sir Gaylord
Style

クロスNorthern Dancer 4×5(9.38%)

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関連リンク

関連項目

  • 競馬
  • 競走馬の一覧
  • 2005年クラシック世代
  • フレンチデピュティ
  • アドマイヤジュピタ
  • スズパレード - 無敗三冠馬世代の希少な古馬GⅠ馬、6歳で宝塚記念を制覇など立ち位置が似ている。
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