ニィス(NIS)とは、日本のタイプファウンドリーである。
株式会社エヌアイシィ(長竹産業グループ)へ編入合併し会社としては解消しているが、同社フォント開発事業部門のブランドとして存続している。
概要
「日本情報科学」という商号で、1970年7月29日に伊藤晃によって創業。
1983年、日本で初めてパソコン用のアウトラインフォントの独自開発に成功。日本ビクターや三井物産に対してOEM納入を行った。この際、活字書体の使用権を取得し利用していたが、より高品質な書体をと1988年より書体デザイナーに新規に書体制作の依頼をするようになった。
そうして生み出された書体はソフトウェアへ搭載されたほか、PC向けのフォントパッケージ製品として販売が始められることとなる。この際、フォントのブランド名について、日本情報科学の英語商号であった「Nippon Information Science」の頭文字を取って「NIS Font(ニィスフォント)」とした。1996年11月には商号も「ニィス株式会社」に変更された。
パッケージ製品では、商用利用が可能な製品のほかに、安価に多くの書体を一部商用利用できる「宇多楽」、個人利用限定で品質を落とした「まる徳フォントパック」などの廉価版パッケージを展開。まだ書体の出揃っていなかったDTP黎明期において、豊富なデザイン書体を揃えていたニィスフォントは重宝され、ダイナフォントなどと共に2000年代にかけて、印刷物やテレビテロップなど非常に幅広い場面で用いられた。同人活動での利用にも人気があった。
2007年からは「年間フォントレンタル」を開始。これにより、価格に応じてまとまった数の書体を(映像などの一部条件を除いて)商用利用できるようになった。
その後、会社は2011年に長竹産業グループの傘下に入り、2013年にグループ再編に伴ってグループ企業と合併、エヌアイシィ株式会社(NIC)の一部門「フォント開発事業部」となった。なお、この「NIC」はNagatake Industries Companyの略なので、字面の似ているNIS・ニィスの社名とのつながりはない。
近年は商業利用に対して高額の追加料金が必要などの厳しいライセンスや、他社に比較して少ない対応字数、書体リリース数の減少などが枷となり、よりライセンスなどが使いやすい他のタイプファウンドリーに顧客が流出している。
それを受けてか2017年にはサービスの刷新を行い、フォントパッケージの販売を終了する一方、製品レンタルサービスをサブスクリプションサービス「NIS Ticket」として一部条件を緩和したり、またユニバーサルデザインを謳ったNIS_UDゴシックという書体をリリースするなどしている(しかし映像などでの商用利用条件についてはいまだに厳しく、高めの契約料金が発生している)。
新書体のリリースは少なくなっているが、それでも訴求力の優れた書体は多く、熟れたデザイナーの根強い支持を得ている。
代表的な書体
- S明朝
- 広告デザイナーの関征春によって制作された、フラッグシップのオールド明朝体。
- 筆の運びと形が意識された「ソフト」、文字幅を一定とした「ハード」という仮名違いがある。
- それぞれ、W3〜W9までの7ウェイトで構成されている。
- JTCじゃんけんU
- 線は均一だが手書き系の骨格を持つ、ポップ体に分類されるデザイン書体。
- 2000年前後の紙面で特に人気を博していた。
- 仮名が漢字よりも小ぶりで、文字を詰めた際のまとまりが感じられる書体である。
JTCウインシリーズ
モリサワ「じゅん」などで知られる書体デザイナーの三宅康文氏に委嘱し制作された、ニィスフォントでも代表的な書体群。
- JTCウインS
- モダンでシンプルなゴシック体。併せて用いられる「ウインクスL」などの仮名書体が有名。
- 1、3、4、6、7、8、10の7ウェイトから成るファミリー。
- より細くした「JTCカル」という書体もある。
- JTCウインM
- 従来のものに比べエレメントが角ばっており直線的な明朝体。
- 1、3、5、7、8、9、10の7ウェイトで構成されている。
- JTCウインR
- JTCウインSの骨格をそのままに丸くしたようなモダン丸ゴシック体。
- 1、4、7、8、10の5ウェイトで構成されている。
- JTCウインZ
- 直線のみで構成された斬新なデザインゴシック書体で、ニィスフォントの中でも特に人気が高い。
- 1、5、10の3ウェイトがある。
- また、明朝体を元にした「JTCウイン ZM」も存在する。
関連リンク
関連項目
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