ほほう? お前さん、「老人語」について知りたいのか。老人語というものはじゃな……。
のどちらかを言うのじゃよ。2.は「死語」と似たような感じかもしれんのう。
1.はつまり、語尾に「~じゃ」「~だのう」と付けたり、一人称として「わし」を使ったり、「~している」「~してる」のかわりに「~しておる」と言ったりする喋り方のことじゃな。この記事ではこちらの方について説明しようかのう。
概要
小説・漫画・アニメ・ゲームなどで老人が登場するときに、よく使っておる言葉遣いじゃのう。こういう喋り方をする老人キャラクターを一人や二人は思いつくじゃろう?
こういう、「フィクション作品のなかでキャラクターが『ある役柄』である」ことをよく示す言葉遣いのことを、日本語研究者たちは「役割語」とも言ったりするのじゃ。老人語の他にも「田舎者」とか「お嬢様」(これは「お嬢さまことば」の記事もおすすめじゃ)とか、変わったところだと「忍者」にも「役割語」があるらしいのう。
「博士」キャラクターが使うことが多いことに着目して、「博士語」と表現する日本語研究者もおるぞ(正確には、「老人語」と別の役割語「書生語」が混じったものが「博士語」であるそうじゃ)。その研究者は「金水敏」というのじゃが、「役割語」についての著作をいろいろ書いていて有名じゃな。この記事の「関連商品」にその金水敏が執筆した本を何冊かおいておくぞい。
年寄りとあまり接することが無いせいで、「お年寄りは本当に自分の事を「わし」と言ったり語尾に「~じゃ」とつけてるんだろうなあ」とか思っている子がおるかもしれんのう。じゃがのう……基本的には、リアルの老人はこういう喋り方はしないのじゃよ。あくまでフィクションの中の喋り方だと思っていた方がいいのう。
あるいは、「昔の日本人はこういう喋り方をしていて、お年寄りは若い頃の喋り方をそのまま使ってるからこういう喋り方になるんだろうなあ」と思っている子もおるかもしれんな? でも、今生きている老人が若者だった頃の日本でも、「こういう喋り方が標準だった」なんてことはないぞい。老人が若い頃に作られた、時代設定が当時の「現代」になっている映画などを見てみるとよいかもしれんのう。そこに登場する若者が老人語を使っているなんて事は無いはずじゃ。
金水敏に代表される日本語研究者たちが言うことには、江戸時代後期に、江戸の町人の普通の話し方として急速に広まってきた「江戸語」(その後の「標準語」の元)に対比する形で、当時権威を持っていた「上方語」(京都・大阪の言葉遣い)が老人の言葉としてフィクション中で扱われるようになったそうじゃ。つまり「老人語をお年寄りが使っていたのは江戸時代の話」と言えるかもしれんのう。
ちなみに、地方によっては「方言」として自分の事を「わし」と言ったり、「~じゃ」と語尾に付けるところはあるのう。じゃが、そういう地方では若者だって方言として「わし」を使うし「~じゃ」と語尾に付けるんじゃ。それにそういう地方の方言はもっと色んなところで標準語との違いが多いからのう。「方言」と「老人語」は一部に共通する部分があっても、あくまで別ものということじゃな。なお、そういった方言もさっき話した「上方語」と源を同じくするらしいぞい。
ところで、こうして話しているわしが男か女かわかるかのう? 「老人語」は男でも女でも一人称が「わし」で済ませられてしまうので、男女の話し方があまり区別されないことも特徴のひとつなのじゃ。少女の容姿をしたキャラクターにあえて「老人語」を喋らせる例は多くて、「のじゃロリ」といったキャラクター類型にもなっておるのう。
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関連項目
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