死の組(英:Group of Death)とは、主に予選でリーグ形式をとる大会にて、有力な強豪チームが多数同じグループ(組)に集中することを指す言葉。
言葉の発祥はFIFAワールドカップ(以降、「ワールドカップ」「W杯」と表記)のグループステージで、この「死の組」という言葉もW杯グループステージについて用いられることが多いため、以下ワールドカップにおける事例を述べる。
なお、言葉自体はバスケットボールやラグビー、クリケットの国際大会においても用いられることはある。
※この項目では「予選」という言葉は、原則大陸別の出場国選定の大会に限定して用いています。
概要
ワールドカップにおいては、「出場国を4か国ずつにグループ分けし、総当たり形式での予選(グループステージ)を行い、成績上位2か国が決勝トーナメント(ノックアウトステージ)進出」という大会形式をとっている。このグループステージの抽選の地点からどのチームがどの組に入るのか、ということは世界中の大きな耳目を集める。
このグループステージにおいて毎大会1グループほど、2か国以上の強豪が同じグループに組まれることがある。こういったグループが「死の組」と呼ばれている。
こういった強豪ひしめく中に放り込まれた力が劣るチームは強豪国の噛ませ犬、草刈り場となることが大半ではあるものの、いざジャイアントキリングが起きると勝ち点勘定が狂い、グループステージ情勢を混沌化させることもあるため、対戦国からは「侮れない」という評価を下されることもある。
ワールドカップのグループリーグの組み合わせ抽選方式について
ここでは、2022 FIFAワールドカップにおける事例を用いる。今回の抽選方式は、
この形式により割り振られた結果は以下の通り。※プレーオフはPOと省略。後に欧州2次POAはウェールズ、アジア対南米POはオーストラリア、北中米カリブ対オセアニアPOはコスタリカが勝者となっているが、2022年4月1日の抽選会の地点では勝者が未確定のため割愛している。
ポット1 | ポット2 | ポット3 | ポット4 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
国名 | ランク | 国名 | ランク | 国名 | ランク | 国名 | ランク |
カタール | 51 | メキシコ | 9 | セネガル | 20 | カメルーン | 37 |
ブラジル | 1 | オランダ | 10 | イラン | 21 | カナダ | 38 |
ベルギー | 2 | デンマーク | 11 | モロッコ | 23 | サウジアラビア | 46 |
フランス | 3 | ドイツ | 12 | 日本 | 24 | エクアドル | 49 |
アルゼンチン | 4 | ウルグアイ | 13 | セルビア | 25 | ガーナ | 60 |
イングランド | 5 | スイス | 14 | ポーランド | 26 | (欧州2次POA勝者) | ? |
スペイン | 7 | アメリカ合衆国 | 15 | 韓国 | 29 | (アジア対南米PO勝者) | ? |
ポルトガル | 8 | クロアチア | 16 | チュニジア | 35 | (北中米カリブ対オセアニアPO勝者) | ? |
その上で、同地域の重複が起こらない(欧州は2チームまで同一グループに入れることが可能)という原則のもと各ポットからグループA~Hの割り当てを決定していく。その結果、グループステージの組み合わせは以下の通りとなった。
グループA | グループB | グループC | グループD | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
国名 | ランク | 国名 | ランク | 国名 | ランク | 国名 | ランク |
カタール | 51 | イングランド | 5 | アルゼンチン | 4 | フランス | 3 |
エクアドル | 49 | イラン | 21 | サウジアラビア | 46 | (アジア対南米PO勝者) | ? |
セネガル | 20 | アメリカ合衆国 | 15 | メキシコ | 9 | デンマーク | 11 |
オランダ | 10 | (欧州2次POA勝者) | ? | ポーランド | 26 | チュニジア | 35 |
グループE | グループF | グループG | グループH | ||||
国名 | ランク | 国名 | ランク | 国名 | ランク | 国名 | ランク |
スペイン | 7 | ベルギー | 2 | ブラジル | 1 | ポルトガル | 8 |
(北中米カリブ対オセアニアPO勝者) | ? | カナダ | 38 | セルビア | 25 | ガーナ | 60 |
ドイツ | 12 | モロッコ | 23 | スイス | 14 | ウルグアイ | 13 |
日本 | 24 | クロアチア | 16 | カメルーン | 37 | 韓国 | 29 |
この上の表の通り、グループEに割り振られた日本は、グループステージで「無敵艦隊」ことスペイン、W杯優勝4回のドイツと対戦することとなり、日本国内では「グループEは死の組」と報道された。ただ、世界的には「スペインとドイツが順当に進出するだろう」「死の組とは有力国が3か国以上同じグループに集まってはじめて言われることだ」という識者の見解もある[1]。
2014年のブラジル大会までは過去のFIFAランキングやW杯の成績をもとにしたシードを設定したりはしていたが、基本的にはその国が加盟する大陸サッカー連盟を基準に組み合わせ抽選のポットを分けていた。これにより毎大会のように強豪国が同グループで鉢合わせする「死の組」が出現してはグループステージで姿を消すなどの大番狂わせが起きていたが、2018年ロシア大会以降は大陸や過去成績に関係なく抽選会地点でのFIFAランキングを基準として抽選ポットが決まるようになったため、以前ほど極端な死の組は発生しづらくなっている。
具体的な死の組の事例
1970年大会・グループ3
「死の組」という言葉の由来となったグループ。
このグループ3でイングランドとブラジルが揃い踏み。そればかりでなく前回準優勝国のチェコスロバキアまでこの組に組み入れられ、もう1つの国であったルーマニアにとってはまさに絶望的展開。これを開催地・メキシコの記者が的確に喩えた言葉が「死の組」、スペイン語で「Grupo de la Muerte」である。これがイングランド国内で取り上げられた結果、各国語に訳され定着していったという。
