天天天国地獄国カバー曲配信問題とは、ミュージシャンのAiobahn氏が作曲した楽曲を、タカオカミズキ氏がカバーした事に端を発する、著作権に関する問題である。
本記事では、この問題の経緯の説明をした上で、著作権の仕組みに基づく解説と検討を行う。
Aiobahn氏が作曲した楽曲『天天天国地獄国』のカバーを、タカオカミズキ氏が制作。これを、ニコニコ動画やYouTubeといった動画共有サービス、Spotifyといった音楽サブスクリプション・サービス等で配信し始めた。
詳細は後述するが、この『天天天国地獄国』は、NexToneという著作権管理団体が権利を管理しているとされており、NexToneと契約したりすれば、楽曲をクリーンにカバー出来る状態となっていた。
同月、作曲者であるAiobahn氏は、当該カバー曲に対して否定的な発言を行った。
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https://twitter.com/Aiobahn/status/1960274495542866361
2025年9月3日現在で確認出来る最古のXのポストは、2025年8月26日の物で、次の様に主張している。
このポストでは、はっきりと何について語っているかは明言していないが、多くの人物によって、タカオカミズキ氏によるカバー曲についての発言だと受け取られた。
そして、Aiobahn氏のファンから同情の声があがった一方で、法的に問題ないという指摘もされた。
法的に問題ないという指摘があった為か、8月27日、Aiobahn氏が再び口を開いた。
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https://twitter.com/Aiobahn/status/1960512840097521830
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https://twitter.com/Aiobahn/status/1960521015521632331
要約すると、次の通りである。
一連のAiobahn氏の発言によって、XやYouTubeのコメント欄等で、Aiobahn氏の支持者が「原作者の意思を尊重すべき」とタカオカミズキ氏を批判し始めた。
その一方で、著作権制度を重視する立場からは、「それでは著作権管理団体の意味が無くなってしまう」と反論がなされた(後述)。
→【問題4】当該カバー曲で「原作者の意思を尊重すべき」論は妥当なのか?
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https://twitter.com/takaokamizuki/status/1962457505512169646
9月1日になり、当のタカオカミズキ氏が反応し、次の様に発言した。
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https://twitter.com/Aiobahn/status/1962530747790852485
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https://twitter.com/Aiobahn/status/1962531592129380675
9月1日深夜、Aiobarn氏はXをログアウトする宣言をした。この中では、「ちょっと気持ちを語っただけ」だと弁明をした。
本節では、基本的に、Aiobahn氏とエイベックスとの間で適切な契約がなされた上で、NexToneに著作権の管理が委託された事を前提としている。
契約が不適切であった場合については、【問題2】当該カバー曲が合法でない可能性は考えられるのか?を参照のこと。
本事案において、『天天天国地獄国』(以下「当該原曲」と言う。)のカバー曲を制作し、それを動画共有サイトや、有料サブスクリプション・サービスで配信する事は、合法である可能性が高い。
先述の通り、当該原曲の著作権の多くは、NexToneという著作権管理団体が管理しているとされる(NexTone作品コード:N01563433)。この「著作権管理団体」とは、雑に言えば「著作権の管理を代わりに勝手にやってくれる団体」の事である。特に有名なのがJASRACとNexToneであり、これらでは、他者に有料で著作物の利用を許諾して、そのお金を権利者に分配している。
つまり、NexToneに許諾を得れば、その許諾の範囲内で、当該原曲の利用が許されるのである。この観点で本事案を検証すれば、次の通りとなる。
以上のことから、合法の可能性が高いと言える。
仮に合法ではない可能性として考えられるのは、主に、次の3点である。
まず、Aiobahn氏の言う「サンプリング」については現時点で根拠が示されておらず、氏自身も「怪しいがどうしようもない」という旨の発言をしている為、置いておく。
「サブスクリプション・サービスでの配信」については、「法の隙間」とは言いづらい。
前述の通り、当該カバー曲は、世間一般で広く用いられている「著作権管理団体」という仕組みによって、楽曲の利用許諾を得ている可能性が高い。その為、その許諾に則ってカバーを制作し配信する事は、「法の隙間」ではなく、むしろ「真正面に法に則った行為」と言える。
「原作者の意思を尊重すべき」という論調は、二次創作に関する議論でしばしば出てくる物である。
本事案においても、Aiobahn氏やその支持者の一部が、この論理を主張している。しかし、この論理を本事案に採用してしまうと、現状の音楽著作権管理団体の仕組み自体が破綻してしまう。
そもそも、JASRACやNexToneといった音楽著作権管理団体という仕組み自体が、原作者と利用者がやり取りする手間を省くという性質の物である。管理団体と契約を行った上での利用を、この論理で否定してしまえば、JASRACやNexToneは正常に機能しなくなってしまい、誰も安心してこれらを利用できなくなってしまう。
もし、原作者が「私の意思を尊重すべき」と考えるならば、究極的には、管理を委託する範囲を限定するとか、自前ですべての権利を管理するといった対応をするべきだろう。他者にモラルを説く前に、自身のした契約に責任を持つ必要がある。
この様に、著作権は創作物全般に関わる物であるから、1つの事案のみで物事を考えるのではなく、視野を広く持って考えなければ、様々な問題が生じてしまうことに注意が必要である。
- NexToneによる著作権管理の説明。急上昇ワード改
最終更新:2025/12/08(月) 12:00
最終更新:2025/12/08(月) 11:00
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