現住建造物等放火罪(げんじゅうけんぞうぶつとうほうかざい)は、人が現に住居に使用しているか、または現に人のいる建造物等(建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑)を放火により焼損させることを内容とする犯罪である(刑法108条)。
なお、未遂罪(刑法112条)、予備罪(刑法113条)が存在する。
条文
用語の説明
現住建造物等放火罪が適用される要点・解釈上の問題として4点ある。
である。
1.現に人が住居に使用し
犯人以外の人が起臥寝食の場所として日常使用していることをいう。つまり放火した犯人のみが住居する場所では適用されない。
2.現に人がいる
放火の際に、犯人以外の人がその場に居あわせることをいい、居住者全員を殺したうえで家屋に放火する場合には、放火については非現住建造物等放火罪(刑法109条)が適用される。
3.建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑
| 建造物 | 土地に定着する建築物であり、屋蓋を有し、牆壁や柱材によって支持され、また少なくともその内部に人が入れるものを指す。 |
| 汽車 | 蒸気機関車に車両を牽引させることにより、軌道上を走行する交通機関を指す。 |
| 電車 | 電力により軌道上を走行する交通機関を指す。 |
| 艦船 | 軍艦および船舶を指す。 |
| 鉱坑 | 鉱物を採掘するために設けられた地下施設を指す。 |
4.焼損
本罪は条文上「焼損」をもって既遂に達する。「焼損」の意義については、保護法益との関係で以下のような学説の争いがある。
- 独立燃焼説
- 火が媒介物を離れて目的物に燃えうつり、独立に燃焼を継続する状態になることが「焼損」であるとする。独立の燃焼が開始すれば公共の危険の発生には十分である、という点を根拠とする。放火罪の公共危険罪としての側面を強く意識した結果、最も早い時点で既遂を認める学説(従来からの独立燃焼説)であり、他説(燃焼継続可能性を重視する独立燃焼説)からは放火罪の財産犯的側面を無視するものであるという批判を受ける。なお判例は一貫して独立燃焼説を採っている。
- 簡単にまとめると以下の2点である。
- (A)建物自体に火が移って燃え始めれば既遂罪に問われる。それ以前の場合は未遂罪となる。(従来からの独立燃焼説):通説
(B)建物自体に火が移って燃え続けられる状態になれば既遂罪に問われる。それ以前の場合は未遂罪となる。(燃焼継続可能性を重視する独立燃焼説):少数派意見
- 効用喪失説
- 目的物の重要部分が焼失し、その本来の効用を喪失することが「焼損」であるとする。財産的価値がその時点で失われることを根拠とする。つまり、独 立燃焼説とは逆に、放火罪の財産犯的側面を強調する学説であり、その結果最も遅い時点で既遂を認めることになる。必然的に他説からは、放火罪の公共危険罪 的側面を無視するものであるという批判を受ける。
- 燃え上がり説
- 目的物の重要部分が燃えはじめ、容易に消すことができない状態になることが「焼損」であるとする。公共危険罪的側面と財産犯的側面を両方加味した結果、既遂時期も独立燃焼説と効用喪失説の中間に位置する学説である。
- 毀棄説
- 毀棄罪の基準により、火力によって目的物が損壊することが「焼損」であるとする。
なお、1989年7月7日の最高裁判所第2小法廷判決においては、エレベーターの壁約0.3平方メートルを焼損しただけでも、この犯罪の構成要件に該当すると判示された。
結論
犯罪はよくない
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参考文献
関連項目
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