おませのせいで死んだのだとは (オマセノセイデシンダノダとは) [単語記事]

おませのせいで死んだのだとは、死んだのはおませのせいであるという事である。

概要

漫画「ジョジョの奇妙な冒険」Part7スティール・ボール・ランに登場する、ジョージ・ジョースター(SBR)の台詞…ていうか誤植。ウルトラジャンプ 2008年 2月号に掲載された#34 追憶の館③(単行本掲載時：#58 シビル・ウォーその③)に登場する。

奪われた『聖人の遺体』をホット・パンツから取り返す為、ある町のゴミ捨て場にされている建物に追い詰めたジョニィ・ジョースターとジャイロ・ツェペリだったが、そこで待ち受けていたファニー・ヴァレンタイン大統領の刺客「アクセル・RO」のスタンド攻撃を受ける。

アクセル・ROのスタンド能力「シビル・ウォー」は相手がその人生で過去に捨てて来たものを質量のある幻覚として全て提示する能力で、その幻覚に触れると薄い膜のようなもので包まれてしまうと同時に触れた幻覚に纏わる罪悪の記憶を呼び起こして心を折り、肉体的にも精神的にも動けなくしてしまう。この効果は清潔な水で洗い流せば回避できるが、精神的な攻撃は攻撃された者にとって最も深いダメージとなり、特にその人間が捨て去って来た「人間」は言葉でも追いつめてくる。

ジョニィの目の前に現れた白いネズミの幻覚は、過去にペットとして飼っていた「ダニー」であるが、父の言いつけを破った罰で溺れさせて始末するように言われたのを兄のニコラスの助け舟で標本とすり替えて森に逃がし、それが遠因となってニコラスの落馬の事故死を引き起こしたジョニィの大きなトラウマである。精神的な意味もあるが、すばしっこく物陰から物陰に移動し迫ってきているので本体に迫る前に倒す必要があった。

そして、戸棚にダニーの幻覚が入ったところを「タスク」の爪弾を命中させたジョニィだが、その戸棚もジョニィが「捨てて来た物」で、そこから現れたのはジョニィの父、ジョージの幻覚だった。戸棚はニコラスの形見であった乗馬ブーツが仕舞われていたもので、自分の壊れたブーツの代わりにしようとしたのを父から咎められ、無理矢理取り上げようとした事で父を怪我させて勘当を言い渡されたのだ。

本当の父はケンタッキー州で生きている。だから本物ではなく幻覚だ。そうわかり切っているのに抉られたトラウマがジョニィに戦意を失わせている。そしてジョージの幻覚はさらにジョニィを追いつめる台詞を吐く。

神が一人連れて行かれるならお前の方が良かった・・・・・・・・・！
ニコラスはおませのせいで死んだのだ・・・・・・・・・・・・・・・・・

…と、過去のトラウマとの闘いというシリアスな雰囲気の中で「おませ」という誤植をやらかしてしまう。正しくは「おまえのせいで死んだのだ・・・・・・・・・・・・」であり、単行本収録時には修正されている。しかしながら、「おませ」が単語として存在しているだけに「おませのせいで死んだのだ」という文が迷文でありながら意味は通るというシュールな笑いを呼び、連載当時のジョジョファン間で話題になった。

作者の荒木飛呂彦は、過去のインタビューでは「過去の作品は自分の日記や記録のようなもので、書き直して欲しいと言われてもできれば直したくない」と語っている。さすがにウィル・A・ツェペリの「結婚もしなかったし家族も持たなかった」というストーリー的な矛盾など大きなミスは修正されたが、細かい誤植(「何をするだァーッ」や「幽波絞」、「うっおとしいぜッ！！」など)は修正されず単行本にそのまま掲載され、長きにわたって読者に認識され語り草となっていた。それらのミス等は2002年の文庫版発刊の際に修正されるようになったのだが、それでも当時発売された第6部・ストーンオーシャンの単行本ではヴィヴィアーノ・ウエストウッドやロベルト・プッチなどの名前のミスもよく見られた。この記事のような細かい誤植の修正が単行本収録時に修正されるようになったのは、月刊誌に連載誌を移した第7部以降となる。もっとも、その頃にはすでにインターネットが一般家庭に普及し、個人のファンサイトや大型掲示板等で言及されていたため単行本から後追いした人でもその記録を容易く見つけることが出来るようになっていた。

ちなみに、ジョージが神に「連れて行く子供を間違えた」と言ったのは事実で、ジョニィのトラウマとして深く残っている言葉であるが、ニコラスの落馬原因が馬の足元をダニーと同じ白いネズミが横切ったのは証言されたが、ジョージには溺れさせたと偽ってネズミの標本を見せているので、その因果関係に気づいているのはジョニィのみであり、ジョージには「ニコラスの死はジョニィのせい」だとはおそらく気づかれていない。つまり本物のジョージは「おまえのせいで死んだのだ」とは言っていない台詞であると考えられる。そうでありながら「おまえのせいで死んだのだ」と言わせているのは、やはりジョニィが自覚している罪悪感のためだろう。

また、父の本音として出た「連れて行く子供を間違えた」を聞き、ジョージの方からジョニィを見捨てたと思うことから、父を憎いと思ってもおかしくないのだが、むしろ幻覚を爪弾で撃ち抜いて血を流すジョージの姿を見て撃ちたくないと泣き叫んだり心を深く傷つけている様子から、ジョニィは本当に父を尊敬しており、認めてもらいたいという本心が伺える。