『機動戦士Vガンダム』とは、1993年に放映されたサンライズ制作のテレビアニメである。
通称V(ブイ)ガン。宇宙世紀ガンダムシリーズの一つ。
| 総監督 | 富野由悠季 |
|---|---|
| キャラクタ デザイン |
逢坂浩司 |
| 音楽 | 千住明 |
| 制作 | サンライズ |
| 製作 | サンライズ テレビ朝日 |
| 話数 | 51話 |
1986年の機動戦士ガンダムZZ以来となる、ガンダムのテレビアニメシリーズ。
ZZ以来のTVシリーズとして再び新規層・子供向きを意識して制作されており、時代的にも『F91』から再び一世代近い未来となり、内容的にも過去の宇宙世紀作品の知識がなくてもあまり問題はないようになっている。主人公の年齢も従来より若く(13歳)、多数の装備とパーツを持つ主役機Vガンダム等は当時流行していたRPGも意識したものと言われている。
また、それまでガンダムシリーズを支えていたと言える『SDガンダム』の客層を吸い上げることも意図しており、SD側のキャラモチーフとしてVガンダムをしばらく使用させないなどの処置をとっていたことでも知られる。
が、蓋を開けてみるとギロチンによる処刑シーンがあるなど残酷な描写も多く、さらに後半に向けては、宗教戦争や民族紛争などの問題が色濃く反映されていったため、当初の対象である子供達には受けずに従来通りの一定以上の年齢層が中心客層となった。
作品の結果自体はそれほど悪くなかったものの、大目標であった子供達の獲得を再び狙うべくガンダムシリーズは脱宇宙世紀を決意し、あの『Gガンダム』が誕生することになる。
地球連邦政府の衰退とともに地球支配を離れ、独立の道を歩み始めたコロニーの独立国家が地球圏の支配を競い合う宇宙戦国時代。地球支配を企むザンスカール帝国(サイド2)は、マリア主義を掲げ地球侵攻を開始する。その戦闘に巻き込まれ、抵抗組織リガ・ミリティアで闘うことになる主人公ウッソ・エヴィンの物語。
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前作ガンダムF91から更に数十年進んだ頃の物語の為、ヘビーガンやスペースアーク級、アレキサンドリア級がわずかに登場するのみで宇宙世紀シリーズではあるがメカニック的な繋がりも薄く、本作独自のメカが多数登場する。
が、そのデザインも(主にザンスカール帝国・ベスパの機体ではあるが)かなり独特であり、胸にデカデカとVの字が刻まれ光の翼を出すV2ガンダム、特徴的な土偶のようなネコ目のようなメインカメラ(複合複眼式マルチセンサー)に始まるベスパのMS、ビームシールドでヘリのように空を飛ぶ「ビームローター」、空も宇宙も飛べる上にビームを弾くタイヤ型SFS「アインラッド」、前期OPで突如登場し視聴者を仰天させたクモのようなメカ「サンドージュ」、雲型のダミーを発射し宇宙や海を泳ぐ『まんが日本むかしばなし』の竜のようなMS「ドッゴーラ」や
バイク戦艦「アドラステア/リシテア」、どう見ても男性のアレにしか見えない宇宙要塞「カイラスギリー」、睡眠状態で格納した2万人のマリア主義者と女王を使って地球上にサイコウェーブを照射し、地球上の生物を幼児退行化させる巨大サイコミュ兵器「エンジェル・ハイロゥ」
・・・などの奇抜さが際立っており、こういったケレン味さ嫌いで敬遠するガンダムファンも多いが、逆に斬新で秀逸と評価するファンも存在する。
また劇中での戦闘描写も独特であり、ヴィクトリーの分離戦法に始まり、ウッソの奇怪な戦法やザンスカールMSの奇抜な武装(ビームローターを投げる、ショックバイト、ビームメイス、没になった設定にはブーメランまであったそうな・・・)はこれまた賛否両論ながら、一定の評価を得ていて、本作の特徴の一つとして挙げられる。
リガ・ミリティア側も、序盤はVパーツをトラック(カミオン)で運んでいたり、鹵獲した敵のゾロアットやシノーペ(小型艇)を使用したり、リーンホースJr.はこれまた鹵獲したスクイード級のパーツを使用していたり(カタパルトや内部構造も実はスクイードのまま)、前期EDの最後にヴィクトリーの持っているビームスマートガンも遺棄されたものを修理したものだったり、非正規軍であることが強調されているのも特徴。
メカニックデザインはカトキハジメ、石垣純哉、大河原邦男が担当。
基本的にVガンダム系列をカトキが、ザンスカール系のデザインを石垣が、ゾロアット、ガンイージなどの初期のMSデザインの一部とバイク戦艦を大河原が担当している。が、カイラスギリーはカトキハジメのデザインであるし、リーンホース(ただしリーンホースJr.はスクイードをデザインしたカトキが手掛ける)やホワイトアークは石垣のデザインなど、MS以外に関しては一概に担当メカが統一されている訳ではないので注意。
