恩人三部作とは、シェアード・ワールド『SCP Foundation』に登場するオブジェクト(SCiP)群である。
それぞれが個々にオブジェクト記事として成立しているが、それぞれの作品につながりが存在しており、作者がすべて同じgrejum氏であることから恩人三部作とまとめて呼称される。
SCP-147-JP
SCP-147-JP | |
基本情報 | |
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OC | |
収容場所 | サイト-8141 |
著者 | grejum |
作成日 | 2014年10月14日 |
タグ | 水棲 |
リンク | SCP-147-JP |
SCPテンプレート |
項目名は『この檻の外へ』。
SCP-147-JPはゼラチン質の身体をもつ、思考能力を持つヒト型の水棲生物であり、身長1.4m、体重21kgで未知の発話能力を持つ。腕に当たる部分には半透明の触手を持ち、それらを器用に扱うことが可能である。また発光をしていることがあるが、この発光そのものには特筆すべき異常はない。基本は水中で生活しているが、1-2時間程度なら陸上でも活動可能。
SCP-147-JPはSCP-147-JP-1に指定される12歳の少年との定期的な接触をすることで、財団に友好的になり、実験に協力的になる。この少年は非異常であるが、過去の虐待歴から大人への不信感・恐怖心を抱いており、SCP-147-JPにのみ心を開いている状況である。彼が財団にSCP-147-JPとともに保護された要因は、児童相談所の職員が、SCP-147-JP-1の元を訪れた際にSCP-147-JPが発見され、通報されたからである。このとき彼の父親は別の女性の家で寝泊まりしており不在だった。
少年いわく、SCP-147-JPは誰もいない空き家から見つけ出したという。その家はとある海洋学者の家であり、SCP-147-JPを監禁していたが、やがて帰らなくなったようだ。SCP-147-JPは少年のことは信用しており、彼のためなら何でもすると発言していた。
しかしSCP-147-JPは、ある日職員を麻痺させて水槽に戻ろうとしなくなった。当然そんなことをすれば自身の生命が危ない。財団は彼女を鎮圧しようとしたが、SCP-147-JPに倒されてしまう。更には、少年が説得のため投入されたが、それでも水槽に戻ることはなく、そのまま干からびて亡くなった。これにより財団は少年を収容しておく必要はなくなったとして、記憶処理を施したあと一般の児童養護施設に送致した。
ある博士は語る。彼女が亡くなる前、彼女は財団に少年を解放してくれと頼んでいたという。それはできないと回答すると「あの子は消防士になりたいと夢を語ってくれる。しかし今の彼はそれを目指すことすらできない。これは私のせいなのかもしれない。檻の中にいたからこそ、自由を奪われる辛さを知っている。私はあの子のお陰で一時的だが自由になれた。」と。
エージェント███: 他には何か言っていましたか?
█████博士: そしたら彼女は、自分があの子にしてあげられることは1つなんだ、と言っていたよ。
エージェント███: それが何なのか、心当たりはありますか?