順位 | 国名 | BRA | ENG | ROU | CSK | 勝点 | 得失差 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ブラジル | BRA | ○1-0 | ○3-2 | ○4-1 | 6 | +5 | |
2 | イングランド | ENG | ●0-1 | ○1-0 | ○1-0 | 4 | +1 | |
3 | ルーマニア | ROU | ●2-3 | ●0-1 | ○2-1 | 2 | -1 | |
4 | チェコスロバキア | CSK | ●1-4 | ●0-1 | ●1-2 | 0 | -5 |
※当時は勝利勝ち点が2
2002年大会・グループF
大会史に残る伝説的死の組として度々挙げられるグループ。
フォークランド紛争と1986年大会ベスト8以来の因縁の相手同士であるイングランドとアルゼンチン、イングランド監督エリクソンの母国スウェーデン、そしてアフリカ最強ナイジェリアがグループリーグで激突することに。6試合中引き分けが3つという大接戦となり、2強相手に引き分けて地力が一段落ちるナイジェリアから勝ちを拾う理想的なリーグ戦の勝ち方をしたスウェーデンが1位通過。2位通過はアルゼンチンからデビッド・ベッカムのPKで奪った1点を守り切って勝ち点3を手にしたイングランド。優勝候補との声も高かったアルゼンチンはまさかのグループリーグ敗退と相まった。
順位 | 国名 | SWE | ENG | ARG | NGA | 勝点 | 得失差 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | スウェーデン | SWE | 1-1 | 1-1 | ○2-1 | 5 | +1 | |
2 | イングランド | ENG | 1-1 | ○1-0 | 0-0 | 5 | +1 | |
3 | アルゼンチン | ARG | 1-1 | ●0-1 | ○1-0 | 4 | 0 | |
4 | ナイジェリア | NGA | ●1-2 | 0-0 | ●0-1 | 1 | -2 |
2010年大会・グループG
世界的強豪であるブラジルとポルトガル、ディディエ・ドログバやトゥーレ兄弟を擁するアフリカの雄コートジボワールに加え前回ベスト8の大番狂わせから44年ぶりの本大会となった北朝鮮が同居するグループに。
結果はブラジルが他国を圧倒。コートジボワールもポルトガルに引き分け、敗退こそしたものの2位争いに持ち込むなど善戦した。北朝鮮は「炭鉱スコア(PRT 7-0 DPK)」など案の定ボーナスゲームと化したがブラジルから1点を捥ぎ取るなど弱いなりに実力を見せつけた。
順位 | 国名 | BRA | PRT | CIV | DPK | 勝点 | 得失差 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ブラジル | BRA | 0-0 | ○3-1 | ○1-2 | 7 | +3 | |
2 | ポルトガル | PRT | 0-0 | 0-0 | ○7-0 | 5 | +7 | |
3 | コートジボワール | CIV | ●1-3 | 0-0 | ○3-0 | 4 | +1 | |
4 | 北朝鮮 | DPK | ●1-2 | ●0-7 | ●0-3 | 0 | -11 |
2014年大会
この大会は複数のヨーロッパの有力国がシード入りに必要なFIFAランキング上位8か国に入れずシード漏れしたことから、多数の死の組が発生、さらにかませ犬扱いされたチームの活躍でこういった有力国が多数グループステージで散った。結果として翌2018年大会以降のグループステージ組み合わせ抽選のシステム大改編に繋がることになる。
グループB
前回の決勝戦で戦ったスペイン・オランダがグループステージで顔を合わせる衝撃の展開に。これに加えて南米の隠れた強豪チリが同じグループとなった。
その前回決勝戦リベンジマッチはなんとこのグループステージの初戦に組まれ、後半一気の追い上げでオランダがスペインを粉砕。これでケチがついてしまったのか、スペインは続くチリ戦にも敗れてグループリーグ敗退となった。
順位 | 国名 | NED | CHI | ESP | AUS | 勝点 | 得失差 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | オランダ | NED | ○2-0 | ○5-1 | ○3-2 | 9 | +3 | |
2 | チリ | CHI | ●0-2 | ○2-0 | ○3-1 | 6 | +7 | |
3 | スペイン | ESP | ●1-5 | ●0-2 | ○3-0 | 3 | +1 | |
4 | オーストラリア | AUS | ●2-3 | ●1-3 | ●0-3 | 0 | -11 |
グループD
優勝経験のあるウルグアイ・イタリア・イングランドがかち合ったグループ。しかし、この中に放り込まれては…と思われていた「草刈り場」コスタリカがウルグアイに逆転勝ちしたのをきっかけに快進撃を見せ、イタリアにも勝ちなんとこのグループ首位でグループステージ突破。イタリアとイングランドがグループステージで姿を消す大番狂わせとなった。
順位 | 国名 | CRI | URU | ITA | ENG | 勝点 | 得失差 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | コスタリカ | CRI | ○3-1 | ○1-0 | ○0-0 | 9 | +3 | |
2 | ウルグアイ | URU | ●0-2 | ○2-0 | ○3-1 | 6 | +7 | |
3 | イタリア | ITA | ●1-5 | ●0-2 | ○3-0 | 3 | +1 | |
4 | イングランド | ENG | ●2-3 | ●1-3 | ●0-3 | 0 | -11 |
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関連項目
- サッカー / FIFAワールドカップ
- サッカーイングランド代表 / サッカーブラジル代表(死の組にはこの両国が絡むことが多い)
- 炭鉱スコア
脚注
- *なお、結果は1位から順に日本・スペイン・ドイツ・コスタリカ(PO勝者)だった。しかし、第3節では試合展開が目まぐるしく動いたこともあり途中日本やスペインも敗退する可能性があったと死の組といっても過言ではない状態になっていた。
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