費禕 単語


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費禕(費イ)、字は文偉は後漢~三国蜀の人物。劉備、劉禅の二帝に仕えた。

この記事の本来の表記は「費禕」ですが、「禕」の字が表記できないブラウザを考慮して、
「費禕(費イ)」と併記しています。

劉備~諸葛亮時代

江夏郡鄳県の出身。幼い頃に親を失い親戚の家で養われた。益州の牧であった劉璋とは遠縁にあたり、そのつてで益州へと遊学する機会を得た。後に劉備の入蜀があり、益州の主となった劉備に仕える事となる。友人の董允等と共に名声を等しくした。

劉禅の立太子にともない、董允と共に太子府に入り、太子舎人となり、後に太子庶子に昇進した。劉禅が即位すると、侍中府に名を連ね黄門侍郎となる。諸葛亮が南蛮遠征から帰還の時、出迎えた群臣から選ばれて車に同乗する待遇を受けて衆目を集めた。やがて昭信校尉に任ぜられ、諸葛亮が帰還したことを孫権に報告する為、呉への使者となった。

呉では悪戯者の孫権や、弁舌の士である諸葛恪たちの舌鋒をうけたが、費禕(費イ)は見事に受け答えたので、孫権から高く評価された。

呉から帰ると侍中に昇進し、諸葛亮が漢中に駐留すると要請され、参軍として随員した。行中護軍、偏将軍となり、後に司馬となった。

北伐軍での幕僚を務める一方、孫権に気に入られていたので呉への使者も何度か務めた。

諸葛亮の有力幕僚である楊儀と魏延の仲は非常に悪く、刃傷沙汰の手前まで及ぶことすらあった。費禕(費イ)は常に両者の間に立ち、間を取り持った。

諸葛亮没後

234年に諸葛亮が亡くなると、費禕(費イ)は楊儀に命じられて魏延の下に行き、魏延が遺命に背いて北伐の続行を目論んでいることを探り出した。費禕(費イ)は魏延に味方するふりをして楊儀の下へ逃げ帰った。魏延の叛意を知った楊儀は魏延に先んじて行動を起こし、結果、魏延は粛清された。

諸葛亮の亡骸を守り帰還すると、後軍師となった。

楊儀は、諸葛亮の後継者が自分ではなく、蒋琬となった事に不満を抱いていた。荒んで人を寄せ付けない楊儀を、費禕(費イ)だけは家を訪れて慰めていた。ある時、楊儀は諸葛亮亡き後の蜀軍ごと魏に亡命すれば良かったと愚痴をこぼした。これを聞いた費禕(費イ)は密かに上奏したので、楊儀は庶人に落とされた挙句、僻地に流された。後に獄に下され、自殺した。

蒋琬が漢中に赴くと、後任の尚書令となり、国務を司った。

243年、蒋琬が涪に戻ると、大将軍、録尚書事に昇進した。

244年に魏の曹爽が来寇した時には、諸軍を率いて前線への援軍となり防禦の指揮を行い、防備を固めた。その堅牢さに魏軍は補給の不備もあり撤退した。功績により成郷侯に封ぜられ、蒋琬が辞退した益州刺史も兼ねる事となった。

蒋琬没後

246年に蒋琬が亡くなると国政の第一人者となる、蒋琬没後は劉禅が親政したという史料もあるので、宰相というよりは主席閣僚に近い立場だったとも考えられる。

248年、漢中に赴いて国防を担当する。引き続き政務も行い、国の恩賞、刑罰は費禕(費イ)への諮問なくして決済される事はなかった。この頃から衛将軍、録尚書事の姜維は北伐ををたびたび行うようになった。費禕(費イ)は姜維に一万以上の兵を与える事はなく諌めた。丞相(諸葛亮)でさえ無理であった、丞相にはるかに及ばない我らに出来ようか、今は内政に専念して、軍事の天才が現れるのを待とうではないかと。

253年、駐屯地の漢寿で催された正月の大宴会で泥酔してるところを、魏の降人である郭循(魏の記録では郭脩)により刺殺された。敬侯と諡された。

その後

費禕(費イ)の死後、姜維を抑えられる人物はいなくなった。大将軍となった姜維は何度も遠征を行い、蜀の国力を消耗させていく。また、国政を担える賢相もいなくなった。

殺害犯である郭循は、見事な刺客と、魏で顕彰された。長楽郷公の追封と威侯の諡、領邑千戸を与えられ、息子も取り立てられた。当初は劉禅を狙っていたが、警護が厳しかったので費禕(費イ)が標的となったという。

息子の費承が後を継いだ。官は黄門侍郎となった。もう一人の息子の費恭は、尚書郎として名声があり、公主(姫)を娶ったが若くして亡くなった。長女は劉禅の皇太子劉璿の妃となった。晋の御世になって、かつて費禕(費イ)の部下であった文立は晋に仕えた。文立は諸葛亮、蒋琬、費禕(費イ)らの子孫は各地を転々しているので任命して用いるべきと上奏して採用された。