█████博士: 心当たり? 私たちはそれを見たじゃないか。
SCP-147-JP - SCP財団,2022/06/09閲覧
SCP-243-JP
項目名は『恩人へ』。
既知のメーカーではない押しボタン式電話機であり、使用に際して電源もモジュラーケーブルもいらない。またなぜか破壊耐性がある。このオブジェクトは当初「壊れないが、元々壊れている電話機」としてAnomalousアイテム扱いされていたが、電話ができることがあると判明したことでオブジェクトとして認定された。
過去に命を救われた経験を持つ人物が受話器を持ち上げると、SCP-243-JPは持ち上げた者の恩人に繋がり、5分間だけ通話可能である。Dクラスを救った医師やライフセーバーにつながったりしたのを見て、財団の研究者は「もし恩人が亡くなっていた場合、この電話はどうなるのか」という実験を試みた。無論、つながるわけがないというのが大概の意見であった。
そして、15年前に自宅で火災が発生したさいに命を救われたエージェントが実験に参加した。彼女を救助した消防士はそのときの火傷が元で亡くなっている。――はたして、電話はつながったのだ。それはそれまでの実験では予想されていなかったことだった。現時点ではなく、なんと過去に電話がつながったのである。彼女を救助する直前の、その消防士にだ。
CK-クラス:再構築シナリオが起きる。それを危惧した他の職員は、エージェントに通話の中断をするように言うが、彼女はあろうことか、彼が数時間後に火災で█████(=エージェントの名前)という名の少女を救うことで命を落としてしまうことになると告げたのだ。結果としてCK-クラスイベントは起きることなく、エージェントはフロント企業への左遷が決定した。
彼女が武装警備員に連れて行かれる直前、別のエージェントは彼女の発言を聞いていた。炎の中で、消防士は彼女を助け出すとき、「大丈夫だぞ、█████」と言っていたこと。なぜ彼女の名前を知っていたのだろう、と。
私は今でもその時のことを考え、あの消防士のことを考える。CKクラスが起こらなかった原因はひとつだろう。あの消防士は自身に待ち受ける過酷な運命を知っていながら、少女を助けるために、火の中へ飛び込んだのだ。果たして、それにはどれほどの勇気がいるのだろうか。
SCP-243-JP - SCP財団,2022/06/09閲覧
SCP-998-JP
読んで字のごとく外宇宙からの通信電波。ただしここでいう外宇宙とは財団コミュニティの俗語表現としての第四の壁のこちら側の話ではなく、単純に地球外からという意味。相手からの通信電波は強力だが、地球から相手方に送る電波も相手は何かしらの能力で増大できるらしく、結果として相手であるペルセウス腕の惑星ノーゴの住民との円滑な交信が可能となる。彼らが最初に交信したのが日本の天文台であったため、ノーゴの使者は日本語を習熟していった。
だが、財団がノーゴの使者と交信する際、ノーゴ側が宇宙船で接近してきたことを理由に、財団と国連は最高機密扱いで「国連宇宙監視司令部(United Nations Space Surveillance Command)」(UNSSC)を結成、国連平和維持軍の人間が最高責任者となる。
やがてノーゴの船団には多数の大規模な戦闘用兵器と推測される装備が搭載されていることが確認された。するとUNSSC事務総長は先制攻撃を主張。各国が慎重論を主張すると、事務総長は自身に従わない職員を解雇し、身辺・UNSSC本部の警備を武装警備兵のみで行うことを決定した。そして、先制攻撃の準備を独断で強行し、いくつかの国の支持によって制裁措置・自身の退任を否決させると、財団サイドのUNSSC職員を監視するなどして反対意見を潰しにかかる。
しかし、財団エージェントのひとりが事務総長のもとにノーゴの船団についての重要な報告があると来訪する。そのエージェントがジャケットの内側に手を伸ばすと、銃を取り出そうとしたと勘違いした事務総長は武装警備員に命じエージェントを射殺する。しかし実際には彼が持っていたのは封筒に入ったUNSSCの退職届であった。これにより、事務総長は過剰防衛を行ったとして国際刑事裁判所への出廷を要求され、攻撃は1週間延期された。
これとともに惑星ノーゴの船団もまた、「小規模な反乱の発生を理由に母星へと一時的に帰還する」というメッセージを送信し、それ以後は通信途絶となった。船団は遠くに移動し、UNSSCの攻撃可能範囲を超えたため攻撃は中止。本オブジェクトはNeutralized扱いとなり、UNSSCは解体された。
先述のエージェントはどうやら惑星ノーゴの船団に乗ったゼメルアなる女性と度々無許可の通信(その多くは互いの星に関する他愛も無い会話である)を行っていたようだ。惑星ノーゴの船団が兵器を積んでいたのは、ノーゴサイドの責任者『ネイルード』が地球を先制攻撃しようとしていたから。しかし、地球人類もノーゴ住民もその大半は星間戦争など望んでいない。ゼメルアはネイルードを止めるため1週間の猶予が欲しいとエージェントに申し出る。それを聞いたエージェントは、自身の命をベットして一世一代の賭けに出たのであった。見事賭けは成功し、ノーゴサイドがネイルードを退陣させるための時間を稼いだ。星間戦争は回避されたのだ。
+:ネェ█████、全部終わっタラ マタ私と話してクレますか?
