ストルティングラ(Storthyngura)とは、深海性の甲殻類の仲間である。
Storthyngulaと書かれていることがあるが、Google検索でのヒット数も少なくスペルミスではないかと思われる。
概要
「ストルティングラ」は等脚目ミズムシ亜目ウミミズムシ上科アシナガミズムシ科[1](ムンノプシス科)Storthyngurinae亜科Storthyngura属の種の事を指すが、どうやらRectisura属、Storthyngurella属、Sursumura属、ウミコロギス属[2](Vanhoeffenura)といった別の属の種もかつてはStorthyngura属に含まれていたようで、現在「ストルティングラ」「Storthyngura」「Storthyngula」とGoogle検索した際に出る画像・情報はそれら別の属に移された種(特にRectisura属やウミコロギス属)が元になっているものが多く含まれている。ややこしい。
以上の事から、当記事ではStorthyngurinae亜科に属する種を「ストルティングラの仲間」「ウミコロギスの仲間」として解説する。
解説
長々と分類やら名称やらについて書いたが、要するにダンゴムシやグソクムシの仲間である。ただ、ミズムシ亜目の名の通り、ダンゴムシやグソクムシよりはミズムシに近い「深海性ミズムシ類」の一員。
真っ白な体をしており、ダンゴムシやグソクムシとは違い、脚や触覚が長くまるで昆虫のようなフォルムをしている。深海底に落下する生物の死骸や僅かな有機物を食べる。殆どの魚、エビやカニが生きられないような海溝の奥深く、水深6000mを超える超深海でも見つかる剛の者だが、詳しい生態はよく分かっていない。
ちなみに、「コロギス」というのはコオロギとキリギリスを足したような姿の昆虫のこと。等脚目(等脚類)の甲殻類にはウミクワガタやウミセミ、ウミナナフシなど昆虫の名前がついたグループが他にも存在する。
種類
2020年11月時点ではStorthyngurinae亜科には6つの属が認められている[3]。また、Storthyngura属には13種が含まれる[4]が日本語の情報があまりにも無いため割愛する。
以下、過去にStorthyngura属に分類されていた種の一部を挙げる。
- Vanhoeffenura chelata ウミコロギス
ウミコロギス属。体長4cm。西部北太平洋海溝部の水深5000~6860mに生息[5]。国立科学博物館の特別展「深海」―挑戦の歩みと驚異の生きものたち―[6]で標本が展示された。
かつての学名はStorthyngura chelata。 - Vanhoeffenura bicornis
ウミコロギス属。体長4cm。日本海溝の水深6070~6207mに生息[7]。国立科学博物館の特別展「深海2017~最深研究でせまる”生命”と”地球”~」[8]で「ウミコロギス属の1種」として標本が展示された。
かつての学名はStorthyngura bicornis。 - Rectisura vitjazi
Rectisura属。千島・日本海溝の水深8330~8430mから採集され、これはミズムシ亜目の日本近海の最深記録[9]。
かつての学名はStorthyngura vitjazi。 - Rectisura herculea
Rectisura属。体長5cmを超える[10]。
かつての学名はStorthyngura herculea。
アシナガミズムシ科について
Storthyngurinae亜科が含まれるアシナガミズムシ科(ムンノプシス科)の等脚類(Munnopsid isopods)は深海で多様化しており、9亜科42属約320種が知られている。
また、アシナガミズムシ科には長い脚を広げて海中を泳ぐ種も多く知られており、映像もしばしば撮影されている。
関連動画
関連商品
関連リンク
- Storthyngura - Biological Information System for Marine Life

- Vanhoeffenura - Biological Information System for Marine Life

関連項目
脚注
- *下村通誉, 2016. 日本産ミズムシ亜目の分類(J-STAGE)

- *特別展「深海2017」-DEEP OCEAN- ~最深研究でせまる”生命”と”地球”~(NHKプロモーション) p53
- *WoRMS - World Register of Marine Species - Storthyngurinae Kussakin, 2003

- *WoRMS - World Register of Marine Species - Storthyngura Vanhöffen, 1914

- *特別展「深海2017」-DEEP OCEAN- ~最深研究でせまる”生命”と”地球”~ p52
- *特別展「深海」 挑戦の歩みと驚異の生きものたち- 国立科学博物館

- *特別展「深海2017」-DEEP OCEAN- ~最深研究でせまる”生命”と”地球”~ p53
- *特別展「深海2017~最深研究でせまる”生命”と”地球”~」(2017年7月11日(火)~10月1日(日))-国立科学博物館-

- *下村通誉, 2016. 日本産ミズムシ亜目の分類
- *同上
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