人物

蒋琬に次ぐ諸葛亮の後継者。四英、四相にも数えられ、蒋琬と並んで後期蜀の重鎮として活躍した。劉禅の側近、呉への外交官、諸葛亮の参謀としてキャリアを積んで大官に至った。国策としては専守防衛を旨とし、北伐には積極的ではなかった。

実務能力に長け、尚書令としての公務を朝夕でさばきながら、昼は客を招いて宴会、博奕を楽しんだ。理解力に優れ、一度見たものは人の数倍の速さで理解し、決して忘れる事はなかったという。後任の董允が真似たところ10日で仕事が滞り、これ程の差があるのかと嘆いたという。外交官として孫権達の無茶振りにも上手く対応し、国威を辱めることはなかった。蜀の外交官では鄧芝に次いで、孫権のお気に入りであったという。

董允とは同じ四英、四相と称えられ、若い頃からの友人であった。最初、両者は優劣付け難い俊英と思われていたが、次第に費禕(費イ)が抜きん出るようになった。
 
慎み深い性格で、蓄財もせずに、質素な生活を送っていた。張嶷からは、明け透けで人が良すぎる、降った者たちを信用しすぎている事を手紙で忠告されている。孟光から大赦令を行ったことを面前で批判された時は、恐縮してあやまるだけだった。

評価

諸葛亮は出師の表において、郭攸之、費禕(費イ)、董允の三人は先帝が遺した忠臣であり、彼等に大小の相談をして行えば間違いはないと奏している。死の間際には、蒋琬の次は費禕(費イ)に国務を継がせよと遺言したという。

陳寿は評で、費禕(費イ)は寛容で差別なく人を愛し、諸葛亮の路線を継承して国家を安定させたと賞賛した。しかし、暗殺された経緯から、公務以外での身の処し方を弁えていなかったとしている。裴松之は、私人としての脇の甘さは宰相としての功績を比べれば瑕にはならないと弁護している。 が、魏書の方の注釈では、郭循の事に触れて、費禕(費イ)は中程度の才能しかない宰相なのだから殺しても何の利益が魏にあろうか、郭循は全くの無駄死だと間接的に酷い事を書いている。

魏軍が攻めてきた時、出立前の喧騒中で費禕(費イ)は知人との碁の勝負に応じて沈着を示したという。後世では、
そんな事ができるのは大まかで、細かいことに気を配らないからだ、刺客に殺られるのは当然という批判もされた。

三国志演義

劉備の入蜀の際に投降した文官の一人として名前が出る。

史実とは違い、南蛮遠征に参加。逆に北伐では成都で劉禅の補佐を行いつつ本国と前線との使者を務めた。街亭の大敗で、自らを処罰したいとい諸葛亮の意向を汲み、漢中に赴いて諸将を説得する役目を担う。後に、丞相への復職を告げる使者にもなり、諸葛亮を説得している。

外交官として、孫権に認められた正史での逸話は語られていない。
 
劉禅が宦官の讒言を信じ、諸葛亮が前線より呼び戻された事件には、劉禅を諌めることが出来なかったとして、蒋琬と共に諸葛亮から叱責を受ける。

李厳の怠慢に対する処罰では、先帝以来の宿将だとして諸葛亮に取りなした。諸葛亮の臨終時には北伐軍の客となっていたので、魏延の反乱事件の鎮圧にも関与する事となった。姜維を諌める事も史実通り。諸葛亮亡き後の名相ぶりは描かれず、いつの間にかフェードアウトしている。『横山光輝三国志』では最後が描かれている。

補足

コーエー三國志シリーズにおける費禕(費イ)の一覧。 Ⅰ~Ⅳと次第に評価が上がり、Ⅴ以降は統率、知力、政治、魅力が高い、一国の宰相に相応しい能力なっている。Ⅴ、Ⅵの政治力はやりすぎのような気も。Ⅷはちょっとツケが回ったのだろうか。

一覧 統率 政治 陸指 身体 運勢
三國志 17 79 51 71 49
三國志II 24 83 82
三國志III 25 75 82 85 23 6
三國志IV 38 17 75 88 82
三國志V 55 77 96 81
三國志VI 72 26 73 97 80
三國志VII 28 86 94 84
三國志VIII 28 82 88 80
三國志IX 74 22 83 92
三國志X 73 29 84 94 83
三國志11 77 30 83 92 83
三國志12 77 30 83 92

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関連項目

  • 三国志の登場人物の一覧
  • 諸葛亮
  • 蒋琬
  • 董允
  • ブルーノ・フォン・シルヴァーベルヒ
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