-:もちろんさ
-:[入力待ち]
-:それじゃあゼメルア、成功を祈ってる また、いつかどこかで
+:じゃあマタ、█████。 いつか、どこかデ
SCP-998-JP - SCP財団,2022/06/09閲覧
3つのストーリーのつながり
あるところに、父親に虐待される少年がいました。少年は父親に暴行されていたうえ、父親は別の女性の家で寝泊まりしていたため、家に帰ってもひとりぼっちでした。
少年はある日好奇心から、山奥の空き家に侵入します。するとその家の風呂場に、触手を生やした水棲の妖精が監禁されていました。少年は妖精を解放し、家に匿いました。
やがて妖精は財団の耳に入り、少年とともに財団に保護されました。妖精は少年が好きだったので、彼が夢である消防士になる未来がこのままだと絶たれると思いました。そこで彼女は自分が死んでしまえば少年を解放できると、水槽から飛び出したのです。
妖精が亡くなり、少年も彼女を忘れ児童養護施設に入所しました。
やがて彼は念願の消防士になり、人々の命を助けていました。そんなある日、彼のもとに、女性から電話がかかってきました。その女性はこれから彼が行く火災現場で、彼が少女を救い出すもその代わりに亡くなることを告げられました。電話の主は未来のその少女だったのです。彼女は自分が救われる代わりに恩人が亡くなることを拒み、自分を助けないでくれと言っていたのです。
しかし電話を終えたあと、彼は自身が死ぬことを理解した上で、迷いなくその少女を救うため、火の中に飛び込んでいったのです。
少女は母親になり、息子に自分を救って亡くなった勇敢な消防士の話を語って聞かせました。
その息子は成長し、母親と同じ職に就き、その職場で宇宙人とこっそり交流するのを楽しんでいました。しかし地球ではその宇宙人を先制攻撃せよと組織のトップが叫んでいました。相手の宇宙人もまた、自分の船団のトップが地球を攻撃しようとしていると嘆いていました。宇宙人は、こちらのトップを止めるために1週間の猶予がほしいと言いました。そこでそれを聞いたエージェントは、時間を稼ぐことを約束すると、死を確信しながらも組織のトップのもとに辞表を叩きつけに行きました。
余談
- 執筆順はSCP-243-JP→SCP-998-JP→SCP-147-JPの順である。
- toki_amo氏によって書かれたTale『お別れの教科書』『巡る先』『きっとどこかで、そしてどこかに、』が存在する。恩人三部作を読む上で読んでおくべきTaleと名高い。順にSCP-147-JP、SCP-243-JP、SCP-998-JPを主題としたTaleとなる。こちらはgrejum氏とは逆順(『お別れの教科書』→『きっとどこかで、そしてどこかに、』→『巡る先』)に執筆されている。このため、SCP-147-JPとSCP-243-JPのつながりがよりわかりやすくなっている。
関連動画
オブジェクト
Tale
関連コミュニティ・チャンネル
関連リンク
- SCP-147-JP - SCP財団
- SCP-243-JP - SCP財団
- SCP-998-JP - SCP財団
- お別れの教科書 - SCP財団 - toki_amo氏が書いたSCP-147-JPのTale。
- 巡る先 - SCP財団 - toki_amo氏が書いたSCP-243-JPのTale。
- きっとどこかで、そしてどこかに、 - SCP財団 - toki_amo氏が書いたSCP-998-JPのTale。
関連項目
- SCP Foundation
- 自己犠牲
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- 0pt