特に、ほとんどのザンスカールMSのデザインを手がけた石垣純哉は思い入れが強いらしく、彼の画集「ROBOの石」は帯のコメントが富野監督だったり、石垣も冒頭のコメントでVガンダムの頃の富野監督との思い出を語ったり、最初のページが本人いわく「初めてデザインしたMS」である本作のシャッコー(の描きおろし新作Ver.)であったりと、影響が強いことがうかがい知れる。 石垣はその後「ガンダムAGE」でも、ザンスカールMSに似たような目にスリットの入った非モノアイの敵MSデザインを多数手掛けているが、その中でもガンダムレギルスを見た視聴者の中にはザンスカールMSやシャッコーを髣髴とさせると感じた視聴者も多かったのではないだろうか。
また、劇中のBGMは千住明のフルオーケストラで占められており、評価が高い。
富野監督が本作を評価している数少ない要素のひとつでもある。
後に「∀ガンダム」の登場でファンから黒富野というジャンルが語られるにあたって、真っ先に名前が挙げられる作品である。その内容もこれまでのガンダムシリーズや富野作品の中でも出色の濃さで知られ、賛否両論な事でも知られる。
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本作ではこのような過激な内容が話題を誘うが、富野作品にアレな設定展開は付き物ではあるし、これら全てが問題というわけでもない。
まず、そもそも前述のSDガンダムの層を吸い上げようと意図していたのは、スポンサーのバンダイであった。放送開始前、サンライズはバンダイグループ傘下への身売りの準備を始めており、本作は企画された段階でスポンサーの影響が強かったことが分かる。事実、放送開始から翌年の1994年1月にサンライズはバンダイ傘下となり、上層部もバンダイ側から送り込まれた人間に一新されることになる。(ガンダムF91のTV版を没にして、わざわざ新しい企画を一からやり直す必要があったのも、その為であったとする説もある。)
一方、現場の富野監督は本作に関しては放送開始前からかなりのアイデアを練っており、ガンダムF91のTV版が没になったため披露出来なかった内容の一部や、SF思考を捨てて自然や宗教など、現代の抱える社会問題をテーマにするなど作品構想を放送開始前からアニメ誌で発表するなどしていて、(ZZの頃のように毎年監督をやっていなかったからかもしれないが)企画書の量は普段の倍近くあったらしく、富野監督にもやりたいことがしっかりとあったことが分かる。富野監督曰くギロチン、マリア主義、エンジェル・ハィロウは企画書の段階からあったものだという。
結局、それぞれの思惑は一つの番組では両方ともが成立しないままとなった。バンダイは難色を示したが、それ自体は何も富野監督がこれまで担当してきたTVアニメ制作の経験上この頃に始まったことではない。
しかし、バンダイは前述の通り立場上これまでより相当サンライズに介入する権限が強くなっていたらしく、冨野監督は放送開始直前に後述のようにバンダイの重役に呼び出され作品内容に手を加えられた挙句、これまで冨野監督が携わってきたアニメのスタッフなどが誰も集められていない現場だったこともあって、放送期間中には既に精神的に疲弊しきっていたようだ。まさに「終わりのないディフェンス(作詞:井荻麟=富野)」のように…。
しかし現実に絶望しヤケクソに見えるようなことを番組上でしていても、物作りにはとことんマジなのが冨野監督でる。スポンサーの要求を呑みながらも温めていた内容を終盤にまで展開。仕事上これまでより追いつめられた立場でありながら、かえってそういう現実が作品内容を良くも悪くもより濃いものにしてしまったと言われる。
おかげで子供向けアニメにしては描写が生々しく、真に迫るものがあった。監督自身、「本作は当時のサンライズのドキュメンタリーだったのでは?」という意見に対して「全くそうだったんですよ」と10年後のインタビューで語っている。
上記のサンライズ身売りの事情を冨野監督は放送終了間際まで知らず、それを知らされた瞬間、経営側の意図を知ったことや、長年仕事をしてきたサンライズに売り飛ばされた気持ちになり、より精神的に不安定になっていったという。そのため、放送開始当初と近年のインタビューとでは作品への批評にかなりの変容が見受けられる(ササキバラゴウ著「それがVガンダムだ」)。 またそういった個人的な経緯もあり、現在の富野監督は本作に関して、関わったスタッフの長所などは認めつつも、基本的に否定的な意見を述べることが多い。
が、それでも監督の見識とは裏腹にそこそこの人気は出たので、翌年には「ガンダム同士で殴り合い」というもっとぶっ壊れた設定を持つ『機動武闘伝Gガンダム』が生まれる事となる。富野監督は今川泰宏をGガンダムの監督に推薦し、TVアニメからは暫く姿を消す。(その間の様子はエッセイ「ターンエーの癒し」に詳しい)。
有名な逸話として、バイク戦艦に関して当時のスポンサーの偉い人に「戦艦を出せ」と言われた富野が「戦艦が地上で飛ぶならば、バイクだって空を飛んでもいいでしょう」と言ったところ「飛ばしてよ」、更に本当にバイク戦艦でいいのかと確認すると「かっこいいじゃないですか」と予想の斜め上の反応を示されてしまい、実質バイク戦艦を登場させねば降板させる、といった強権を発動をされてしまい、あの地球クリーン作戦が実行された、という経緯がある。
富野監督曰くこの事があったのは「コンテを4、5本切った1月」と『それがVガンダムだ』にて回顧しており、またこれを受けた富野監督が当時描き上げたタイヤメカのイメージラフボードには1993年2月・3月の日付が記してあることから、放送開始の直前とはいえ、現場では既に1クール目の準備が相当進んでいる頃であり、そういったものが序盤はドゥカー・イクらの戦闘バイク部隊の登場などに留まっていたことを裏付けている。
なお、同じくバイク兵器が作品内で登場しガンダムZZの後番組でもある「機甲戦記ドラグナー」には、没案としてバイク戦艦が既に存在し、同作のメカデザインと本作のバイク戦艦をデザインした人物が両者とも大河原邦男であることから、前述の富野監督の発言がこの事を知ってのことなのか、偶然なのかは定かではない。
しかし、相手はサイコガンダムを大真面目にΖガンダム案としていた人間なのだから、これじゃ自分から地雷を踏みにいったのと同j(ry
アニメの放映に併せて、当時コロコロコミックと人気を競ったコミックボンボンにおいて漫画が掲載された。
しかしこのコミックボンボン版、コミカライズを担当した岩村俊哉氏によって
富野監督もビックリの凄まじいアレンジが施されている。
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…と、例を挙げればキリがないほど、すがすがしいまでの原作無視っぷりである。
作者の名誉のために補足しておくが、コミカライズを担当した岩村俊哉氏は他にもゲーム版ガンダムF91の良質なコミカライズ等を担当しており、決して作者の力量が足りなかった訳ではない。
本編の陰鬱さを吹っ飛ばす勢いで爽快な活躍を見せるウッソや、TV版とは対照的にまともな活躍をみせるウッソの父親、カテジナがいないおかげで最後までライバルであり続けるクロノクルなど、ある意味TV版に対して挑戦的なまでのアレンジが施されている。
「ガンダム神話ゼータ―ガンダム新世代の鼓動」に載っている当時の編集長のインタビューによると、「TV作品のストーリーそのままでは、読者に対して難解だと思ったので、コミック版はオリジナルのものを変更した」との事。
ただのネタ漫画と思われがちではあるが意外と見所は多く、派手でわかりやすい必殺技を駆使しつつも戦争の悲惨さもきっちり描いており、展開の支離滅裂さに目をつぶれば、そこそこ見れる作品にはなっている。
近年のガンダムやロボットアニメ関連のゲームでは不遇な扱いを受けている印象が強い。特に宇宙世紀などの時間軸が再現されている作品の場合、最も未来かつ離れた時代であることが扱いを難しくしている面もある。
SFC時代は放映終了後もあってか作品単独でゲームが発売されたり、SDガンダムシリーズやザ・グレイトバトルシリーズそしてスパロボシリーズにも参戦していたりと、後のG、W程ではなくても割と良い扱いを受けていた。PSやSSの時代でもスパロボやGジェネシリーズでもしっかり参戦しており、特に不遇な扱いは受けていなかった。
PS2のGジェネNEOではルート分岐によってはVメインのシナリオがあり、V2ガンダム(特にアサルト、アサルトバスター)が破格の強さを誇る機体に化け、更には専用のMAP兵器デモとフロスト兄弟と死闘を演じるムービーが用意されてるなど、かなりの優遇を受けていた。(但し、シュラク隊が全員リストラされてる面もあるが…)
続編のSEEDではシナリオは一つしかないが、V2は弱体化の調整を怠ったのか相変わらずの強さを誇り、更には換装システムのおかげで簡単にアサルトバスターになれるというサービスまで受けている始末である。
なお「SDガンダムフォース 大決戦! 次元海賊デ・スカール!!」に登場する敵キャラクターのデザインもVガンダムのザンスカール帝国のMSが採用されている。
しかし「UCガンダム作品集大成」を謳い文句にしたクライマックスUCに完全スルーされてしまい、PS2から未だにスパロボにお呼びがかからない事とA.C.E.シリーズにも参戦していない事もあり、不遇を受けてるイメージが強く付き纏っている。特にクライマックスUCでスルーされた事実は強烈なインパクトを残した。
しかし、近年のガンダムゲームではVSシリーズや無双シリーズでも参戦するようになり、ゲスト参戦といえどアサルトサヴァイヴにも登場したりと徐々に持ち直している傾向にある。
1st - Z - ZZ - V - G - W - X - ∀ - 種 - 種運命 - 00 - AGE - BF - Gレコ
CCA - F91 - 0080 - 08 - 0083 - G-SAVIOUR - IGLOO - UC - ORIGIN
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最終更新:2025/12/23(火) 07:00
最終更新:2025/12/23(火) 06:00
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